通信インフラと工業の現場。

工場と連絡を取り合う際の、通信インフラを改善することで生産性を上げていったり、トラブルを防ぐといった仕組みを開発している人たちがいるのは、随分前から色々お話を伺わせていただいているので知っている。

僕自身、これらの取り組みや開発は非常に興味があるし、浸透したらとても良いと思う。人は便利だと思うものを取り入れることで発展してきたはずだから、これらのインターネットを介したアイデアは生産現場を本当に変えていくはずだ。


しかしなかなか浸透していかない。未だにファックスが主戦力なのは何故なのか。

よく生産現場に近い人たちはなかなか電話に出ない説がある。これは電話かけてる側は本当にイラつくんだけど、彼らの立場からすると、彼らなりの事情があったりする。


小規模工業の営業窓口の多くは現場作業員も兼務している。

丸編み工場で特別な柄組みをしているようなニッターの場合、外周内周合わせて4,000本前後の針を、任意の柄になるように一本ずつ数えながら手で針の植え替えをしたりする。幅1-2ミリ程度の細い針を一本ずつ数えるのだ。そんな集中が必要な作業中に、電話がなったりすると、針を数え間違えて生地になってから大問題なんてこともある。

極端な話だけど、現場に入ってる時は電話を事務所に置いておいて、作業が終わって事務処理する時にようやく、端末を確認したりするのだ。その時、目に入る優先順位は、掌サイズの携帯端末より、A4サイズのファックスの方が圧倒的に視認性が高い。


また高齢化というのは本当に避けられない現実としてある。

そうなると、そもそも端末の使い方が怪しい。弊社が付き合っている工場さんの中にはLINEさえ知らない人たちも存在する。流石に、携帯圏外という場所は減ったけど、なんなら割と最近まで僕の実家工場付近は携帯圏外だったから、やっぱり有線通信に対する信頼は厚い。そしてプッシュホンよりダイヤル式に慣れている。公社の電話って呼ぶくらいだから。


そういう人たち相手に、フリック入力とか、スマホのブラウザがとかって、なかなか通じないし、便利なのはわかってるんだろうけど、改めて導入してこれから工業を盛り返して行こうっていう気力は残ってない。先立つ仕事がはっきり見えてたら世界は違ってくるんだろうけど、設備も古ければ、仕事もどんどん減っていっている中で、通信インフラを改善する費用を投資する元気なんてない。


あまり後ろ向きな理由ばかり言っても仕方ないんだけど、現場の多くはこのような現状と思われ。

仕事が先細るのも、見方を変えれば自業自得なので、『かわいそう』という感情も特にわかない。インフラが変われば仕事も増えると考える経営陣がいるのであれば、そういう舵の切り方もありだろうとは思う。要は市場と自社がどういう状況で、どういう動きを取れば売上が改善していくかという点を冷静に考えていけばいいのではないかと思う。それができないから衰退していくんだろうけれども。


とは言え、取り入れて対応できていく工場も出てくるだろうから、今後はその点で二極化が起こるだろう。全方位的に救っていくことは本当に難しい。何せ本人たちの意志が必要だ。これが伴わない場合は工業としての発展は閉ざされて、工芸として残っていく以外は、淘汰されてしまうことになる。そうなってしまっては困る工場があるのであれば、そういう現場に近い人間が、早めに、そしてゆっくり雪解けをさせていく必要があるのではないか。

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