彼のロックンロールは死んだ。

僕はバンドマンだ。

この書き出しは2回目である。

この時は見た目の話で、今日書くのも、まぁ概ね内容は一緒だ。


いまだにベーシストとして需要があるのは非常にありがたいことである。好きなことを続けられるというのはこの上ない幸運なことだと思っている。

仕事にしてもそうだ、おそらくファッション業界で働くことが憧れという人も多くいるだろう。それが幸運にも生業になっているのは奇跡的とも言える。なんせ実家が繊維だ。これはこの業界に憧れている人からしたら恵まれすぎている。

配牌が良いのは認めよう。きっと狙ってできる環境ではない。そう、人生は不平等だ。


誰しも隣の芝が青く見える時がある。僕だって人を羨めばキリがないくらい、手に入れたい状況を持っている人はたくさんいる。


その昔、情熱を持った若者は、自分の技術が優れていたら、世間から音楽家として認められると信じていた。見た目も営業も不要だと言ってその努力を怠った。

技術の研磨に努めて、光が降り注ぐのを待った。

誰かに媚びるような格好や行動はロックンロールではないと頑なだった。


結果はついてこなかった。彼のロックンロールは終わった。認められなかったのだ。


彼は僕を羨み妬んだ。見た目、自由度の高い仕事内容、そこそこの結果と、プライベートの充実を。

これ全て天から与えられた物だと言わんばかりに、自分の不遇を嘆いた。


僕は彼に伝えた。僕だって昔は肥満児で体脂肪率40%のデブだった。全然モテなかった(なんなら今も全然モテない)し、縫製業は儲からんから家は貧乏だったし、初めてのギターは納屋にあった木材を自分で加工して釣り糸を弦にしてチューニングもわからないまま音楽に合わせて弾いてた。ひもじいさ、まして限界集落でロックンロールなんて誰からも褒められない、むしろ鬱陶しい物だとされていた。それでも続けた。かっこよく立ち振る舞いたかったから、減量も苦じゃなかった。

恵まれているのは君の方だ、実家が裕福で、干渉されない世間でロックンロールが認められ、演奏する土壌だって整っている。食いたいもん食いたいだけ食って勝手に太って、見た目の不平等さを嘆き、整った環境に甘えて、やることをやらなかったから、技術は高くても、チャンスで目に止まるような状況を作り出せなかっただけじゃないか。と。


そういう言い方をされると何も言えなくなるから僕とは付き合いにくいと言われた。


その程度の熱量で、誰かに響く演奏ができるのだろうか。

結局諦めて誰かのことを羨むような、その程度のロックンロールを押し付けられるくらいなら、そんなロックンロールは死んだ方がいい。っつーかお前の言うロックンロールって何や。もういいけど。


そう言えば先日誰かからも、そんな僕の性格を「排他的だ」と否定された。落ちこぼれが出ないようにセーフティーネットを設けるべきだと。

別にそういう人たちを否定するつもりは全くない。そういう考え方もあるとは思うから、排他的なつもりはなく、羨んで妬みをぶつけてくるくらいなら、同じ分量の運動があったのかと問うているだけである。やってない人に対して手を差し伸べるほど、僕に余裕なんかない。

運動がなければ作用もない。小学校の理科で学んだはずだ。


何が言いたいかと言うと、誰でも簡単にできるような間口の広さは時に悪だ。

ファッションも、音楽も、それで命削って魂燃やして食ってるやつがいる以上、インスタントに結果だけ求めた者たちに対してギルドは厳しい。そういう連中が足元を固めて本物になっていくには、そういうやつらと互角に張れるくらい、見えないところで必死に土台を作っていかなきゃいけないってことだ。

音楽が好きとかファッションが好きとかいうと、知識マウント取ってくる厄介な人たちもいるけど、そういうことじゃなくて、そういうやつはほっといて、真剣に生業にする以上はフェイクでは詰むよ。


いや違う、これが言いたかったわけじゃない、が、脱線して戻れないので、今日はもうこれでおしまい。

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