新規アタック。

前職から独立してulcloworks Inc.を立ち上げ、5年間が経った。

早かったし、長かった。まぁ具体的に節目感を感じるようなことは何もしてないし、周年だったからどうとかこうとか、そういうのはなかったので粛々とやるべきことをやったという感じだった。

ただ、そのやるべきことというのは、人によって、またはその人の目指すところによってそれぞれに違うので、弊社のあり方を外側から見て「もっとこうした方がいい」とか「あの時にあーした方がよかった」などなど、言いたい人もいるだろうし、思ってる人もいるだろう。先輩経営者たちの中には(仲良しなので心から愛を込めて)本当にお節介な人が多いので、ありがたくもちょっとめんどくさい(嬉しいけど)助言をよくいただく。これはこれで、僕のことを心配してくれて、色々とアドバイスを下さっていることは理解している。本当にありがたい。でも、大事なことだと思えば自己解釈して取り入れ、不要と思えばしつこく言われても無視し続けてきた。なんたって、僕らの会社だからね。


特に商流に関しては、僕らの業界は結構うるさい。

お手合わせしたいブランドさんにたどりつくまでに、その商流の間に取引先がいたら基本はバッティングを遠慮する。間接商売で実際に携われているケースもあるし、なんなら恐れ多くもエキスパートとして商談の席に引っ張り出されることも多い。でも飛越直接商売を自分らからは仕掛けない。そういうなんというか、そりゃやればできちゃうんだろうけど、お前それやっちゃうんだふーんみたいな、仁義というかそんな空気みたいなの守るの、結構大事。

ただ、間に挟まってる人たちの種類も色々なので、やむを得ず双方合意の上、飛び越すことはある。一番多いケースは最終顧客様の方からアプローチいただく場合だ。「ちょっと単価もきつくなるので・・・」という遠慮がちなものから、「商社もともと嫌いやねん!」という乱暴なものまで様々だが、いづれにせよ、弊社の商流から一応、顔つなぎしていただいた会社様には一報入れ、合意の上、直接商売させていただくこともある。

逆に言えば、間を飛び越しても弊社と商売したいと思ってくださるお客さんのためを思った中間業者たちの懐の深さともとれるので、飛び越された中間業者たちの株は上がる。ちゃんと自分から引ける。そういうところに、新しい仕事が生まれるのかもしれない。


しかし、その商流に縛られ、また、言い方をかえれば商流を頼りすぎてジリ貧になる業者もたくさん見てきた。彼らは一様に言う「間に入っとる奴らがポンコツ」は、気持ちはよくわかるし、実際にそうなのだろうと思う。

でもそのまま終わっていいのかって話なので、特に工場系OEMはぶら下がってるだけでは食えない時代の真っ只中であるのは御自覚あるかと思われる。世は既に、腕がいいとか、縫い目が綺麗とか、そういう商品の『上がりツラ』だけがストロングポイントにならないというか、直接工場をコントロールできるメーカーだけがグリップできる背景は安泰だったと言う時代ではない。

そのコントロールできるメーカーも消費細りの市場の煽りは受けるわけで、どう足掻いても資金繰りを圧迫してくれば、頼る相手も変わってくる。自己資金と繋ぎ融資だけでは世渡りできず、どこかで第三者のファイナンスを頼らざるを得ないケースだってある。このファイナンスを握られた時、その間に入る人たちがポンコツになってしまうことだってある。でも背に腹は変えられないそれぞれの事情から、商品クオリティを下げてでも供給という選択をする人たちだっているわけだ。

悲しいかな、いい物作りだけでは勝てない。これはもうずっと前から、見たくないけど現実としてある。いい物作りは当たり前の前提条件であり、そこにあぐらをかいてしまえば、腕は良くてもめんどくさい人たちで終わってしまう。

昔ガチでバンドマンだった頃、楽曲に絶対的な自信があった。だから流行りではなくてもわかる人だけ分かれば良いと思ってた。それで続けられるなら続けてただろうけど、僕らの思いとは裏腹に、好きなテイストではない奴らがメジャーに行った。あんなに下手くそなのに。納得がいかなかった。でも彼らはお客さんを喜ばせていた。技術だけではない、別のところでも。

この時、お客さんを悪者にするのは簡単だ。「あいつらは分かってない」そうやって周りを悪者にしたら、自分たちはいつだって正義でいられるから。そうやって戦い続けることができる資金力が底なしなら、道楽として誰かを悪者にして戦い続けたかった。

でも無理だった。


音楽の道を趣味に切り替えた前職時代、そのタイミングで何かが変わった。そうだ、そのタイミングでニューヨークに行ったっけ。そこでアメリカで会社を作って日本の生地を売ってる方の言葉で完全に変わった。「必要とされないものは自己満足で処理されるんだよ」

自己満足でも良いと思える領域でやる分には誰に何を言われても文句を言わせない。それでいい。でも、ビジネスとして継続させるには、そういう部分だけでは無理なんだって気づいた。

生産業務で良質な業務提供ができる業者は、ある意味キャパ売りの仕事でもあるため、お客さんから同業のお客さんを紹介していただくケースは圧倒的に少ない。それは心理的には嬉しい反応であるが、同時に先方の業況次第では共倒れリスクが高まるので、経営判断としてはそのままでいいというわけにはいかない。

だから、僕らは商流を邪魔しない、自分たちの提供できるサービスを喜んでくれそうなお客さんを毎シーズン新規で声をかけさせてもらっている。

アルクロワークスと申します。これこれこういう背景で生産のお手伝いをさせていただいております。ぜひ御社のお手伝いができたら幸いです。これを毎シーズンやる。泥臭い、でも一番手応えがある。そしてありがたいことに、一社、また一社とお取引先様が増えている。


うちは腕がいいから見てくれる人がちゃんと買ってくれる。そう信じて報われる時代ならどんなにいいか。それで沈んだら、それはもう、自業自得なので、誰かを悪者にしていいわけがない。

何もしなかった自分が、周りの変化を批判するのはちょっと筋が違うと僕は思う。別でも書いたけど。


これから先の5年、10年、アルクロワークスが続いていくためにも、この泥臭さは忘れずに続けていこうと思う。

ulcloworks

ultimate/究極の clothing/衣服を works/創造する ulcloworks

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