非を認めない男たち。
中間業者は悪だという考え方は、まぁわかる。僕だって悪だとまでは思わない(僕自身中間業者だから)けど、マージン分高くなっちゃうのは最終消費者からしたら安い方がいいもん。だからこうやって製造工業とデザイナーをつなぐことができるようにブログで製造との接し方など書いている訳なので。
とはいえ、製造と直接やるときに起こりうるリスクはある。
特にトラブルが起こった時の「責任の所在」というのは常々曖昧なものである。
絵が下手すぎて伝わらないかもしれないけど、トップ画の左側に書いたのはTシャツである。
それを買った人から「洗ったら脇の縫い目が真ん中くらいまでよじれてきた」という「斜行」の問題が起こった時の製造業者のリアクションが「うちは悪くないよ」というのを絵で書いてみたのを全部ここで説明するという絵心のなさに精進しますとしか言えない。
僕の絵心は置いておいて。
こういったトラブルは頻発する。以前書いたブログでも紹介したが、製造業は水平分業になっている。
ここではパズルのピースが如く組み上げられていく過程で、どこか一つでも欠けたピースがあると、完成形には歪みが出てしまうといった内容だ。
それを中間業者不在でアパレルが全てまとめ上げて消費者へ提供していた場合、起こったことの責任がどの部分にあるかという特定が難しくなる。
色が違っていたら染工場に問題があったなど、単純にどこが原因だったかわかればよい方だが、色が違った原因も本当に染工場だったかどうかというのは決めうちできないこともある。
例えば色を白で依頼したのに黒で染まってきたら100%染工場が原因だけど、ベージュで依頼した色が少し濃く染まってきた場合は、染料のデータ自体は同じだったのに染め上がりが濃くなってしまうこともある。これは糸原料が最初にサンプルアップした時と同じ製造ロットの糸原料を確保できなかった時に起こりやすい。
原材料の製造ロットまで発注者は管理できない。その時にある糸を買うしかない。無い物は無いのだから「その時のロットで出荷してくれないと困る!」とか言っちゃうとヤバい(バカなのかと思われる)。それが嫌ならサンプル時から量産の数量を見越して1ロットで原材料を買い上げておくなどの先行投資が必要になるけど、展示会形式でどのくらい受注がつくかわからないメーカーはそんな在庫リスクは負えない。
脱線したけど、つまりこういう可能性もあるから、「色が濃い=染工場が悪い」とは一概に言えないのだ。だから染工場は「うちは見本通りやった!」と言い張ってくるに違いない。
で、冒頭の「斜行」が起こった時、どこに原因があったか?
元々斜行する生地だったのか?(選定者、もしくは提案者要因)
染色整理の際に無理に生地目を矯正した為に洗い後に斜行してしまったのか?(染工場要因)
今回の糸ロットの撚り係数がサンプル時のものと違ってしまっていたのか?(糸要因)
パッと思いつく範囲でもこれだけの可能性がある。そしてクレームの落とし所を見つける為にそれぞれの業者に事故った件を伝えると、それぞれに「うちは見本通りやった!」という主張を繰り返し、落とし所が見つからずにクレームが迷路に入り込んでしまうのである。
斜行に関してはそもそも起こる可能性があることを生地をみて使用者が見抜くのが当たり前だと製造業者は思っている。これは購入者からしたら全くもって無関係だし迷惑な話だ。
が、製造業を長くやってると我々の常識は世間の常識だと思っている人たちが死ぬほど多い、というか全員そうなんじゃないか?と思うくらい多い。
なので製造側は、「そういう生地を選んだあんたらが悪いんだからこっちは悪くない」というスタンスを貫いてくる。この猛者どもを直接コントロールするエネルギーを持ち合わせているか?
僕ら中間業者は、とりあえず迷惑掛けちゃった人たちに「ごめんね、なんとかするわ」ってとりあえずの自己費用でクレームを処理していく。だからマージンなんてあっという間に消える。
原因を究明したあと、それぞれの業者に経緯を説明して、以降の加工賃などで埋め合わせをしたりしている。が、とりあえず一言目は「うちは悪くない」が来る。ほぼ間違いなく。
だから一般消費者に寄り添う体質を構築すべく、工業の人たちと向き合っているのでいつかは直接工場とできる日は来るかもしれないけど、今は絶対無理だから諦めて中間業者を使った方が得策だよ。(宣伝ではない)
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