チューニング。
僕が常々、繊維製造はフィジカルとメンタルの切り離しが難しいと言う理由に、機械設定がある。
小ロット多品種が当たり前になってしまった今の世において、対応できないと商機を逃す要因になる。が、商業サイドでは受けられても、工業サイドではすぐに対応するのは難しい。なぜならアイテムによって適宜マシンチューニングが必要になるからである。
生地製造において、ロットがある程度ないと難しいのは、大昔に書いた糸や編み織り、染色の経済ロットの最小公倍数的な話もある。詳しくは過去のブログを参照していただきつつ、一方でマシンチューニングの問題もある。
丸編みに限らず、整布の工業現場は品種が変わるとごとに別の糸を機械に載せ替える作業が必要になる。(糸を替えるくらい...)と思っても言うはやすし行うはかたし。例を丸編みに戻して任意の機械にて糸を替える場合、多いものでは192本もの糸を載せ替える必要がある。その本数を用意するにも、小ロットの場合は手前で本数を用意するために『小割り』なる作業が発生する。そして糸を載せ替えた後は度目調整などする。ここまでで職人が一人で半日かかり切るなんてことはザラにある。
また生地組織を替える場合(例えば天竺からカノコへ)は、コンバージョンと言って、編み針が通る道筋を変えてやる作業が必要になる。コンピューター制御で柄替え可能な機種もあるが、まだまだ鉄の塊を動かすのは人力が多い。ここまで含めても生地を編み出すまでに丸二日かかることもある。
ようやく整って生産開始ボタンをピッと押したのも束の間、小ロットだとあっという間に生産が終わってしまう。そしてまた次の品番のためにチューニングをこなしていく。
生地作りもそうだが、縫製の現場だって当然この作業はある。厚地の設定のまま薄地を縫えば縫い糸が浮いたり、抑えの力加減で調子が合わず送り歯の跡が生地についてしまったりと、細々と縫い出す前の調子付けが必要だ。場合によってはミシン屋さんに来てもらってチューニングすることもあるだろう。
そうこうしてようやく設定ができたところへ30枚縫い出したらあっという間に終わってしまってまた次の20枚のために設定を変えなければいけないというのが日常茶飯事になっている。
現場の方々は非常に好意的なので、大変だからなんとかして欲しいとかそういう泣き言は言わない。ただどうみても、たいへんである。実際にやったことがある経験からすると、ほんとはやめてほしいと思うこともある。
ただ、時代も時代なので対応しなければ商売もない。そしてそんな商売をありがたいと言って喜んでくださる現場の方々には、常々感謝しかない。ガチャマンを経験している人もいるので、絶対ありがたいと心から思ってるなんて思えない僕はひねくれているのでしょうか。きっとそうですね。
そこへきてQR商業は非情にも、設定を終えたところでも平気で流し込む商材の変更を依頼してくる。事件は会議室で起きてるんじゃない、現場でおきてr...ぅ青島ぁーーー!!!!ゲフンゲフン
で、やっぱ値切るでしょ。平常心で「承知しました。」って言えない。それが仕事だからと割り切って聞く必要があったとしても、なかなか難しい。
富士登山するつもりで一週間くらいガチ準備してたのに、「やっぱ今日は熱海で泳ごうぜ」って言われたらちょっと怒るでしょ?怒らない?あそう
まぁ何にせよ、取り掛かる前には事前準備がある。気軽に「やっぱピボットでwww」なんて僕には言えない。少なくとも、商売成立のため、きちんとした商品納めさせてもらって喜んでいただきたいがため、現場の方々はご尽力くださっている。
もちろん商品を市場に適宜届けるために商業側の方々も日夜頭を使って必死に考えてくださっているのもわかっている。ただここにも、先日のQRの記事内容同様に、物理的な可否がある。そして都合を押し込めば必ず感情の摩擦がある。
だって、体動かしてチューニングした時間を一言でナシにされたら、その間の水揚げは無いわけだから。
そういうわけで、フィジカルとメンタルの切り離しは難しい。
別にやりたくないって言いたいんじゃないよ、ほんと、みんな前向きに受け入れようとしてる。ただ、前向きに好意的に受け入れようとしている愛があればあるほど、相手にそんなつもりはなくても裏切られたと思われたら反動もすごいから。人が動きたくなるような人でありたいなと自戒を込めて。
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