ものづくりは楽しい。

中間業者のことについては過去に何度も書いてきたし、最近もなんか書いた。

この記事では、ものづくり上起こりうる様々な問題における責任の所在を一手に背負いこむというのは、悪いことじゃないという考えをのべた。


そしてもう一点、中間業で糸作りから服までを一貫で見ていると、とてつもなく良いことがある。


何度も訪れる選択次第で、商品は変わるということだ。


当たり前のことを言った。


例えば。

エジプトの有名な高級コットンであるGIZAも45,86,88,などで少しずつ様子が違う。今回は少し張りを持たせたいので86を選び、コシとシャープな表情にしたいため20/1上がりのコンパクトスピンで紡績し少し撚りを強めにかけてガス焼きで処理。

組織は天竺、編み機は28ゲージを選択、これは20/1がギリギリいっぱいかかるハイゲージだ。これでほとんど伸びないパッツパツの生機が出来上がる。編み機は少し億劫そうにギシギシと音を立てて高密度な生地を編んでいく。糸切れも起こりやすい。

加工は通常の染色を入れる前に酵素処理、毛羽を限りなく減らすためだ。滑り感を付けたいので染色後にシリコン系の柔軟を付けてフィニッシュ。


さて、どんな生地に仕上がるか想像つくだろうか?

僕ならこれを綺麗目メンズ向けオーバーサイズTシャツと言いたいところだが、案外レディース向けカットジャケット素材にしてもいいかもしれない。

原料、紡績方法、糸加工、編み地組織、ゲージ及び度目、染色加工方法、大分別するとこのくらい選択するタイミングがきて、それぞれで選んだ方法で仕上がる生地が変わる。つまり、買ってくれる可能性があるお客さんのキャラクターが変わるのだ。

仮に組織は天竺のままで、編み機を20ゲージにしていたら、アウターには持っていくには頼りないから、Tシャツ向けが適しているけど、度目が甘いと糸作りのタイミングで撚りを少し強めているので斜行が気になるから、どちらにしても品管厳しいところは無理だなとか。


その選択肢ごとの引き出しの多さで仕上がり生地に対する想像力も変わってくる。

これを繰り返して生地作りを覚えていく。出会ったことのないキーワードに関しては、テクニックのノウハウを教えてくれる人がいたら、それに近い経験値を引き当てて想像していく。

最近はデジタルツールも進化して、シミュレーションもかなり再現性が上がってきた。だけど風合いは、やっぱり触らないとわからない。そしてデジタルシミュレーションも完璧ではない。(これは別でまた書く)


選択肢ごとの引き出しが充実してくると、逆算的にお客さんからの要望に対して作り上げていくモノの精度が上がってくる。そうすると喜んでくれる。いい関係性を作ることができるようになる。仕事が増えて売上も上がる。


なんというか、パスをする楽しみ、生産でクオリティのゲームメイクできる。

ほら、楽しいでしょ、ものづくり。

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