生地名のあれこれ。

生地の名前は、その糸や編み方など、名前から作り方が想像できるものが多い。例えば『30/1天竺』なら、30番単糸を使った平編みのソレというのがつながる。60/1綿モダールHGシルケットポンチだったら、綿とモダールを混紡した60番単糸で、両面編みのポンチという組織をハイゲージ(おそらく32ゲージ以上)で編み、後加工でシルケットをしているのだとわかる。


ここまで生地の名前でネタバレしてしまうのは、オリジナル商品として企画していく上でリスクしかない。そこで各社、最近はオリジナル生地にはオリジナルな生地名を付けるようになってきた。

まぁこれは極端な例だが、『まめ柴の風合い』を知らない僕にしてみれば、この生地がそれに当たるかどうかはわからないけど、少なくともただの起毛品ではないことはわかる。

というか、おそらくこれは起毛加工ではない。編みながらパイルのループをカットするシール莫大小だと思われるが、品名に『起毛』とあれば、そういう加工が存在するのだろうと考え、リプロする時にしきりにその手段に固執して失敗を繰り返すことだろう。


つまり、他社が真似をすることを防ぐためにこういった工夫を凝らすことで、いつかは彼らもその生地の作り方にたどり着いたとしても、しばらくは時間稼ぎが出来るだろうという、苦肉の策である。

しかし、生地屋さんがそういった考えで一生懸命に考え出した生地名に対して、買う側は「そういう生地組織が存在する」と思い込んで、他所で資料集めをする際に、実在しない組織名を伝えては仕入先を混乱させるという事態も引き起こす。まぁ企画した生地屋さん的には狙い通りだ。
以前、お取引は無いが、そうやって生地屋さんが作り上げたオリジナル生地の名前を、存在する編み組織だと盲信して僕に代替え素材提案を要求してきた人がいた。そして何度も何度も提出しても、存在しないその組織に対してイメージの合致が取れず、結局は資料を集めただけで時間の徒労に終わった。

その時に情報を汲み取れなかった僕が悪いから、別にそのことでどうこう思わないが、名前だけあてにしてたら、まぁこういうことは、起こる。

それが造語だってことは理解していても、現物を渡されずに、名前だけで捜索にあたることで時間は浪費する。
これが生地屋さんが狙った時間稼ぎである。

だから、近しいサンプルでもっとバリエーションが見たい時は、現物を渡すのが一番よい。言葉より、目や感覚は引出しに直結している。

それにしても最近は、生地の名前のみならず、その生地の『ウンチク』も求められるのが一般的になってきた。
色々な製造方法や、原料説明など、詳しく書けば書くほど、僕が服を買う立場ならそこまで知りたいかどうかは疑問に感じつつも、そういう情報を知りたい人もいるんだと信じて情報を提供し続けている。
が、これもまた、リプロの際に非常に有効な手掛かりになるから、あまり具体的なことは書けない。けど、具体的に書かないとウンチクもクソもない生地の場合は間がもたない。

ところが、某社は僕のそういった作り手側の視点を激しく斜め上に行っていて、毎回感動している。
僕もこういう、スワッチにさえツッコミどころ満載の遊び心があるようなウンチクを、今後は心がけていきたいと思うのであった。

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