現実問題。
この絵は先日作った動画内で使用したもなんだけど、なんとなく今回書きたいこととリンクするので、使い回し。
その動画はこちら。よかったらどうぞ。
何をやるにしても『思ってたんと違う』は、ある。
本来であれば、仮説→検証を繰り返し、思ってたイメージに実態を近づけていくのだろうが、机上でだけ物事を進めている人たちにとって、現場での試行錯誤は想像を絶すると思われる。
服飾製造産業における、依頼主からの「指示通りやれ」は、おそらくほとんどの場合、現場から「じゃその通りやってみろ」と返す言葉で一蹴されてしまうのではないかというくらい、現場では指示に対してその通りにならないことを現場レベルで解決している。
これは、逆の構図もあり得るので(じゃお前ら売ってみろ的な)、依頼主側を一方的に悪に仕立て上げる意図はない。
もちろん、きちんと対話が成立して、しっかりとパートナーシップを築ける人たちもいる。弊社もそういった皆様に恵まれたおかげで今の状態がある。
しかし世間ではそういう関係ばかりではないのも事実だろう。
僕は丸編み界隈の住人なので、そもそも伸び縮みということに対する免疫はかなりある。納期だって莫大小の世界だ、サバよみなんてお手の物だし、そのバッファ、実はあります的な、周囲に嫌な思いをさせない進行を前職時代に叩き込まれた。もちろん時々はそれを超えることもあるが。
思ってたんと違うあるあるとして、例えば生地輸送中の似姿によって、生地幅が変わってしまうのはザラだ。
それは生地屋としては日常茶飯事だが、どんな生地が入ってくるかは来てみないとわかんない縫製工場の現場では、到着してみれば書いてあることと違う物に対して、現場で何が起きてるかわからん依頼主から生地幅いっぱいいっぱいのマーキングで用尺計算された枚数指定で指示がきていたりする。
現場から「物理的に無理だ」と進言しても、依頼主からは「理論上可能だから(またはなんとかして)」という理由でおし込まれたりする。実際に数量が机上理論値に未達の場合、その責任はハサミを入れてしまった現場に向けられてしまうので、なんとか工夫をして成立させようと努力をしているのが現実ではなかろうか。
この、縫製現場と依頼主、のやりとり構図は、何も縫製面とだけ起こっているわけではない。
生地、それをなす編織染紡各工程、また縫製、これらと直接やりとりでものづくりしていける衣料品メーカーはもうそれほど残っていないだろう。相当膨大な知識を内製する必要があるから人材育成だけでもかなり時間がかかる。
別に今さらそれがなんだっていう話でもある。経済活動におけるスピードも大切だ。だからこそ、外部脳となった中間業者がしっかりとまとめ上げて交通整理をして、双方から飛び交う「指示通りやれ」vs「こんなんじゃできない」の着地点を素早く模索し最短ゴールへと誘う。
そんな両極端でいがみ合いの世界ばかりではないが、ネット上に溢れるこの繊維製造業界の終わりなき戦いは、それぞれの職務に対する理解と尊敬が欠如した結果が表面化しているように思える。
QR、引きつけ、受注生産、聞こえの良い言葉は多い。それらを否定するつもりはない。理論上可能なのだからそういう発言に出てしまうことは仕方のないことかもしれない。ちゃんと現場見て知識持てる人らなら、そのオファーが物理的に可能かどうかくらい想像つく。
理論上可能(実はかなりアクロバティックに無理してる)にしてしまったOEMが便利屋になりすぎた弊害はある。お客様は神様になりすぎた。会社名がもう既に自分が世界の中心ですって言っちゃってるじゃねーかってこれはまずいか。
とにかく、その物理的歪みは現場で実物を相手にしている人たちが解決していることも多いぞ、ということを、なんか改めて言いたくなった。
一方で、「納期遅れます」とか「ちょっと色違います」ってのを許容してくれてきちんと売ってくれてる人たちもいるってことも、製造側は忘れない方がいい。
自販して食えるほど甘くないから、受託製造ができているところは強みでもあるので、どうやったらそのパイを広げられ強固にしていけるかという意識もつけていければすごくいいと思う。
えー、仲良く、やって行こうぜ。
なんの話だっけ。
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