大風呂敷。
素材に限らず、特に何も決まっていないタイミングで提案を求められた時、繊維戦士諸兄はどのような風呂敷を広げるだろうか。
自分たちの強みを全面に押し出した内容か、出来ないことはないといった具合のマルチな感じか。
先方様のやっていきたい内容が何も決まっていない時、またはご新規様に初めましてでご提案差し上げる時、提案内容を準備するのはとても悩ましい。
先日とある材料屋さんが、飛び込みで提案に来たいとのことでお会いした。アイスブレイクもなく、特に何かを提案されるわけでもなく、ただ30分くらい途切れ途切れの会話をして終わった。あれは一体、何だったのだろうか。
自分が提案を受ける立場になるタイミングはあまりないのだけれど、相手にとってどういう話の進め方が興味をそそられるかという勉強のため、提案したい方がいらした時は積極的に会うようにしている。これがまた千差万別おもしろいものである。
大昔、前職時代はテキスタイルの営業だったので、シーズン前になると各方面へアポをとり、たくさん提案の機会を頂戴した。その中で学んだことは、いきなりたくさん見せてもスワッチ作成の時間に追われるだけで特に実りがないことが多かったということ。
これに関してはタイミングにもよるので、いきなりたくさん見せることが悪手だと言っているのではない。僕も含めて、提案をしたいという人間と会うことは、様子見の段階でもあるので、そこまで本気で何かを探している状態ではない可能性が高いから打率が下がるというだけである。
そんなタイミングでも相手の記憶に残るような提案ができれば、成約率は上がる。その記憶に残すためにあの手この手を考えて用意するので、不得手でもけっこうな飛び道具が用意されることもある。派手な方がイメージに残るから。
とは言え、不得手(それは背景の不安定さや知識不足も含む)な飛び道具が決まってしまった日には、それなりに険しい道を辿ることも多い。
僕も不慣れな領域に手を出して火傷した過去は一回どころではない。それを通して知見も溜まるので引き出しは増えるのだけれど、安定しないものはどうしても安定しないのもあるので、お客様へご迷惑をおかけしないことの優先順位を上げると、必然的に提案段階から引き算するようになった。
持論だが、信頼あってこそ継続性ある商売ができるのである。
懇意にしていただいている御大からよく皮肉で言われるのは「お前の提案はコンパクトやなぁ笑」だ。引き算が極まって同業他社に比べて非常に資料の数が少なく、時には手ぶらで向かう。コンパクトを通り越して、やる気があるのかと疑われるレベルだ。ご安心ください、やる気は、ありまs
突飛なものや不安定な内容の提案で大風呂敷を広げて大枠を掻っ攫う業者さんも多いが、もって2シーズン、多くは事故率が高くて出入り禁止になっているのをたくさん見てきた。かくいう先述の御大もそのクチである。仲が良いからこれは悪口ではない。ご自身もご自覚されている。
大風呂敷を包めずに自爆していく人の中には、自分がまいた種なのに相手の理解がないと文句を言う人も多い。僕はこの業界しか知らないけど、この業界にはそういう人が多い。そしてそいつらの営業打率は低く、打点も低い。打席数は多い。良く言えばチャレンジャーではある。悪く言えば無謀で無責任な人たちだ。
そこに信頼が生まれる可能性は低く、商いが拡大継続していく見込みは少ない。
だいたいさぁ、リサーチが甘いよね。これ以上は、わかるな?
まぁいい、リソースが有り余ってそういう動きをしてても荷物にならない規模の会社なら問題ない。でも中小零細ではそうはいかない。運動量があり仕事しているように見えるのと、運動が作用してきちんと仕事になっているかどうかは全く別物。
言い方は褒められたものではないけど、前職時代初期にせっせとスワッチ作りをしていた時、経営者に言われたことがある。
「お前がやってるのは仕事ちゃうぞ」
その時はぶっkrむかついたけど、2-3年で意味がわかった。仕事とは運動が作用することで成立するんだと。
大風呂敷を広げて案件をとにかくかき集めることを悪いと言うつもりはないけどね。おかげで安定感のある仕事がかえって評価されやすい土壌ができるから恩恵に預かってないわけではないし。
ただ、うまくいかない理由を、他人のせいにしないようにしようね。
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