丸編み生地製造の勉強-綿糸の単位編-
先日、勉強会に向けて打ち合わせしている時に質問があった内容で「山本さんが生地作りで一番苦労したことは何ですか?」と聞かれ、即答で「糸ですね」と返した。
糸は生地を作っていく上で、一番最初に考えなければいけない要素でもある。
しかし、その奥深さと種類の多さに一言で「こういうもの」と括ることができない厄介な存在である。
天然繊維ひとつとっても、恒重式番手という方法で表されるがなぜか、麻番手、綿番手、毛番手とそれぞれの表記方法が違う。
↓このように
麻番手 30/1LもしくはL30や30Lなど
綿番手 30/1
毛番手 1/30
今回はカットソーの基本なのでまずは綿糸を解説してみる。
綿糸の恒重式番手は1ポンド(約450g)で840ヤード(約768m)の長さの時を1番としている。
例えば1ポンドで5040ヤードなら6番というように、長くなるほど番手表記の数字は増える。
同じ質量で長さが長くなるということは比例して糸の太さは細くなる。
つまり綿番手は数字が多いほど"細い"ということになる。
一般的な理解としてはこれで概ね間違いではないのだが、恒重式は本来「重さに対しての長さ」が単位なので、常に同じ細さになるという保証はない。
水分含有率や繊維繊度の違いによって、糸の密度が変われば太さが違うということは大いにあり得る。
表記だが、「30/1」と表した場合は1ポンドで25,200ヤードの長さの糸が一本で撚り上げられたものという意味になる。
スラッシュの後ろは撚り本数を意味する。「30/2」であれば、30/1を2本撚り合せた双糸(ソウシ)ということだ。
「30/3」なら30/1を3本撚り合せた三子糸(ミコシ)になる。
この業界は意地悪な人が多いので、ど素人相手に業界語でふっかけてくる。
新人相手に「おい山本、サンマルの天竺取ってこい」とか言ってくる。
をい上司、サンマルって何や。
サンマル。。それは糸番手を意味していた!
20/1は「ニマル」20/2なら「ニソー」
30/1なら「サンマル」30/2なら「サンソー」
40/1は「ヨンマル」40/2で「ヨンソー」など。
じゃ10/1は「イチマル」かと思ったらこれは「トーバン」なのである。ややこしい。
100/1は?「トーマル?」いいえ「ヒャクバンタン」です。100/2は「ヒャクソー」もういいか。
番手の考え方を一通り終えたことにして、次は糸の形状を意味する言葉を紹介する。
大まかには3種類。綛(カセ)、コーン、チーズ。
まずは綛(カセ) ↓これは糸を染める時にこの状態で染めることもあるが、この形状では編めない。
コーン。アイスのコーンみたいなので覚えやすいと思う。↓円錐型で編むときはこの形状にする。
チーズ。↓コーンに似ているが側面に角度がなく円柱型でこのまま直編みするのはむずかしい。
そして綿糸最大の難関、取引単位。
「おい山本、30/1SCS(糸銘柄)の単価問い合わせしとけ」承知しました上司。
山本「すみません、30/1SCSの単価教えてください。」
糸商社「8万」
8万、、、
山本「上司、8万です」
上司「キロいくらや?」 は?キロいくらか8万じゃねーの?
山本「すみません、8万ってキロいくらですか?」
糸商社「は? なにゆうてんの、梱(こうり)やで」
梱。。
山本「上司!梱8万です!」
上司「だからキロいくらなんだよ!」
・
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この業界は意地悪な人が多い。
梱とは糸の取引単位で概ね180kgが1梱である。概ね。。。
基本的には180kgが1梱と考えて良い、中には181.44kgの時もあるが。
なので¥80,000/梱であれば ÷180kgで ¥444.44444.../kgである。
端数計算どうすんのか?
心配無用である。1キロ単位で買えないから180kgで割る必要がないのである。
綿糸の最低出荷単位は1ケースだ。
1ケース。。
上司「おい山本、30/1SCSの仕立て聞いとけ」承知。
山本「30/1SCSの仕立て教えてください」
糸商社「5玉入り」
5玉。。。。
山本「上司、5玉だそうです」
上司「何本なんだよ?」
何本だと?
・
・
・
この業界は意地悪なひt
綿糸の単位は以下である。
1梱=180kg(181.44kg)
1ケース=22.5kg(22.68kg)
1本=1.875kg(1.89kg)
5玉とは1玉=4.5kg(10ポンド)が5個分という意味で、実際に玉が5個入っている訳ではない。
1ケースの中に1.875kg巻きの糸が12本入っている。
最低出荷単位1ケースは22.5kg つまり1/8(0.125)梱である。
だから端数など出ない。¥80,000/梱なら、1ケース買えば¥10,000である。
このように綿糸だけでもこんなに単位が出てくる。
糸種は多岐にわたるので、糸の知識を得るのは相当時間がかかる。
とりあえず、綿糸はここまでにしておくが、この業界は意地悪な人が多い。
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