君は知ってんだろう?僕の大風呂敷を。
今、そいつで未来を盗むからさぁ手伝って!と行きたい勢いの地方工業からの営業を受けるのは、毎年1回くらいずつの波で押し寄せる。最近はその波が来ているようだ。
僕は前職時代、それもだいぶ序盤の頃、今は職場を別のところに置く当時の先輩にこんなことを言われた。
「山本君、仕事はどんな案件であろうと、取ってから考えれば良いのだから、まずは仕事をとることが大事だよ。」
世はまだアパレル不況の香りが本格化する前、いやもう表面化していたのかもしれないけど、そう信じたくない空気感が漂っていた頃、仕事はまだ、取ろうと思えば取れた世界がそこにはあった。
仕事を取るという言い回しに違和感を覚えるずっと前の話なので表現に関してはご容赦いただきたい。
数字は大事だ。ご飯が食えなきゃ経済も回せない。だから多少はビッグマウスで相手先から注意を引いて仕事をもらうのは全く問題だとは思わない。
問題は、特に地方工業の方々の出張時にみられる、営業トークで拡げた風呂敷を包めない現象だ。
当時僕にどんな案件でもテーブルに上がることを第一優先したパイセンもこのキライがあった。受けたけど納めらんない、または受けたけど工業都合で跳ね返す。お客さんからしたら「いやいや、できるって言いましたやん」っていうソレ。仕事を取ってから仕入先さんもお客さんも振り回されて、それをやり散らかされたら誰も周りには残ってくれない。
過去記事だが、これは現在も健在。
また、色々とご提案いただくのはありがたいことなのだが、ほとんどが自分自慢で、相手先の市場を理解されているかというと、少し物足りないのが現状である。
いや、自分自慢は全然良いんだけど、辛いのは、その自慢と、相手が求めていることは必ずしも一致しないので、商談が盛り上がっても、後から「アレどうですのん?」っていう追求をしても響きにくいということを理解しておいてもらった方が良い。
加工場さんあるあるで言わせてもらうと、加工技術の足し算足し算で全部盛りみたいなのを提案いただいて「これええでしょ!?」的なやつ。良いのは良いのだろうけれど、加工場さんの目線で手間をかけて作り上げた風合いに対して良いと思うのは、自分が頑張ったんだから褒めて欲しいというのと同じ。また、MAXの状態でご提案いただいた資料というのは、少し状況が変わればこの風合いは担保されないという裏返しでもある。生成りでしかその風合いが出せない物に対して、色を付けたら劣りますって言われて、そっちを見ないで生成りだけで展開するブランドは多分存在しないのだ。
それがハマらなかった時に、相手のことを「あいつらはわかってない」という風に思ってしまうのもよくある話だ。
「できますよ」と言ってその気にさせて、依頼してみたら出来ない、また、「これすごいでしょ」が、相手にとってそうでもない場合でも相手にとって良いものだと思って無理やり広げてしまう。冷静に振り返って、そういう大風呂敷を拡げてしまったなということはないだろうか。
仕事は取ってから考える、その取る段をいかに自分を大きく見せるか工夫した挙句、実務で追いつかなければ、お客さんには迷惑がかかる。
「だって最高の状態じゃなかったら選んでもらえないでしょ」とも言われる。最悪でも良いものを作る努力もしてみて良いんじゃないかなと、そんな気分なビールの日。また来週。
0コメント