差別化。

もう何度もこんな内容を書いているが、昨日よその商談が聞こえてしまって改めて強く感じたので記しておく。


昨日起こった隣席の出来事は下記ツイートをご参照いただきたい。


繊維製造界では、この地獄絵図が日々展開されている。これは本当に不思議で、差別化を価値と感じて用いてくれる相手が不在の現場でこのような議論がなされているところだ。


受託製造が基本で、設備キャパを埋めるために顧客に通い詰めオーダーをもぎ取ろうとする営業は多い。彼らの中で一握りは頭を働かせ、(せや、素材提案から出来たら、他所より受注増えるんちゃうか!)と考える。すごく自然な流れである。

そして、その中の一部の人間はこれに成功し、顧客の心をつかんで受注増をやってのける。

そうやってのし上がっていく僅かな人の正攻法を、勝ち筋と決め打ちしてその猛者のやり方を模倣し、自分も続こうと素材収集や開発に打って出る。これもすごく、自然な流れだ。


ところがこの発想に至るだけでは、おそらく、いやほとんどが勝てない。むしろ余計な開発費を積んで試作をしては、年度末に在庫として金融資産計上した死に在庫でキャッシュフローに苦しむ結果を、まぁまぁ見かける。


餅は餅屋とはよく言ったもので、やはり素材のプロではない人たちが、いくら開発に前向きになったとしても、結局はサプライヤー頼りになる。そのサプライヤーに向かって「独自素材で差別化したいねん!」と鼻息荒く伝えたところで、サプライヤーはその方々の顧客像まで把握できていない状態では、アイデアの出しようもない。

そして差別化したい彼らもまた、意外と直接エンドユーザーの嗜好を把握するための努力をしているかと言われると、そうでもなかったりする。とりあえず動機としては「なんかええもん、よそと違うもん」がベースであり、その飛び道具があれば、群雄割拠を制することができると考えている可能性が高いような雰囲気を感じる。


案外、顧客は御社のそのこれから作ろうとしているであろう必殺差別化の飛び道具を求めておらず、適正価格でしっかりと役割の部分を担ってくれることを望んでいるものである。それこそ、餅は餅屋である。


そういえば先月、名岐地区の弊社外注協力工場様を複数件回らせてもらった。

その中でも、差別化をはかるために何か手を打ちたいと考えている経営者の方がいた一方で、一周回ってその開発の手を止め、自社の本来の強みである受託製造に軸足を戻したことで経営が安定化した方もいらっしゃった。


何事もチャレンジするのは良いことだと思う。まして経営者レベルの判断であれば、『独自素材で差別化をはかる』を旗印に見本費を計上していくことは、やってみたら良いと思うし、やるからには作るだけじゃなくて、顧客にとって意味のある方向を探る努力もあわせることで本当にいい方向に動き出す可能性も十分にあり得る。


最近は素材メーカーとOEMメーカーや縫製工場の協業を業界紙で見かけることも増えてきた。メディアに記事を出すほどに気合が入っている各社の動きを見て「ウチもなんかしなきゃ」と思うのも理解できる。

この流れでアパレルメーカーにとってOEMメーカーは大変な便利屋になってしまった過去(そして今)がある。


あぁそういえば、いつだったか割と大きめのOEM/ODM会社の社長様が、素材提案の大風呂敷を広げて同社の営業相手に盛り上がっている素材屋さんに向けて一言放たれた言葉が思い出された。

「それが良いものかどうかは、お客様が決めることですよね」


よそと同じでは勝ち目がないと思うのは自然の流れ、でも、違う土俵ですでに横綱がいるところに、素人があえて飛び込んで勝てると思うのは、すごい勇気(嫌味)だなと感じたところで、隣で話している人たちをよそ目に、今目の前の商談に集中せえと自分を戒める僕であった。

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