相場。
繊維製造は諸々の相場の影響を受けやすい。まぁどの産業でもそうか。
国内綿糸相場は今、とんでも高騰を見せている。綿花相場は過去に2011年の謎スパイク(投機マネーゲーム)の急暴騰からの急下落を経験する。じわじわと押し上げ、下げる見込みがなく100セント近くなると慌てて買いに走ってその値段を押し上げ、結果的に200セントをつける大相場となった。その後直滑降で平時水準より若干高いところで落ち着いた。200セント付近で買ってしまった方には気の毒だが、本当に綺麗にポキッと折れて100セントを下回る結果となった。
この頃はほんと、いわゆるフツーの糸でも「マジか」と言った具合で、高騰前の安値玉をしこたま持ってるところを探しては付け、探しては付け、と、妙な綱渡りをしながら、生地値に影響が出ないようにマージンなんかを圧迫しながら戦っていた記憶がある(何と
前回2011年のこの乱高下から、今回の高騰に手を出せず、糸が契約をつけられていなくて現物がないという事態も頻発している2022年。当時と様相が違うとしたら、円相場だ。
これだとわかりにくいが、当時綿花が200セントをつけたとき、円相場は80円/ドル程度であった。2022年現在は綿花が130セントでドルは120円近いのだ。単純に商品掛x為替ではなく、稀に見る原油高による流通経費の高騰も重なるとその金額はさらに跳ねる。
もともと、原材料メーカーの粗利益率は僕の知る限り低い。これはほんと、いつも驚かされるのだけれど、大手様ほど低い。設定がビビる。中小零細もこの大手相場ってやつで指値されたらひとたまりもないのだが、そのフィールドで戦わなければならない(何と
仕入れを安くする努力というのは、悪ではない。だから挨拶代わりに飛んでくる「なんぼ?安して」みたいなのはもうこの業界で生きていく上で、精神をすり減らす要素にはしてはいけない。若い頃はめくじらを立てたものだ。よく衝突もした。今は心頭滅却すれば火もまた涼し、筋の通らないことを言われない限りは冗談で返せるレベルになったような気がするのは僕だけかもしれないが。というか会社設立以来、謎値切りをしてくる方々とは距離を置いている。
これだけ材料が揃っていて、値上げの交渉に入ると一定数「ほな相場が落ちた時はなんで安してくれへんねん」みたいなの出てくる。先述の通り商品単一相場だけでなく為替や流通経費など色々事情があるけれど、値上げ幅を今回の相場に当てはめてモロに反映した場合、おそらく交渉に入っている値上げ幅のそれでは到底及ばない。それだけ仲買や商社の皆様が高安玉を織り交ぜてならしてくれている。それでも飲み込みきれない分が仕入れ値に反映されている。だから下がった時に値下げというのは、今の上昇分を大口に限り平時に戻して対応くらいは可能かもしれないが、下げ分即反映みたいなのは難しい。何故なら高い玉もおりまぜて平均値を保とうとしているから。
コロナショックでそもそも需要がないかも・・・的な凹みで安値を見せて、実需がないなら安くても作ったって仕方ないので減産、実際に物が足りなくなってそこへ投機マネーで高騰である。あんま下がる要素がない。モノ作らない方が正義とされがちなSDGsの世論圧力、ましてファッション産業は環境破壊と労働搾取のアイコンとされている。増産する理由もあまり見当たらない。
製造側はこれに乗じて値段を上げる交渉をしやすいはずだ。とはいえ、買う側からしてみれば、「この値段でコレ?」みたいな感覚は避けられない。だから「高くて当たり前」を押し付けるではなく、お値段以上を意識して価格反映をしていただける懐の深いお客様に対しては今まで以上の対応をして差し上げられるよう心がけていけると良いかもしれない。
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