繊維製造業のデフレを考える。
最近は自社でのお仕事ではなく、他社のお客さんとのお仕事の関係値で意見を求められることが多く、とても考えさせられる。
お客さんにとって良いお取引を目指せば、導入コストが低く、継続性を意識してサービスを向上させていくスタイルが好ましい。それによりお客さんの業績が伸びていけば、お手伝いさせてもらってる会社も業績が牽引されていく。良いことづくめのはずだった。
はずだった。
工業が、受け身の姿勢を変えていくには、製造スキームのパッケージを提案して、お客さんの手間を軽減していくのが、わかりやすく手っ取り早い。それが工業内製版OEM、ODMなどになっていき、その運動量分の利幅が工賃仕事では得られない世界を見せてくれるはずだった。
はずだった。
もうずいぶん昔に、国内から海外へ製造拠点を移して、製造コストは下がった。それを主導していた専門商社たち、またはそれに付随する大手製造メーカーたちは、お客さんから仕事を有利に得るため、常に安い労働力を求め、競合たちと削りあった。そしてそれが常態化した。
仕入れ単価が下がって、小売単価も下がった。いや、小売単価を下げたいから、製造原価も下げたかったのが先か。いずれにしても一般消費の世界では、物が安く手に入ることがメリットになり、そのメリットを最優先していくために、さらに消耗戦は激化した。
これはもう誰もが気づいていることだ。だからって急に何かを変えられるわけではない。
製造工業側が取れる策としては、品質とサービスを、従来消耗戦を強いてきた相手に提供していくのでは、値段据置のまま運動量ばかり増えて、一向に向上しない、むしろ運動量分削られていく利益率をどうにもすることが出来ないので、戦場を変えるのが望ましいのではないか?と過去にいくつかその手の記事も書いてきたし対面で意見を求められればそう伝えてきた。
なるほど!と言うことで紹介ベースなどで新規のお客さんと商談に上がって、まず広げてしまう風呂敷が「こんな良いクオリティを他社より安く出来まっせ!」である。これは結構こける。と言うか、価値基準は相手先に依存するので、クオリティを相手先が認め、コスト的に飲み込める場合は言う必要などなく、わざわざ先出しで自らの利益を削るような愚かな真似をしていては、結局今までと同じ轍を踏む。
導入したいお客さん側が、品質と対応に納得してくれたら、それがお客さん側にある価値観なので、わざわざ旧来の消耗戦を自ら持ち込まなくていいのだ。あれ、同じことを二回言っている。
先に自ら下等消耗戦を仕掛けると、相手はかなり『お客様』になってしまう。
お客さん側が求める品質や対応が出来ないのに製造側が偉そうに大きく出るのは全くもって間違っている(けっこうそういう人もいる)が、いきなり器が不釣り合いな大きな御神輿を担ぐ必要も全くない。
御神輿を担いでしまうと、相手も気持ち良くなっちゃうので、それに慣れてしまって無意識に他の業者に対しても同じような対応を求めてしまう。甘美な環境を自分で正していくのはとても難しい。
永くこの商売スタイルに慣れてしまって、自分たちを(またはその先の仕入先を)削っていくことがお客さんにとってメリットだと考えている時点で、品質担保も難しくなるし、そんな物が市場で売れた先に買ってくれた人や、売り場に出しているブランドが幸せになれるとはとても思えないのだ。
それはお客さんのメリットと言うより、担当者のご機嫌とりに近い。会社単位で社会を好転させる儀を意識していない。結果的に、製造業のデフレは拡大していく。これが大きい単位で進行してしまっている以上、飲まれるしかないと考えていては、なかなか会社の業績を回復させていくのは難しいと考える。
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