したいこと、できること、求められること。

技術を披露してその素晴らしさを知ってもらうのは簡単ではない。

テキスタイルの現場において、日々「なんか新しい、見たことないものないの?」という市場からの要望は絶えない。絶えないものの、世の中はすでにモノに溢れていて、革新的な技術を伴った『見たことない生地』ってのは、合わせ技系の全部盛りも含めて、おそらくもうほとんど出尽くしてしまった感があるのではないだろうか。

または、色々な面でやりすぎて使えるモノではないか。


一周二周まわって、昔の企画とかが目新しささえある。

丸編み生地は元々肌着向けのため、ボディサイズに合わせた生地幅で丸胴仕上げが昔は普通だったそうだ。当時のサイズ感では今っぽくないため、ちょっと大きめサイズを取り揃えて生機リスクを始めた業者様だっているくらいだ。丸胴の裏毛ですよ!って元気にご案内されて、その生地を使った商品イメージが即座にできる人たちがどれくらい残っているのか不安だったので「それって需要あるんすか?」とまぁ失礼な質問をしてしまったのだが「需要はこれから作ります!」と言い張るので、かっこよささえ感じた。

すごく、狭い需要を狙った企画だと感じ、それ自体が『良いもの』だとか『悪いもの』だとかそういう評価以前に、求める誰かを見つけることができたらいいなって心から思った。


僕らは最近服のOEMが9割9分をしめるとはいえ元々は編み工場の営業だったので気持ちはわかるが、編み地を提案する人たちがこのままアパレルメーカー(ないしは、OEMでも生地に造詣がない方々)に向けて同じような説明をしてしまっては、さて商売になるものなのだろうか?と疑問を持たずにはいられない。


この手の記事は過去に何度か書いているが、冒頭一言目の通り、技術を、その素晴らしさを知ってもらうのは簡単ではない。


この10年くらいで『世界に数台しかない機械で作られた希少性』とか、『旧式機械でしかでない風合い』や、『特殊工程を通すことで出来上がった独自のハリコシ』など、生地屋さんの台紙にはこのような謳い文句が書かれるようになった。

生地問屋さんに担いでもらえると、工場は生産キャパを読みやすくなるので、どんなに前に出て営業しなければいけないと思っていても、費用対効果で生地屋さんや問屋さんなど、ある程度『わかってくれる人』がいるところへ売りに行く方が楽である。

結果的に、自分たちの技術を提案する際、工場発信の主観的な『訴求』がメインになりやすい。これは別に悪いことだとは思わない。自分たちが『できること』を知ってもらうためには必要な動きだ。

でも、その技術で作られたモノを実際に使って欲しい相手は、せっかくなら値段もしっかり通りやすいアパレルブランドだったりする。ターゲットのアパレルブランドをしっかり見据えて商品を企画できていたとしたら、提案はハマるだろうけど、『できること』だけを見せたとて、相手から不要と判断されたら採用されることもない。


ここで混同してはいけないのは、相手にとって不要なだけで、別にモノが悪いと評価されているわけではない。


工場系のご提案あるあるで、著名なブランドに採用されることを目指し、自分たちの力を目一杯注ぎ込んだサンプルが不採用だった時に陥る『あいつらはわかってない論』に対しては、あいつらがわかってないんじゃなくて、あいつらの欲しいもんをわかってない自分たちの方じゃねぇの説で反証可能だと考えている。


ここでは主語の入れ違いが起こっている。彼ら(ブランド側)はモノの良し悪しを評価する相手ではない。自分たちのクリエーションにとって今必要なピースを探しているに過ぎない。

でも提案側は良いものは評価されると信じている。もちろん良いものを作って評価されることはある。当然ある。そういうの発表の場として合同展示会に参加したり単独の生地展示会を開催したり、広く集客した上で技術披露したら良い。


旧式設備的希少性に関しては裏を返せば需要がなかったから淘汰されている可能性がある。その点に価値を見出せる人は相当パイが少ない。その裾野を広げるには具体的な便益を想起できる理由があるともっと良い。もっというと、台紙に貼られている時点でオーラ(非常に抽象的だけど)があるような生地だと採用率も上がるだろう。服にして仕立て映えがしたらもっと良くて、着用感もその生地であるからこそのものがあれば最高だ。

そうして得られる着心地の良さや仕立て映えなどの便益が、どうやって作られたか?ってところで初めて旧式設備の構造などの説明が活きてくる。


なんとなく言ったもん勝ちになりつつある中で、差別化って言葉に踊らされないように、この辺をもう一度見直してしっかりと素材のご説明を心がけたいと思ったのであった。

ulcloworks

ultimate/究極の clothing/衣服を works/創造する ulcloworks

0コメント

  • 1000 / 1000