製造業もマーケットがないと売れない。
当たり前のことだけど、案外この感覚が薄れている気がしたので。
僕も以前の会社で勤めていた初めの頃は、「良いものを作れば売れる」ということを本気で信じきっていた。愚かにも。
もちろん提供するものは完成度が高いものでなければならないと今も思っているが、当時の僕が思っていた「良いもの」っていうのはいわゆる希少性や過剰フルスペックなどの製造のエゴだった。
結果コストが割高になるが「良いものは高くても売れる!」という謎の自信を持って突き進んでいたのだ。
ところが現実は違って。実売ベースで動く商品は顧客さんとのやりとりの中で生まれる「その顧客さんにカスタマイズされた商品」だった。別注の生地屋だったから尚更かもしれないが、工業がアパレルと直接やりとりをしていく時に在庫を綺麗に揃えた商品群はなかったし、顧客さんもそれをわかってくれていたからか、そんなものを僕らに求めることはなかった。
そこに気が付いてからは新規営業するハードルはすごく楽になった。
前職時代にテキスタイル合同展示会に出展して新規取引がスポットでも100万を超える取引先になるのは20%くらいの確率である。でも数年単位で年間500万オーバーの取引が望める得意先を得られる確率は経験上0.6%くらいだった。
つまり合同展に出展して今のまま「できること」を展示したエゴ展でも20%の確率で新規の顧客さんに繋がるが、それを数年にかけて継続商売できる上に一定の柱に育て上げていくには「できること」だけでやってたらダメで、「できること」が「求められている」ことであれば1%未満の大口取引先になっていく。
一回の出展でだいたい費用は5-60万が絶対かかる費用で、そこに展示サンプル等の別途費用、そして担当者の出張費等々、100万はかかっているはずだ。なので弱小工業にとっては20%の確率で100万の単発商権が得られる程度では、費用対効果は世間への宣伝効果があれば良いが、なければほぼ捨て金になる。
これら上記二つの事実から僕が当時一番頼りにした新規獲得営業方法は「飛び込み営業」だった。
しかしいきなりどこでも良いから飛び込むのでは鋼のメンタルでない限りは心が負ける。勝算のある入り口を見つけなければいけない。与信審査?んなもん後だ。商売が決まってからで良い。(零細経営は確かに与信管理ができないと場合によっては死ぬが、お客さんがいなければもっと死ぬ)
勝算のある入り口の見つけ方は、至って簡単。自分たちができることを求めているお客さんを見つければ良いのだ。
「それができれば苦労はない」と言われそうだが、本当にできないことだろうか?
自社ができることをジャンルでまとめて、そのジャンルのアパレルを調べることができれば半分くらいは可能性出てくる。そこへアプローチをかけていく。それだけだ。
地方工業は物量と与信をまず考えるから、どうしても大手の商売に魅力を感じて商社にぶら下がりたがる。そして営業を商社に依存する。彼らは商売人だから「僕らができること」はあくまでたくさんある選択肢の一つにしかならない。なので安定的に収支期待はできない。もちろん商社の中にはがっつり担いでくれる担当もいるけど、これは時の運。皆が皆そうではない。
工業の「待ち」の姿勢はなかなか根深いものだ。良いものを作っていればそういう人たちが売ってきてくれると信じてやまない。市場がそこにあろうがなかろうが良いものを作っていれば誰かが見つけてくれると思っている。
もう自分たちを勝手に探してくれる人たちはいないものとして、自分たちの「できること」が「求められている」マーケットを自ら探し出し、そこへアプローチをかけるのが一番早いし効果が大きい。
この辺を再度意識してみると無駄な出展費用を使わなくて済むようになるかもしれない。
0コメント