恥ずかしいことなんか、ない。

誰だって最初は素人なのだ。いきなり全てがうまくいくほど、世の中甘くない。

そんなことは言われなくたってわかっているようで、案外とどこかで世の中を舐めてしまっているということは、ザラにある。


僕は前職が社会人としては初めての会社だった。学生時代にバンド活動を円滑に行うため、自由度の高い会社を選ぶために、前職を選んだ。業界に入り込む動機など不純なもんだ。


とりあえずさっさと就活を終わらせたかったのと、上京してから最初のバイトに就くまで20社くらい面接さえたどり着けなかった(変な金髪にボロボロの服だったので当たり前)ことが若干精神的トラウマだったので、一発で終わらせたい一心で、面接に臨んだ。


生真面目に通り一遍のやりとりを交わした後、自分でいうのもアレだが、高校時代の学力は低い方ではなかったので、最後に自己アピールはあるか?と問われた際、「僕、天才なんで」って言い放った。まぁ、ノリだ。スラムダンクの桜木花道よろしく、冗談も半分で。しかしそこまで真面目にやったのに、全てを台無しにする可能性のある、実につまらん悪ノリだ。

面接してくれた前職の経営者は、普段から八の字眉毛(これは後日気づく)なのを、より一層八の字に、いや、もう縦2本の線にして、少し笑ったあと「それは、プロフェッショナルでありたいってことかな?」と聞いてきたので「まぁそういうことでいいっす」と、ロッケンローラーの無駄に尖った部分を最後に見せて、面接を終えた。


最後の最後にやっちまった感があったので半ば諦めていたのだが、後日電話があり「前向きに検討しているからまずはバイトに来ないか?」というので、速攻で夜間帯のバイトリーダーまで上り詰めた某牛丼店のバイトを辞め、在学中だった学校も基本的に卒業に無関係そうな授業を全部ブッチして、前職のバイトに通うようになった。


そこではいわゆる、普通の社会人として求められる一般的なスキルも必要な世界だったので、例えば「おい山本、送り状書いといてくれ」って言われても、「は?送り状ってなんすか?」と返してしまうほど一般社会人の知識が無いレベルだった僕を見て、自らを「天才」と言い放った新人に対する周囲からの絶望は計り知れないものだったに違いない。


ある日「おい山本、これコピーとって〇〇へ送ってくれ」と、布が張り付いた台紙を渡された僕は、何を思ったか、複合機のファックスを流し込むところへその布付きの台紙を流し込み、慌てて引っこ抜いて力でねじ伏せた結果、複合機一台を葬った。自ら「天才」と言い放った新人に対する周囲からの絶望はhkrs・・・


新人の業務とは電話を誰よりも早く取り、元気よく会社名を名乗り、営業に取り次ぐなども含まれる。前職は割と老舗だったので、取引先も古く、顔馴染みが多い。だから電話口の声が聞いたことのない声であれば、それが新人だというのはすぐにわかるものだ。

ある日、お茶目な仕入先様がお電話をくださって、当時の部長に変われという。お名前を頂戴し、お繋ぎするのが社会人ルールだとこの会社で学んだので「失礼ですがお名前を頂戴してもよろしいでしょうか。」とお伺いした。山本渾身の丁寧語だ。こんな言葉遣い、今でもあんまりちゃんとできない。

そしたら電話口のお茶目な仕入先様は「あぁ? 〇〇(会社名)だよ!(怒)」と語気を荒げられたので、「すみません、お名前を・・・」と繰り返した時点で「わかったよ、じゃあ綾小路きみまろでいいよ!早くつなげ!(怒)」とおっしゃられた。(綾小路きみまろ、で、いい?だと?)など色々とツッコみたい気持ちは振り切れんばかりだったが、とりあえず「部長、〇〇(会社名)の綾小路きみまろさんからお電話です」と繋ぐと、会社内は爆笑が起こった。

なぜ言われたことをきちんとやって、こんなに笑われなければいけなかったのか。僕はロッケンローラーなので、また一つ社会へのフラストレーションをため、楽曲制作の肥やしにしようと感情の高まりを忘れないためにしばらく意図的に憤っていた。


後になってわかるのだが、この業界の中小零細あるあるで、〇〇(会社名)=〇〇(代表個人名)だったので、〇〇(会社名)の綾小路きみまろ氏は存在せず、〇〇(会社名)=〇〇(個人名)で伝わるはずが、僕が無知なあまり、悪戯の対象になったという与太話。

その〇〇の綾小路きみまろ氏(偽名)とは今でも仲良しである。


なんという無知の塊だったのだろう。

会社の中で一番下っ端で、若いうち、というのは、ある意味その無知さを最大限に活かすことで、なんでも教えてもらえるというボーナスタイムだった。

それは本当に貴重な時間で、今でもそのキャラ立ちしたおかげで、バカ丸出しで知識を求めることができる。そして学び、仕事に活かすことができているのは、なんと幸せなことだろう。


みんな、知らないことは恥ずかしいことじゃない。

それくらい知らないのかって言われるのは一瞬。知らんもんは知らん。でも知る必要があるから教えて欲しい、知らないから教えてくださいって、素直になればよい。知ったかぶりしないで、後で調べりゃいいやってやつは大体調べないし身に付かない、それこそほんとに世の中舐めてる。

最初は舐めてても、そのままじゃうまくいかないってとき、周りを悪者するんじゃなくて、自分の無知を知るっていうのが、割とおすすめなライフハック。なんの話や。

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