僕らが付け加えることができる価値。

あけましておめでとうございます

本年もゆるくこちらのブログにもお付き合いいただければ幸いです。


さて、さっそくコロナ関連で緊急事態宣言出そうで、先行きが危ぶまれる2021年だが、思い返すと昨年に同宣言が発出された時は、本当に大変だった。事実だけ言うと以下のツイートの通りだ。


これはまじで、どんな綺麗事並べても背に腹は変えられない。店先で商品が売れなければ、卸元に支払うお金の用意ができない、卸した方は小売から入金がなければ、メーカーまたは製造してくれた人たちに対して仕入れ金額を払うことができない。社会貢献しているとか、人のために働いてるから崇高とか、そういう次元を通り越して、リアルにお金が回らないので会社が立ち行かなくなる可能性を充分に浮き彫りにする。

これを見越して、キャッシュフローは常日頃余裕を持って運営をしていかなければならないのだが、我らが繊維製造工業は大半が常に火の車だから、支払い遅延なんか食らったらひとたまりもない規模の人たちは、もうそれはそれは膨大な数だ。


どこかで(twitterで)チラッと「製造業はサービス業じゃないぞ!」とどなたか繊維製造工場の方のお怒りの声を見かけて、(そうそう、工賃とか仕事内容とか、依頼者がきちんと守ってくれないとお仕事のお約束はできないよね)って強く思ったし、(本来あるべき姿ってやつからすると、随分と身勝手な依頼者も増えたんだなぁ)、なんて休暇中にぼんやり思ったりもした。


けど、その休暇中にちょっとややこしい案件で板挟みになって、先述で思ったことを全て自分の中で改めて覆した。

ことの発端はお付き合いのあるブランドさんの、普段僕とは関係のない生産担当の方が、弊社に企画生地を依頼くださり、縫製振り屋さんに仕切って欲しいという流れで、当然服の企画は全てブランドさんから縫製振り屋さんへ共有されていて連携が取れているものだと思っていたので、生地的に様々な制約があることを、縫製振り屋さんもご存知でなければいけない状態だったのが、いざ生地を投入してみたら縫製振り屋さんはその企画内容を全く把握できていない状態でいきなり結構難易度の高い生地と向かい合うという、まぁこの業界ではよくある光景なんだけど、よくよく考えてみたら杜撰なブランドの生産管理だなっていう話で済むっちゃ済む話。


ところが仕事を受けた縫製振り屋さん、怒りの矛先をブランドさんではなく、生地を作った僕に向けてこられたので、その怒りをほどき、きちんと生産してもらうために骨を折るということに時間を使った年末年始の休暇でもあった。


僕としては、何より服がお店に行って売れてくれないと困るので、ブランドさんの企画意図が伝わっていなかった点をしっかりと伝えながらも、生地をどうやったら服にしていくのか案を出しつつ、ブランドさん側にも事態を説明して、実は今日、全て丸く収まったので幾分気持よくこの記事を書いている。


とはいえこの一連で考えたのは、誰がどこにどういう価値があると感じたらその対価を支払いたいと思うか?ということである。話の脈絡からなぜそんなことを思ったかと不思議に思うかたもいらっしゃるかもしれない。


少し大袈裟な話かもしれないが、ブランドさん側には企画意図を生地と縫製で分けて考えられる方はもう多くはおられない。特にカットソー系は。だから生地提案から縫製までまとめてくれるOEM業者に丸投げという事態はカットソーにおいては非常に多い。これ自体はもう珍しくもなんともない。

だが、OEM依存度が高いと、今回のように、生地と縫うところが別々で企画意図を共有しながら商品を組み上げていくという、考えれば普通のことが、非常に難易度が上がる。生まれながらに画面をピンチしたら拡大するのに慣れている僕の子供たちが、デスクトップパソコンの画面に向かって必死にピンチするのと同じようにマウスのスクロールで拡大するという作業をそもそも知らない、的な、服作りってそうやっていろいろな人にきちんと企画の説明をしながらやるってのをナチュラルに知らない人たちがアパレルブランドの生産をやっていることなんて、僕からしたらもはや普通だ。


だけど、そう言った依頼者側の製造に関する無知を、依頼者の悪いところとして、自分たちはそこに寄り添っていかないという態度をとる製造業の方も少なくない。そしてそうやって依頼者の無知を嘆くばかりの人たちはいつだって値段の文句を言う。そりゃそうだ、企画意図の事前説明から共有、詳細なテストサンプル、そして量産の完璧な依頼書、完璧な職出し、完璧な設計を渡されて、依頼通りにやれば依頼通りのものが出来上がってくる『作業』に対して支払われる対価というのは、もう安価な代替え背景があるのだ。もちろんそこまでやってくれた上で、きちんと潤うほどのお支払いをしてくださる方々がいる方が健全なんだろうけど、もうそんな時代じゃない。だからワンタッチで抜けがあっても意図を汲み取ってしっかりフォローしてくれる業者に仕事が集中するし、そういうところは結構単価も飲んでくれてたりする。要は持ちつ持たれつの仲になっていくのだ。

だって支給される下げ札に書いてある上代見たら、下代の想像くらいつくでしょ。それに見合ってる仕事かどうかは依頼相手が既に決めてることだから。


だから、製造業は、設備を動かすのも大変なんだけど、もうサービス業の領域でもあるのだと思う。

そこまでしないと潤わなくなってしまった今の構造を恨むのか、それを乗り越えて潤うように変わっていくのかは、本人たちの考え方次第なのだけれど、少なくとも僕は、そう思った年末年始だった。

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