水の如く対応できるか。
前回書いた内容と重複してしまうが、昨日某テキスタイル問屋の営業の方と食事をする機会があり、別の角度から「売る」ということを考えてみた。
生地問屋にとって商品はそれぞれのメーカーから集まってくる物が基本となるので「商品が他社と違い独自性がある」という差別化は産みにくい。一部自社企画して生地を作っているようだが、基本的にはメーカー提案を取り上げて屋号を変えるくらいなもので、企画というにはちょっとだいぶ弱いし、どうしても製造側の提案を採択するとなると製造側のセンスと採択側のセンス次第では事故る。
しかし問題の本質はそこじゃなくて、まず企画商品を作る必要があるのか?という部分に着目した方がよい。企画商品が必要な理由はなにか?おそらくほとんどの理由は売上を伸ばす為だと思うがそこが落とし穴。売上を伸ばす為に他社と差別化を図りたいから企画商品が必要ということの前に、既存の商品群が売れていない理由を考えなければならない。
既存の商品群で売上をつくれていない理由を考えるところからはじめる。
わかりやすい構図だったので名前を伏せつつも(多分バレるけど)事例を挙げると、「東の〇ジサキ」vs「西の渡〇矢」。便宜上「東軍」vs「西軍」としておく。取り扱いの商品群は双方ほぼ一緒で、それぞれにオリジナル企画商品もある。元々はそれぞれの陣地内で商いをしていた。
ところが先に西軍が東軍の商圏へ踏み込んできた。東軍は防戦に回りつつも西へ攻め出る。各顧客先で東西の勝った負けたが繰り広げられた。商圏の食い合いは基本的に「価格競争」で勝負が決まる。そこに商品の良し悪しは関係していない。
ところが消耗戦では粗利を削るしかできないので、商圏奪還の動きとして東軍西軍共に差別化を求めオリジナル企画商品を我先にと川上へ打診する。製造側も問屋が相手ならロットも見込めるし喜んで提案する。
自社企画商品はご存知の通り原価積み上げ算で単価を決めるため、商品の上がりに対して粗利を見込んでつけるプライシングは誰に対しての「適正な価格」なのか不明瞭だ。
そして案の定売行きは好ましい結果を出すことが出来ずに、未引き取りでニッターや染工場に積み上げた在庫に対して「引き取り要請」があるまでその在庫を無かったことにしているのが現実だ。
もちろん売れるやつもあるが。
このように東西の戦は続いているようで、昨晩食事をした某氏も悩んでいた。
「企画商品をもっと充実させたい」と、果たしてそれで商圏を奪還できるか本当に改めて考え直してほしい。
その前に今の商品群で負けてる理由はなんなのか?
おそらくは値段がおおよその原因だが、それを先回りして提示することはできなかったか?もしくはその数十円の差を凌駕するほどの顧客との関係を築けていなかったのではないか?
同じ流通商品を多少高くても僕から買ってくれる顧客さんがいる。この理由はなんだ?
仕入れを一本化することで取引のスケールメリットがでる?それもある。
でもたぶん、対応が良いんだと思う。
口は乱暴だけど、中身が丁寧。自分で言うけど。
問屋さんは営業とデリバリー担当がセットで動くが、ほとんどがオーダーに対して形式的な動きでしか対応していない。これでは単価が安いことくらいしか他社に対抗する術はない。
その時その時で柔軟に対応して、自在にカタチを変えては出口の海へと流れる川の水のように半歩先、一歩先へ素早く動き、水量を増やしながら大きな海へと導けるような対応ができれば、数十円の差で負けたりしない。
先回りしてキチンとした川の流れをつくれたら、海の場所がわかっている企画商品の精度も非常に高いものになる。
水の例えが下手すぎて困ったが、売るということはこういうことだと思うのだ。
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