混紡(コンボウ)交撚(コウネン)交編(コウヘン)。
僕は性格が悪い。自覚している。だが、修行中なので、今後は好転するはずだ。
テキスタイルジャンキー繊維ポリスを自称してしまっているので、しょうもない揚げ足を取ってしまうくらいには性格が悪い。これは、もうほんと、自分でもやめときゃいいのにってくらい、タチが悪い。
とあるお店の店員さんに「こちらはスヴィンゴールドを使用してます!」って言われた時に「へぇー、ってことはファーストピックなのにこんなに安いなんてヤバいですね」って言ったら店員さんが奥に逃げて行った話をマサ佐藤さん(@msshouhinkeikak)にしたら「晴邦そりゃダメだよ、お前が悪い」って言われるくらいだから、多分僕は、性格が悪い。
性格良くなりたいから自粛する気ではいるが、南さん(@minamimitsuhiro)のツイートで、確かに雑誌やウェブの紹介で多い間違いがあるなと、以前から思っていたので、その点だけ、今回何がそれぞれ違うのかを書いておく。
何でもかんでも「混紡」でまとめるなよ。交織も交編もあることを知らんのかな。あと撚糸もある。
— 南 充浩 (@minamimitsuhiro) October 27, 2019
ウールに合繊を混ぜるのは一概に「安くするため」だけではない。軽量化するため、強度を増すためという場合もある。
交編(コウヘン)は違う素材の糸をまぜて編むこと。交撚(コウネン)は違う素材の糸を撚り合わせること。混紡(コンボウ)は種類の違う繊維をまぜて糸にすること。
— 山本 晴邦 (@HARUKUNI_Y) October 28, 2019
洋服には混用率を明記してある。
こういうやつ。
で、これの場合は、表地は麻100%って書いてある。これはまぁそのまんま「麻100%の糸を使って織られた生地を使ってますよ」ってことだ。
裏地はキュプラ50%とコットン50%って書いてある。この50対50の割合でキュプラとコットンが混紡されているのか、またはキュプラ100%の糸とコットン100%の糸の割合が50対50で交織(コウショク)されているのかはわからないけど、「生地としてはキュプラ50%、コットン50%で出来ていますよ」ってことを言っている。
まずそれぞれがどういう意味なのかはさっきのツイート通り。
混紡(コンボウ)は異なる原料の繊維を混ぜて一つの糸にすること。さっきの裏地がキュプラ50%、コットン50%のワタを混ぜて一つの糸にしていたら、それは混紡である。
交撚(コウネン)は原料素材の異なる糸を撚り合わせて一つの糸にすること。さっきの裏地がキュプラ100%の糸とコットン100%の糸を同じ太さで撚り合わせていたら、総合の割合はキュプラ50%とコットン50%の糸になる。その撚りあげた糸だけで生地になっていたら、それは交撚である。
交編(コウヘン)及び交織(コウショク)は原料素材の異なる糸を混ぜて編むまたは織って生地にすること。さっきの裏地がキュプラ100%の糸とコットン100%の糸でそれぞれ半分ずつ使って生地に仕上げていたら、それは交編または交織である。
良くわからんという人は、質問くれたら気が向けば答えます。
買う人にとって、特にそれがどの方法で原料をミックスしていても、特段影響はない。その服がその生地で、風合いが気に入っていたらそれで良くて、その素材原料に対して(キュプラってこういう手触りなんだなぁ、好きだなぁ)とか思うくらいで、生きる上で支障なんてない。
でも、もし仮に、気に入った風合いの混用率表記を覚えていて、(あの風合いを別の服でも欲しい!)と考えることがあるとして、同じような混用率表記の別の服を見つけた時、 (え?『あの風合い』と違う!)なんてことになる可能性があるとしたら(多分ない)、それは作り方によって生地の風合いってのはいくらでも変わるので、気に入った『あの風合い』が、混紡だったのか、交撚だったのか、交織だったのか、交編だったのか、そこから探求しだす長い旅になるのである。
ちなみに一般的に良く見かける混紡と紹介されているけど、間違ってるやつの代表格は『ポリウレタン』絡み。これは連続ツイートをそのまま引用しておく。
よくある間違いは、ポリウレタン(以下Pu)が一緒に編み込まれてるベア天竺という生地で、紹介文で混紡と書かれている事が多いけど、これはPuを一緒に編んでいるから交編。ちなみにPu繊維が他の短繊維のように短くカットされて混紡されることはない。ゴムを短く切って混ぜても糸は伸びないと思わない?
— 山本 晴邦 (@HARUKUNI_Y) October 28, 2019
もし本当にポリウレタン混紡というならそれはCSY(コアスパンヤーン)っていう、糸の中心がPuになってるストレッチ糸のこと。見分け方は生地を引っ張って角度を変えた時、チラチラ光るのが見えたらほぼベア天竺だから、それは混紡ではなくて交編。生地を探すとき、ここがズレると思った生地出てこない。
— 山本 晴邦 (@HARUKUNI_Y) October 28, 2019
ベア天竺って言葉聞いたことある人、このブログを読んでくれている人ならいるかと思うけど、ポリウレタンが一緒に編み込んである生地で、ストレッチ性が非常に高い。細いポリウレタン糸を綿とかレーヨンとかそれぞれ任意のメインになる糸の後ろに隠すように這わせて編み込む方法で、ベア天竺専用の機械で編まれている。
だから、どんな物でもベア天竺みたいにポリウレタン糸を一緒に編み込んだら出来上がるかと言われたらそれは違う。そして、ここでわかるように、ポリウレタン糸を一緒に編み込んでいるのだからベア天竺はポリウレタン糸を交編していることになる。
つまり、「ベア天竺をポリウレタンを混紡しているからストレッチ性が・・・」っていう紹介文があったら、それ書いてるやつは繊維界的にはモグリっていうと性格悪いね、少しお勉強が足りないようだ。
ちなみにこれベア天竺。
見分け方は、裏にした時や、少し引っ張って編み目が開いた時にポリウレタン糸が光に当たってチラチラ光る。
ベア天竺だろうが、CSY使いのストレッチ天竺だろうが、伸びる生地には変わらないから、着る人にとっては手前がどうのこうのっていうのはそんなに大した問題じゃないけど、服を作る人にとってはベア天竺じゃないと表現できない薄さとかあるから、まぁ少なくとも今回の混紡か交撚か交編か交織かみたいな分類の意味くらいは知っておいて損はしないのではないかと思う。っていうお節介。
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