数年前に誰かの夢を預かったような気がした。

僕は独立して4年目になる。なんとか今日を生き延びるのに日々ハゲ上がりそうになる。でも、じゃあなんでサラリーマン辞めたのか。家族もあったし、前職での立場も、あったか?たぶんそれなりにあった。たぶん。知らんけど。でも辞めた。

これは別に『まだサラリーマンしてるの?』的な煽りじゃない。むしろ、自分以外の誰かが挙げた旗、その夢に、自分の出来ることを提供できるということは素晴らしいことだと思う。そういうリーダーに出会えたなら、本当に幸せだと思う。

前職で尊敬した上司は一人。今でも年に一回は呑みにいってる。今月頭にはその約束を果たした。独立したキッカケは、たぶん良くも悪くも、彼の存在があったから。正面から褒められた方は一度もない。彼はそんなことないって言うかもしれんけど。僕の感覚では在職中に面と向かって褒められたことない。

でも、そんな彼が僕に何をしてくれたか。
アクション自体は派手じゃないけど、地味でも、人を活かすというのは、恐らく彼が僕にしてくれたこと以外のなにものでもないのだと、心から思う。そんな元上司に向けた、感謝の意を込めた僕からのラブレター。

辞めるって宣言した後、前職の社長からは和歌山からわざわざ3度も来京いただき、熱心な説得を受けた。これはとても光栄なことだ。だけど退職の意思は変わらなかった。
社長が提示してきたのは、金銭的不満か?人間関係的不満か?など、日本人ならあまり表立って主張しにくい代表的なソレが問題だと考えてくださって、色々な条件を提示をしてくれた。それは本当にありがたいことだったけど、本質的にはそこじゃない。
どうも資産があって始めた製造業で時代背景が良く、幸運にも積み上げられた資産を引き継ぐだけの、敷かれたレールを走ってタスキを渡すような経営をしてる人に、少なくとも前職の場合は、次の社長まで、おそらくは創業者魂は、ない。

もちろん繋げるというのはとても難しいことだ。だからそれ自体を否定もしないし、批判もない。それはそれで、僕自身、経営してる今なら尚のこと尊敬してる。だけど、燃えたぎる何かが欠如している。それは世襲ではなく前職に入り込んだ、僕と僕が尊敬している当時の上司にしかわからない。そして少なからず、残っているスタッフはそういうフラストレーションを経営陣に対して抱えてる。

実は独立宣言するその随分前に、僕が尊敬しているその上司には独立を打ち明けていた。っていうか、「25歳になったらロックスターになってるだろうから辞める」って入社早々、大江戸線の国立競技場前駅で宣言した時も、30歳になってから本意気で「独立する」って伝えた時も、彼の態度は一貫していた。

「お前がそうしたいんなら、そうしろ。オレは応援する。」

これ書いてて、今も泣けるんだけど。
仕事始めたばっかりの時、右も左もわかんなくて、いろいろやけに怒られたけど、営業出る前だった時「おい、仕事おもしれーか?」の一言に対して「はい!面白いです!」って答えた後の満足そうな「そうか」という一言と笑顔は忘れない。

ロックスターの夢破れ(バンド解散の時)一回は「会社に骨埋めますよ」って彼に言った、今となっては嘘ついたことになるけど、その時の「そうか、骨埋めてくれんのか笑」の笑顔も忘れない。嘘になっちゃってごめん。

振り返ってみれば、彼の主張を押しつけられることなく、僕が言いたいことを言い通してきたサラリーマン人生だった。彼に対して僕の感謝の意が尽きないのは「じゃあやってみろ」っていう、「まぁ、お前がそこまで言うんだからやってみたらいいよ、責任はお前にあるけど、とりあえずオレが取ってやるから」みたいな、いや、言われたことないけど、そんな空気出してた。マネージャーとしては最高の上司だったと心から思う。

退職が会社内で確定したのに、全社役員会議に出席させられた時も「なんでコイツが辞めるのかちゃんと考えた方が良い」って言ってくれた時も、社長から「それはオレが悪いって言いたいのか?」って言われたことに対して、臆せず「そうです」って言い切ってくれた時も。全面的に僕の夢を応援してくれた。

前職には、今っぽく言うとヴィジョン、夢が無かった。
でも上司だった彼には夢があって。今年の初め頃、少ないけど僕に語ってくれたその夢は達成された。僕はとてもそれを心から嬉しく思う。

たぶん、彼が見た本当の夢は、僕に託してくれたんだと思う。真実は知らんけど、僕はそう思ってる。じゃなかったら、家族以外に、これほどまでに僕の話を心から聴いてくれた人が居ただろうか。だったら彼は、この業界では僕の親だ、彼が見れなかった景色があるなら、息子である僕が見せてあげたい。いや、見せる。

だから僕は、発言する以上は、少なくともそれを成し遂げなければいけない。彼が僕に預けた夢を(具体的には何か知らんけど)、彼に見せなければ死ぬに死なない。まぁ死ぬときはあっさり死ぬんだろうけど、生きてる内は、やれることはやり通しておきたいと、そう思ったよ。ね、また来年呑みましょうよ。お互い生きてたらね笑

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