机上の正論と現場の正論。

『自分たちは崇高なことをしている!』が、実は独りよがりの正義で、対象になる救われる予定の人たちは、実は迷惑している可能性がある、というのは、前々から書いている通り。


昨今では受注生産が環境配慮のための最適解だと言わんばかりに、経済ロットを割る少量生産が増えている。これ自体、良いとか悪いとかの話ではなく、最適解として正論になってしまうのは、全方位的に是ではないということを改めて思い知らされている。


かといって、じゃお前の考える答えがあるのか?と問われれば、ない。

『諦めている』を『折り合い』という言葉で片付けている部分になるだろうか。受注分(増減産不可)との戦いは、生産時に起こりうる想定できるロスを含んだ資材発注で仕掛かりつつ、できる限り生産側に負担がないように依頼していたつもりだった。

ロスを含んだ、ということはつまり、うまいこといくと、無駄な材料が残って現場が溢れかえるということにもなりうる。


編み立て付属の工場さん、丁寧にいえばこんな感じだけど、僕らはヨコ付属って言葉で片付けてしまうことが多いポロシャツのエリや袖口などをメインとした編み立てをしてくれる工場さんへ行って打ち合わせしてる合間のこと。

「アルクロさんの残糸(生産後に残る糸)すごいよー」と、現場の方に言われたので「すみません、もしかして糸代お見積もりに入れてくれてなかったですか?」とお伺いしたら「いや、コストには入れてるからお金で困ってるんじゃなくてさ、まぁ他さんも今すごく細かいから御社だけじゃないんだけどね、場所もいるからさ」と、昨今の少量生産の結果、糸買った分使い切り(編み切り)のオーダーはほとんどなく、確実に残糸が溜まっていく状況なのだそう。

一時期は残糸が増えすぎて倉庫を借りていたくらいで、家賃もすごいから結局半分以上廃棄して自社倉庫内に収まる程度の物だけ保管しているらしい。


パーツごとに編み出して使い分けていく企画が多いので、裁断していいような仕事であれば、大きめのパーツを作って裁断することで編み側の負担を減らす方法など色々あるが、やはり色糸が基本的に使用される部分だったりするので、企画を変えられない場合はパーツ毎に編むしかないし、数量的に渋ければ糸だって残る。

どうやったってゴミは出る。パーツで裁断して裁断ゴミが増えるよりは、糸で残っていた方が後々の潰しは効きやすいだろうから、糸で置いておく方が良い気もする。


しかし糸は溜まり続けていき、誰かが引き取ってくれる様子もない。今回、自社分は全てSADOBASEに引き上げることにしたが、だからと言って自分たちで作りたいものがあって選んだ糸ではないので、具体的な使用方法は思い立っているわけではない。

他のお客様が選んでいる素材や色がすでに決まっている糸を、そうそう都合よく他の誰かの企画にスポッとハマることはほとんどないらしく、かと言って廃棄問題になるから課題解決のために意識高い人たちが再利用プロジェクト立ち上げても、欲しい色とか素材が必ずその中から選べるわけじゃないし、なんなら全部使えるわけじゃないから数も中途半端だしと、いざ『売る』となると決定的に要素が足りない状態になるらしく、付属工場様曰く「なんでも良いからモノにしようってのも、売れないモン作っても余計なお金と労力かけることになるから、やらん方が良いよねって流れになる」のはその通りで、引き上げ分に関しては、佐渡にいらっしゃる手芸作家さんなど、欲しいっていう方がいたらお分けするくらいにして、時期を見て廃棄するしかないなと思っているところである。


いずれにせよ、お洋服を作って買っていただく時の廃棄までって話になると、全方位的に完璧な解が存在するわけではないってのが、改めてわかったよねって話。

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