振り屋を飛ばしたっていうだけの話。
僕は中間業者だ、異論はない。中間業者に関しては過去に何度も記事をあげた。そのおかげかなんか知らんけど、「中間業者いらない」で弊社ホームページをご覧になる方々がかなりいらっしゃって正直、おもs、びっくりした。僕はてっきり素材の勉強が多いと思ってたので。
インターネットで発信をしていると、これから服作りを始めたいのだと会いにきてくれる人は結構いて、それぞれに抱える解決したいことは様々だが、多くは「工場さんがない」という内容だ。なるほど。これから服を作りを始めたい人がいきなり工場さんとやろうとしているわけだ。
彼らの話はこうだ。
「インターネットサービスで見積もりを取ったら高過ぎてハマらないから、中間業者を飛ばして工場さんと直接取引したい」
要約すると「工場を紹介してくれ」ということになるのだが、流石に言い方はアレだけどシロウトさん相手に初見で工場紹介は僕もなかなかできない。これについて感じていることは実体験を交えて敢えて別途noteに記すことにする。
最近は色々とウェブ上にてワンストップで服作りができるサービスが出来ていて、前述の通り服を作りたい個人のニーズもあるのだから、彼らからしたらネットで拾えない工場さんはいないも同然ということになるのだな。
さておき、以下はタイトルの通り、ただの思い出話である。
もはやリアルの場となったインターネット上に存在を現していない工場さんたちは、相変わらず中間業者を頼っての受注が多いようだ。少なくとも、弊社の仕事を手伝って下さっている工場さんの中にはそういう表立った発信をしていない工場さんも多い。
今弊社がそういった工場さんたちとお仕事をさせてもらえているのは、数年前から弊社に入ってくれた生産担当のおかげなのだが、お取引の前にきちんと僕も同行してご挨拶させてもらい、今後の業界を考えると、既存の商売だけではお腹がいっぱいにならないタイミングがあるかもしれないから、微力ながらご協力させていただきつつ、もちろん双方対等な関係でお取り組みさせてもらえたらとお話させてもらってお取引を開始させてもらった。
概ねの工場さんとお話を終えた後に、当時お付き合いしていた振り屋さんから猛烈な勢いで怒りの入電があった。
「まずその人間採用の筋が通っていない。相談するべきだ。工場に直接行くのも(暗黙の)ルール違反だ」と。
当社の採用に関する他社へ説明する筋とは?また、暗黙のルールとは?
当事者の気持ちになれば、理解はできる。数字が減っちゃう可能性が目に見えるからね。だけど正直言って、その振り屋さんに依頼している僕の運動量はほとんど工場さん直で依頼しているレベルの動きだった。そして上がりの商品に対しても抜け漏れも多く、お客さん側から工場コントロールを指摘された時さえあった。何か現場でトラブルがあれば、振り屋が立ち合いせずに僕自身が工場現場へ行って解決方法を依頼するなどしていた。もう、おる意味なくない?
事実、経営内情をしる僕は当然コスト管理に目がいくのだが、支払い工賃は物量も増えたので一概に比べられないが、単価だけみて合計してみると、相当なマージンをその振り屋に支払っていたことが浮き彫りになる。結果論だが、筋が通ってなかったのはどっちやねんと怒りを覚えたのは確かだ。
ということで工場さん直接行ったら、工場さんも別に問題ないって感じだったし。
ところが工場さんの中にはその振り屋さんの手が先にまわって明らかに迷惑そうに追い返そうとしてくるところもあった。これは仕方ない。約束を破ったら仕事切らされるかもしれんからね。それはもう、各位の判断で。
その振り屋さんの工場さんの中にも自発的にお客さんへ向けて振り屋さんを飛び越して営業をかけたりしている事実もあった。ほんと各位の判断で商売をつなげる道筋を立てていく必要があるのだ。
暗黙のルールってなんだろう。筋ってなんだろう。彼らの収益の面倒までみるのが依頼者側の役目だとするならば、当然の動きがあって初めて成立することだろう。満足してたら飛び越そうなんて思わんしね。ただ金額だけで話を片付けている訳じゃない。それ以前に仕事の質の問題があるからだった。そうだ、それで僕は中間業者不要論をある意味賛成しているのだ。
商売は自由競争だと前職上司から刷り込まれていたので、お客さん側にも飛び越しを仕掛けたことが当時あった。要は工場だった僕が生地問屋さんやOEMメーカーさんなど取引のあった中間業者を飛ばして特定のお客さんではなくアパレルメーカー市場をOEMで取りに行ったのだ。これも割と揉めた。確かにやられた側はたまったもんじゃないよな。わかる。
僕もお客さん側から工場さんに対して飛び越しされたことがある。でもその時感じたのは、筋が通ってないとかルール違反とかっていう怒りじゃない。自分の対応がお客さんや工場さんにとって満足のいくものではなかったということだと言い聞かせたし、実際そうだったから飛び越しが起こったのだろう。
飛び越した方、飛び越された方、飛び越したいと思ってるけど動けない方、それぞれにそれぞれの事情がある。だから何が正義なんて言えた立場じゃない。僕はお客さんにとって仕組みを最適化した結果、仕入先が一つ減ってしまった。その時の、お客さんや弊社、または飛び越した先の工場さんたちの商売的には正義でも、切られた仕入先からすると悪になるのだ。今はその振り屋さんとも和解して、適宜仕事をお願いしている。足りないだろうけど。関係は良好だ。
暗黙のルールってのはおそらく、惰性の人間関係で出来上がった都合の良い『取り組み風』のことで、筋が通らないのは、その関係を許可なく崩してしまうことなのだろう。僕にとってのいらない中間業者ってのは、この惰性が正義になってしまっているところだ。誤解のないように。中間業者さんたちのほとんどは存在意義のしっかりとした人たちだ。
誰かにとっての正義は誰かにとっての悪だ。そういうのも背負って、切るなり飛び越すなり、それぞれに覚悟を持って商売されたし。
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