算数。
繊維産業≒ファッションの感覚でアパレル業界へお越しになる予定の学生様及び転職をご検討の皆様こんにちは。ファッションセンスだけでは戦えない世界へようこそ。
僕自身が通ってきた道なので、体感としてファッション専門学校へ通っている方々の多くは算数が苦手な印象がある。産業である以上は物とお金のやり取りがある世界なので、コスト計算と利益計算は実務上切っても切り離せない。そう、算数が必要になる場面が多いのだ。
最近たまたま知り合いの人に頼まれてその方が使っているコスト計算表を見直す作業をした。どんなに頑張っても想定の評価が社内で得られないから少し不思議に思っていたらしい。
もらえる金の話なら少しは興味持ってもらえるかと思い、今回は固定給+歩合給(インセンティヴ)制がある会社という想定で話を進めていく。
歩合給制の場合、契約上で粗利の何%的な約束事があると思われる。
例えば歩合支給金額10万円欲しい時、契約で粗利全体の内10%が歩合になるとしたら、100万円の粗利を出す必要がある。これはたぶん、誰でもわかる、と、信じたい。
ではこの粗利100万を残すために必要な売上は、利益率何%でいくら売り上げたら歩合の10万円が手に入るのか。ここまで、ゴールの金額が明確になっている場合は計算しやすいと思う。思いたい。
実際にやってみよう。
今回は後の計算をわかりやすくするために仮に同社利率規定を10%固定とする。ただし契約条件として、社内規定利率を下回る場合、その利率に応じて歩合の割合も準ずるとする。そんなケチな会社はないと信じたいが。
10万の歩合を得るために100万円残ればいいわけだから、直感的に1,000万円の物を1,100万円で売れば100万円残るのはわかると思う。これが落とし穴。じゃ1,100万円売る時、利率10%を原価に上乗せしていく時の計算式はどうなるだろうか。
利率10%は固定。規定を割り込む場合は歩合も利率に準じる。どうやりますか。
落とし穴の感覚で計算すると、原価x1.1(原価プラス利益率10%)とやりがちなのが、あるある。原価1,000万円に対して1.1掛けると1,100万円になるから。これで残り100万円は担保できるので歩合10万円はゲッツしたと思うだろうが、社内規定の10%は守れるか。歩合は着地利率に準じるって契約になっている。
着地で規定利率10%が守られたかどうか。確かめ算どうやりますか。
今回はノリで、1,000万円仕入れて1,100万円で売った。100万円が利益として残った。
利率の計算式としては、残った利益÷売った金額になる。
100万円÷1,100万円=0.09090909.........
%とは百分率のことなので、0.090909.....は%に直すと9.090909....で約9.1%になり、着地利率が規定利率を下回った場合、歩合率に連動するという条件から、100万円の利益配分は優しい会社なら91,000円になり、シビアな会社なら90,909円になる。
10万もらうために100万利益出したのにおかしいなってなる。気にしない人は税金とかなんかかな?とか思うかもしれない。税金だと思った人は、ここからさらに税がかかるのでさらに手残り下がる。
なんで10%乗せたのに9%しか残らないのか!って怒る人、いないよね?いる?
落とし穴の手前まで遡ってみよう。
10万円の歩合を得るために100万円着地で10%の粗利が必要だった。
小学校に戻って数ブロックを使って計算の考え方を見直してみよう。
前回の落とし穴計算では、全体が1,100万円なのでこれが100%になる。100万円のブロックは11個必要になり、利益率が9.1%になってしまったため、歩合が9.1万円になってしまった。
じゃどうしたらよかったのか。
100万円が10%になるためには、100万円のブロックが10個になれば良いので、全体が1,000万円で原価を900万円にする必要があるのがお分かりいただけただろうか。
これで100万円と利率10%が成立して歩合も晴れて10万円手にはいることになる。
大事なことは、全体が100%であるということ。
今回でいえば、売上が100%であって、そこから原価を差し引いた残りが利益になり、その割合は全体の何%かという話だ。
読んでくれてる人の中には、そんなこと当たり前だろバカにすんなって思う人もいるかもしれない。でも案外、落とし穴に落ちてしまってる人は多い。なんせ前職時代の後輩は最初ほとんどこれだったから。
特に営業は評価査定が売上粗利という数字でわかりやすく出されがちなので、利率を重視する会社ならこの計算は非常に重要になってくる。
どんなに大きな売り上げを上げていても、利率が低ければ会社の運営としては仕入れ資金負担が大きく、かつ、固定費があるため資金繰りが厳しい状況になりやすい。そうなると、売上ばさほど目立たなくても、大きな売り上げを上げてくる営業より大きい金額の利益を残している営業の方が評価としては高くなりやすい。資金効率が良いから。
例題でいえば、手前で1,000万かかる商売より、900万で済んで同じ金額が残る方が良いってのが感覚的にわかってもらえるとこの長いブログを書いた意味が出てくる。
冒頭の、コスト計算表を見直した知り合いは、頑張っていることは間違いない。でも計算表の利率計算の掛け方が『落とし穴』のソレになっていた。会社から固定費がどれくらいか通知されているかどうか知らないけど、評価があまり上がらないとしたら「頑張ってくれてるんだけど運営はまだ苦しい」といったところだろう。
赤字の会社は、粗利から諸経費を差し引いてマイナスの状態を意味する。工場の場合は固定費(人件費と家賃、設備投資していれば減価償却費)を工賃水揚げで賄えていない状態だ。赤字でも消費税納税はあるし、法人税だって最低金額がある。それらを支払える現金が残らなければゲームオーバーなので、給料だって払いたくても払えない。それはみんな困る。
まぁそもそも、ずっと赤字の会社は存続の意味すら社会から問われる。だって利益が残るような価値を提供できていないということだから。とはいえ、悪意ある客から便利に使われてしまっている会社もあるだろうから、そこは経営者の判断で道筋をしっかり立て直していかないといけない。
価値は結局のところ、買い手が決めるモノサシなので、買い手が納得してその金額を払うに値する価値提供を突き詰めていくことになる。当たり前だけど。そう考えると、自社の在り方の見直し、客先の見直し等、やることが明確に見えてくる。
だから算数はとても大事なんだねって話。あと、就職先に選ぶ会社の財務内容と雇用契約条件はよく読もうね。経営者の志はもちろん大事だけど、それに呼応する市場をしっかり掴んで利益を得ることを許されている会社かどうかも。
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