生地屋さんに求められたこと。

巷の生地問屋さんは、ゴロゴロにいっぱいの見本帳を入れてアパレルメーカー各社へ提案行脚の日々を過ごしている。

そしてそのゴロゴロいっぱいに詰め込まれた生地見本は、はっきり言って生地が小さい。ひどいものだと15cm x 8cmくらいのサイズが二重に折られて貼り付けられている。


昨日ちょっとしたご縁でとある集まりに参加させてもらった際に、若手のデザイナーさんから生地屋さんへ向けて「生地を提案してくれるときは、縫製見本まであると仕立て栄えがわかりやすいので助かる」と要望があった。

その気持ち、わかる。

生地問屋さんの生地見本小さいから仕立て栄え以前に生地の落ち感とか風合いとかわかりにくい。

スワッチはよかったように見えたけど、服にしてみたらモサいとかよくある。

デザイナーさん側からすると、着分(とりあえずサンプル作れる程度の見本生地)買って、サンプル工賃払って、残念なサンプルが上がってしまったらさぞガッカリだろう。

なのでそういう失敗をする前に、提案段階である程度仕立て上りのイメージが掴める程度のサンプルを用意してほしいというのは自然な流れだ。


こういうことを言うと、生地屋界隈からは「それを考えるのがデザイナーの仕事だろ」とか「デザイナーの質が落ちた」とか「それくらいスワッチでわかるだろ」なんて言う人たちが一定数出てくる。そう言いたい気持ちもわかるが、まぁ落ち着いて聞いてほしい。

御社で売れてる営業の人の営業スタイルってどんなやり方しているか。

顧客さんとガッチリやってる感じじゃないかな。顧客さん一軒あたりの売り上げが高い。柱ってやつ。

その柱が何本か立ってて、大きな売り上げになっているはずだ。じゃあどうやったらその顧客さんとガッチリやって柱にすることができているのか。ここを考えてみる必要がある。



おそらくガッチリやれてる人は、提案の際にその顧客さん向けにキチンと下調べをした上で生地の収集を行い提案をしているのではないか。
とにかく会社にある資料を片っ端から見せるような提案はしてないはずだ。
色見本などの用意もトレンドを意識しながらも、その顧客さんが使ってくれそうなカラーをビーカーなどで準備してるのではないか。
品番で元々用意されたカラーだけ見せて終わりではないはずだ。
スワッチも台紙に貼られた小さなものではなく、A4サイズくらいの大きさで見せてるのではないか。
そういう各個人が顧客さんのために色々と創意工夫して生地を見せているのではなかろうか。

僕の知っているとても顧客さんを大切にしてる生地問屋さんは、顧客さん向けにピックアップした素材全て1mずつ買って、身頃幅くらいの大きさに筒縫いして提案している。
これはとても手間のかかる事なので提案サンプルの量は少なくなる。
ところが成約に結びつく精度はとても高い。
コンスタントにヒットを打てる。

要するにいかに洋服に近い状態で生地提案できるかが、今のアパレルメーカーに対しては有効になってきている。
この事実を無視して、「企画力が衰えた」などと嘆いているだけでは、生地が売れるはずがない。

数撃ちゃ当たる的にカバンパンパンにスワッチ詰め込んで、風呂敷広げる提案も顧客さんの時間を無駄に奪ってしまうという配慮に欠けた自己満提案になってしまう。
相手に対する思慮が足りないと、人間関係を続けたいとも思えなくなるので、そもそも提案の機会をもらえなくなってしまうのではないか。

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