惜しい日本製ガーたち。

社会人になると同時に地方工業と関わって結構たった。日本の地方工業の素晴らしさというのは、最近海外の工場とやりとりを始めるようになって改めて見直しているところである。改めていう。日本の地方工業は素晴らしい。

何がすごいってまず言葉が通じるから、イメージ共有がしやすい。これはいくら感覚的表現を数値化するのに慣れている僕でも、相手に言葉が通じないとどうにもならない部分だったりする。無いものを作り上げていく時、この言葉が通じるというのは非常に重要な要素である。

また、工場の稼働効率やものづくりの意匠性に関する追求もすごい。人的リソースが不足しがちだからこそ稼働効率は大切だし、意匠性は(必要なものかどうかは置いておいて)完成品の差別化になる。

本当に作っていく上での創意工夫ってのは凄まじいと思う。


惜しいのは、売ることへの意識の弱さ。


テキスタイルショールームサービスを立ち上げてしばらく立つが、数社参加表明の話が進んでいても生地を送ってくる工場さんはゼロだ。僕の力不足と、それがなくても弊社と商売が成立している工場さんたちも多いので、今更特段必要性が感じられていないのはある。

それなりに仲の良い工場さんと話の中で、生地を送ってこない理由をそれとなく引き出すと、やはり有料というところが引っかかるらしい。財源がないと。「今まで生地仲買さんたちに無償でサンプルばらまいて、ヒット率も彼らのお客さんに提案してくれているかもわからないけど、仲買さんたちがお客さんから言われたら別途スワッチ依頼があるし、まぁ昔ながらのやり方で、数字は少しずつ減ってるけど、特に問題はない」といった具合だった。

他所の台所事情は介入するところではないし、本人たちが問題ないのなら全く気にするつもりもないのだけれど、案外そういう自助努力が足りない工場さんに限って、仕事が薄くなると電話営業で工場を埋めて欲しいと言ってくる。数字はいるのか、いらんのか。


また、組合で合同展示会に参加する際のスタンスも、補助金ありきだ。目的のための手段の遂行補助として、補助金があるはずなのに、補助金が出るから参加するという、順序が逆だろってノリはいまだに根強い。

前出のショールームサービスを公表してから、数件、地方公務員(産地産業支援系)の方が弊社へきてくださって、ショールームサービスの仕組みや、販路開拓の進め方の助言を求めたりと、当事者よりも熱心に動いている印象を受けた。

彼らとの会話の中で気づくのは、産地の中でも突出していく工場さんが数件出てくるとのこと。そういう人たちは、組合の重い腰を嫌い、独自で動き出して結果を積んでいっているらしく、僕の知る限り、確かに丸編み工業でも目立った企業は独自の努力をしていた。


南さん(@minamimitsuhiro)のブログでもあったように、何かの政策で騙し騙し保護していくしかない感じが、とても残念で仕方ない。役人さんたちが組合で目立って成長している工場さんを例に出すと「まぁ、そこみたいになれたらいいけどねぇ」と、まるで自分ごとになってない空気になるのだそうだ。

待っているだけで向こうから仕事や明るい未来がくるならそんなに楽なことはない。そういう姿勢が蔓延しているから、身銭切って道をつくった人たちが、後からその道を我が物顔で補助金や政策で安易に担がれてラッキーパンチ的な商売にありついた会社と揉める姿は何度も見てきた。腹が立つ気持ちはわからんでもない。そしてラッキーパンチャーたちは、面倒なやりとりが多い商売を維持できずに結局元の工業に戻っているケースも散見される。


前職時代に組合事業で海外で小規模な展示会をさせてもらう機会があった。その展示会開催中に数社参加していたにもかかわらず、既に海外事業を自力で開拓した会社さんのところにしかお客さんが集まらなかった事実を目の当たりにした時、圧倒的な敗北感を感じたと同時に、何が違うのか明らかにわかった。その経験はその後前職が海外に出ていく際の良いお手本になっていたし、今の僕の商売の考え方にも強く影響を与えている。


自律は難しいことかもしれない。でも自社を守りたい、維持したいと思うなら、守りを置きにいく運営も大事だけど、今は攻めて行かないと目減りは防げないと思う。衰退する産業に対して、心優しくも守ろうと考えてくれている人たちがいる。そういう人たちの思いや運動はありがたいと思う。だけど時に、そういう人の優しさが、産地の甘えをうんでいる場合もある。彼らにとって良いことなのかどうなのか、引きで見るとかなり微妙なところだ。


前に出るやり方は真似してもいいと思う。だから怠惰の沼から這い出て道を作った人たちのやり方をよく見て、商品は自分たちの技術を信じて、前に出て違いを味わって、ものづくりに注いでいるエネルギーを維持しつつ、今度は買ってもらえる工夫をしていってもらいたいと心から思う。結局精神論で申し訳ないけれども。

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