危機感があるか。

昨日、最近ご無沙汰している工場の社長さんから電話があった。内容としては、商売の先行きが不安だと言う。まぁ、そりゃこの業界に限らず誰だってそうだろうけど、案外こんなことを相談してくる経営者はあんまりいない。


元々、僕がテキスタイルメーカーとして育ててもらった産地の経営者は、お金持ちが多い。場合によっては本業より、資産運用の方がうまくいっているケースもある。そして、不思議と本業も大きく傾かない。こんなご時世に七不思議、と言いたいところだが、単純に他産地での資本力がない小規模工場が倒産しては、同産地に仕事が流れ込んでくるという、至ってシンプルな構造で、やはり間違いなく、産業全体では仕事量はシュリンクしている。


シュリンクしているのを事実として認識しているかどうかはわからない(おそらくはしている)が、本業の業績が大きく傾かないものだから、やはりその辺のお金持ち工場の経営陣はあんまり危機感ってない。ちょっと仕事足りなそうだなってなったら、懇意にしている生地問屋さんへちょっと大きめの発注を限月長めにとって発注もらって、とりあえずの体裁を整えることは可能である。

そして、それなりの数字を出しては、それなりの決算を迎える。


長期的なヴィジョンとかしっかり持ってるところは結構長いこと準備や投資してきてたから結果がボチボチ出だしてる会社も散見される。が、やっぱり大多数は短絡的な経営をしていたように思われ、問屋も在庫渋りだしてる(そりゃそうだ)から、それなりにしんどそうなタイミングを迎えている。


しんどそうなんだけど、面子なのか、あまり「まじヤバイ」ってことを外に相談しない。いや普段言ってる「あかんわ」は挨拶みたいなもんで、「あかんなぁ」って言えてる間は、たぶんあんまり「あかん」くない。

本当にあかん時は、それどころじゃない。と言うか、たぶんそういう場面もなかったのかもしれない。そんな産地だった。


が、冒頭の通り、とある工場の社長さんが相談してきた。マジトーンで「どないしてったらええんやろ」と。ツケが回ったなとか、ざまぁみろとか、そんな気持ちは全く起こらず。むしろ、よく相談してくれたなと感心した。偉そうですみません。いや、相談を受けたからといって、何か解決策を明確に提示できるワケではないけれど、少なくとも産地に籠もってウェイトの姿勢でいるよりは10000000倍マシだと思った。


危機感をちゃんと持ち出した人って、人の意見に耳を貸せるようになる。だから、僕なんかがどうやって商売仕掛けてるかってことにさえ興味を持って聞いてくれる。

産地を守りたいとか、そんな大袈裟な大義は掲げないけれど、生き残っていきたいと本気で思ってる人を、自業自得の部分をきちんと認めた上で、プライド捨ててやり直そうと思っている人を、何ができるかわからないけど、応援したいと思ったんだな。僕は。


むしろ旧態依然とした部分が多い工業だからこそ、前向きになれる要素はいっぱいあると思うから、本気で動けたら、工業は強いと思うんだよな。

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