おかね。

今日、5月17日はulcloworksの創立日である。なんとかかんとか、5年を終え6年目に入る。

創立当初から各方面からたくさんのご支援ご指導のお陰様で、本日を無事迎えられることを大変喜ありがたく思っております。皆様、本当にありがとうございます。


振り返るってのもアレだけど、もし誰か、今後、この繊維製造業界において独立開業を考えているのであれば、今回のタイトル『おかね』について、この5年で学んだこと、現段階で教訓になっていることなど書き記しておくので、参考になれば幸いである。


立ち上げ以前から、仕入先様各位との関係値の構築は非常に役に立った。これは、心理的にもビジネス的にも、彼らにとってドライに切り離せない部分が多すぎるため、仕事は仕事、プライベートはプライベートといった具合の、サバっとした関係値を望むと、結構難しいなという印象だった。

具体的に言うと、一回飲みにいって気に入ってもらえたら、彼らの商売感としっかり向かい合っているとみなされる可能性が高いので、トラブルで金銭問題が発生した時に、きちんと線引きして処理するという、法人対法人のビジネス的なソレは事実としては受け入れられても、心理的には受け入れられないケースが多い。

フィジカルワークが中心の彼らにとって体を目一杯動かして得た労働対価を、紙切れ一枚で無くす(またはマイナスにする)ことは、事実クオリティに問題があって起こった事故だとしても、その結果の前に(誰も悪いものを作ろうとしているわけではない)だったり(気のしれた仲だから安く請けてあげてるのに)だったりと、基本的にはネガティブな感情しかうまない。言い方は悪いけど、そういう悪質とは言い切れない甘えがどこかにある。

なのでクレーム発生と同時に、金額の処理が発生する場合は、のんでいただく場合、基本的に新規オーダーでソレをそっくり飲み込むくらいの『儲け』が用意されているのがセットだ。

付き合い出しは気に入ってもらうために良心単価で他社より安い印象をつけても、相手が慣れてしまえば『ありがたみ』などは感じてもらえず、それどころかもっと安くできないかと余白を探されて突っ込まれ、その都度に巻き起こる(いつも安くしてあげてるのに・・・)という表に出てこない負の感情が溜まり、トラブルを引き金に爆発して取引をしてもらえなくなるというケースは先輩の背中で何度も見てきた。〇〇さんところ、安くていいよ!というオススメは、つまり何かトラブった時の受け止めきれる余力も残されていないと考えておく必要がある。

なので、クレーム処理において仕入先様へヘッジして自社を無傷に終わらそうとする際のデリケートさは、独立前から心得て置くと良いかと思われる。


次いで、組織の営業時代にそれほど意識していなかった部分としてキャッシュフローというのがある。営業は月次で上がった数字で胸を張れたので、なんというか、雑魚時代に大手商社様のチョンボで集金に回るという経験ができたのもデカい。伝票回せば数字が立つけど、それは果たして自分一人の力であったかと思い直すいいきっかけでもあった。

繊維製造工業にとって、OEM仕入れを完パケ仕入れ右左して利鞘をとる方法ではない場合、つまり、糸なり生機なり生地なりから仕入れてコストを積み上げて最後に服の状態でお客様に納品する場合、手前で出ていくおかねの量は数字的想像力がないと普通に死ぬ。

右左で利鞘をとる前者でも、入出金のタイミング次第ではアウトだ。


積み上げ仕入れ金額の数字的想像力がないと普通に死ぬというのはどういう状態かというと、会社作った時にある資本金が銀行借入などしない場合は売掛金が入金するまでの命綱なので必要経費を資本金から差っ引いた分しか仕入れを起こすことができないということだ。当たり前だけど。

で、銀行借入に関しては世の中そんなに甘くないので、いきなり普通の銀行行って金貸してくださいっていっても無理ゲーだ。が、日本には政策金融公庫という素晴らしい機関があるので、創業当時は夢と希望と電卓と過去の実績とそれに基づいた市場研究の結果得られる可能性のある現実的な数字を5年分くらい試算して持っていけば、創業融資というありがたいものにたどり着く可能性が高まる。その借りたお金で仕入資金のレバレッジをかけるのだ。

ここまでくると、頑張って資金繰り表作って事業計画書作って金融機関様にお願いをしにいき、独立前から良好な関係値を構築してきた仕入先様へ発注をし、仕入金額を長い間寝かせておいて、ようやくお客様に売掛を作る際にとても感慨深いものに包まれる。一方で、安易に値切られたり、支払いのリスケ要請など受けると「オメーこれどんだけ大変な思いで作っていくと思っとんねんコラ金先払えボkゲフンゲフン」と大声で罵りたくなる気持ちをグッと堪える必要が出てくる(言い回しがめんどくさい)

だが、ビジネスとは非常に簡潔に出来ている。それができないなら次はもう頼まないんで別に良いです。で、終わりという人たちだっている。これ書くと「クオリティが他所にないからウチにしか頼めない」といった具合の作り手最強説も出てくるのだが、それはまたちょっと別軸なので今度書こうかどうしようか。(もう書いてるか)


もちろん、そういうものを通り越して『あなたから買いたい!』と言ってくださる大変ありがたいお客様に恵まれているおかげで、今の弊社があるのだから、世の中捨てたもんじゃないのだが、一般的に考えて、ビジネスとはそういうもんだ。だから、金の工面ができねぇなら、仕事頼むのちょっとヤバいよなってのは本音だろうし、そのことでいちいち文句言われるくらいなら、多少手が悪くてもそれなりに言うことをスッと聞いてくれる仕入先に仕事が傾くのは至極当然の結果だろう。

どんなに業界内の評判が悪かろうと、ビジネス上で勝ってる奴らにどんな悪口ぶつけたって勝てば官軍。だからそいつらとビジネスやらないなら代わりにしっかり取り組んでくださるお客様を味方にして仕入先様もちゃんと儲かる、そういう循環を自分たちを中心に巻き起こすことができるという確信とやり切るという覚悟がないと、独立開業においてお金は非常に心の重しになる。


いずれにしても仕入先様に対しても、お客様に対しても、おかね絡みで色々と厄介なことになると、どんなにしっかり手を繋げていたと思っても、実はそう思っているのは自分だけで、きっちり『金の切れ目は縁の切れ目』になってしまう可能性は誰にだってある。

なぜならあなたが回すそのお金を生活の当てにしている人たちがいるから。ある意味、買掛金は仕入先様各位の人生を少し預かっているに近い。(これは大げさだけど大なり小なり影響はある)

実際に手元資金が薄い状態でお客様からの入金が遅れたら、あなた自身の生活を間違いなく圧迫するのだから、その気持ちは十分に理解できると思う。


僕自身、独立前の皮算用で、売って買って手残りでしっかり生きていけると確信して乗り出したものの、割と序盤で結構資金繰りピンチになったのは言うまでもない。

今の弊社とて別にお金が潤沢にあるわけじゃない。とはいえ、仕入先様にお金をしっかりお支払いして、友好関係をしっかりと保ちつつ、お客様へ気持ちよく商品を受け取っていただくためにしっかりとケアをさせていただく、そしてちゃんと対価をいただいて自分たちもきちんと続いていく、これを今後も愚直に続けつつ、今年度からは新しい領域にチャレンジしていく。

一事が万事。現状維持は衰退。攻撃は最大の防御。この辺を常に頭に入れて、また次の5年をやっていこうと思う。



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