天然繊維なので。

色ブレ、染色物を取り扱う人間にとって、いつだってそれを避けて通ることはできない。

今日、色々な試編みの生機を並べていて、昔の記憶が蘇った。

そういえば前職時代も序盤の頃、こんなことがあった。


エジプト原産の超長綿を大手メーカー某ブランドに定番として使ってもらってた時のことだ。まだ生地売りバリバリの頃で、OEMとしての経験はほとんどなかった。

そのブランドさんには生地提案を直接させてもらっていたが、実際に生地を買って服にしてくれるのは中間業者のOEMメーカーさんだった。三社の関係性は概ねうまく行っていた。その事故が起こるまでは・・・


定番で使用してもらっていたエジプト超長綿は、非常に希少種のため、採れる量が決まっていたので、毎年違うロットになった。考えてみれば当たり前で、綿花栽培は条件を整えていたとしても、毎年微妙に誤差が出る。それは果物や野菜などと一緒で、原産地と銘柄で概ねの風味は一定だとしても、個体差というのが必ず出る。そして採集される年によって、気候変動や天災などの影響も受け、品質が常に一定である保証など、誰もしてくれない。

天然繊維というのは、当然、それは綿に限らず、採れるタイミングによって色が違ったりする。それは栽培者のみなさんや、糸を作っている紡績さんからしたら至極当然のことで、常識だ。だから、まさか染色前の生成り(素材そのものの色味)がブレることでクレームが発生することを誰も予期していなかった。僕もまた然りだった。


採れる年ごとにロットが変わるので、定番で使っていただいていたブランドさんに対して、白で色ブレが出てしまったシーズンがあった。本来であれば、染色工場さんもブレないように検色(色確認)をしてくれて、差が出ないように調整してくれるのだが、白はかなり難儀する。それは染める前の生機(染める前の生地)の色に依存するからだ。

なぜなら


白というのは、染色の場合、下晒か蛍光晒の二種類だ。蛍光染料の度合いを調整して、紫外線の反射量を調整することは可能(太陽光下では白度が変わって見える可能性はある)でも、繊維が本来持ちうる黄みを白くしていくのは晒す工程なので、ここはどんなに頑張っても繊維原料の色に依存してしまう。つまり、原料が採れるシーズンによって色味が変わってしまっていたら、白に関してはほぼ前回の色に合わせることは不可能に近いことになる。とは言え綿はまだ、そんなに大きく原料白度が違っていることは茶綿などを混ぜない限りは起こらないのだけれど、この時(当時定番で使ってもらってたエジプト綿)は本当にかなり違った。


結果的に、その白は納めることができず、白見送りシーズンになってしまったのだが、納品できなかったことで、作った分を丸かぶりしなければいけないことに納得がいかなかった僕は、そのブランドさんと中間業者さん相手に感情的に食いかかってしまった結果、その商売はなくなってしまった。若気の至と処理しておきたい。あの頃僕は若かった。


白系の色だしに関しては以前からこのブログやtwitterでも結構注意喚起しているのだが、やはりいくら業界内で常識と考えていても、知らない人の方が圧倒的多数なので、それはもう常識ではないという認識が、いささか面倒ではあるが、製造側には求められることである。


「天然繊維なので」という話が理解できる人は、繊維がそもそも動植物から採取されているという事実を知っている人で、最近この業界に入ってくる人たちの中には「服は機械が作っていると思ってた」と、マジトーンで言える人たちも多く、それを「いやおま、そんなアホな」とツッコミを入れたいところをグッと堪えて、都度都度伝えていくという地味な作業を繰り返していくしかない。

それでも理解をしてもらえない場合は、ブルーハーツの青空のワンフレーズを引用しよう。

生まれた所や 皮膚や目の色で
いったいこの僕の
何がわかるというのだろう

ただ、天然繊維に限らないけれども、色を常に同じにすることを安易に考えてる方々が多いので、それはそんな簡単なものではないということを、下記noteにて改めてお知らせしていきたい。

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