下請け製造会社のブランド化。

昔、いや今もあんのか、ファクトリーブランドって流行ったじゃないっすか。流行ってないのか。僕の周りは受託製造業が多いので流行った気がしたんすね。サーセン。勘違い。

とはいえ、今回コロナを経験した上で、自社オリジナル製品を作って卸とか小売とかにチャレンジしていく動きが一定数みられたのは、受託製造業にとって僕は良い動きだったと思う。成否は別として。やっていこうという気概は良かったと思う。


自社ブランドや自社オリジナル製品を生み出すというのは、製造工業にしてみたら、実は結構しんどい作業だ。自発的に商品を企画してエンドユーザーに向けて提案をしていくので、普段とは仕事の流れが違う。だから、加減がわからずに自社の技術できること全部盛りモリモリのものが出来上がったりするのは珍しくなかった。そしてこの手のやつは、概ね失敗に終わっていると記憶している。

僕は服作りの現場にいるので、その多くは、服のファッションブランドを作ろうとして事故っている様子をみてきたのだけれど、なんだろう、それしかブランド化の道はないのだろうか?と思ったりもする。


ブランドって何や?ってところで、一回立ち止まって考えた方が良いのではないか。


例えば生地屋、及び生地製造関係工業の場合、依頼者からの製造受託ではなく、自社企画のオリジナル生地を作って訴求していくのが、まず一歩目にあると思う。これは既に、多くの工業も取り組んでいることだろう。でも、提案して好評を得た側からすぐに脅威は迫りくる。競合他社からのリプロなどだ。または、はからずも商品がカブってしまうことは、しばしば起こる。

特に生地屋は、糸が、紡績の企画商品だった場合、この糸の出口を減らすことはできない。だから僕の知る限り、和歌山産地のニッターさんたちは糸自体をオリジナルで企画していた。が、彼らとて0→1がすぐにできたわけじゃない。紡績さんからの叩き台提案があって初めてそれができている場合がほとんどだ。だから、ネタ元はかなり限られるので、早かれ遅かれルーツが明らかになり、値段競争になる。これはもう自然の流れだ。

商品に独自性があっても、いずれ競合が現れ、消耗戦になる。何も繊維業界に限った話ではないので、この『安価な方でリプロ』ということにいちいち目くじらを立てていては、身が持たんだろう。だって、自分だってそうやって市場取ったことあるでしょう。そういうもん。

嫌なら製法なども含めて特許や商標など取れば良いけど、お金と手間がかかるからそういうわけにもいかない。(でもこれをちゃんとやって取ってる工業もある)


じゃあということで、糸プラスアルファ、編みや織り、または加工など、自社工場のテクニックを注ぎ込む。この段は当然工夫した方が良い。こここそ、まず注力すべきポイントだと思う。たとえ糸がそこらへんの輸入糸でも、「あそこの工場で編んだら顔が違う」って思ってもらえたら、そしてその独特の顔がお客さんに刺さったら、それは『技術だ』と誇って良いと思う。

工業機械が特注品で、その工場にしかない場合をのぞいて、物理的に機械を改造するか、あとは見つけ出した機械の調整幅を秘密にすること、これでその工業の顔が一個できる。できるんだけど、普段の受託仕事に追われて、この辺がなかなか着手できなかったりする。


仮に、この独自の顔を作れた工業でも、一人勝ちできるかと言われたらそうでもない。

独自の糸に独自の技術で製布しても、似たものというのは結構出てくるもので、世の中に無いものはもうほとんど無い。そうなると、完全独創とタカをくくっていて、顧客対応が殿様商売になってしまっていることに自分で気づけず、お客さんが離れていって代替え素材や対応の良い会社などに流れていってしまう。

どんなに独自路線を築き上げた企画商品があっても売れなければ会社の屋台骨は支えられない。それはブランドと言うのは自由だけど、誰もそう認知しないのではないだろうか。


会社の中を見回してみると、結局は営業が個人商店化して、人によって売上が凸凹してしまう。マンパワーで再現性がないと思われがちだけど、工業にある程度共通していることは、やはり顧客対応力がザルになる時があることだと思う。個人商店で柱がしっかり立っている人は、ここがザルじゃない。その人が会社の看板をはずしても商売が成立していたら、それはもう、その人がブランド化したと言ってもいいのではないかと思う。


独自に企画で作り上げた商品が、自分の顧客さんにとって必要だと思ってもらえるかどうか、または不要だとした場合、別の代案などを提案できるか、自社の押し売りになってないかなど、我が身を振り返れば自分勝手な会社の都合を押し付けてないか。そういう姿勢でお客さんと向かい合っていたら、相手に「あの会社に任せたら安心だ」と思ってもらえるようになるのではないか。そう思ってもらえた時に、会社はブランド化したと言えるのではないのだろうか。そうなれば、モノだけに依存せずとも、商売に活路が見出せたりするもんなんじゃないかなぁと思う今日この頃。知らんけど。

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