割合計算の落とし穴。

今日は既に少し呑んでるから、まさにうってつけなんだけど。

先日、SNS上で、商品価格のオフ率に関して、誰でもわかっているであろう内容でボケたのが、正論でツッコまれるというやり取りを傍観していて、鼻の奥がツンとしたので備忘録として残しておく。

我々繊維業の営業は、割合で表現するのが好きだ。

昨対10%増!粗利率25%!ロス率5%!など、ベースになる数字がどうこうというより、比較を割合で表現することが多い。

例えば、僕らは生地を作る時、糸を買う単位が決まってて、その最低値を割り込んだ仕入れが基本的には出来ない。が、その最低値を割込むほどの数量しか発注をもらえない場合はやむを得ず無駄な仕入れをして、原価に割り返す必要がある。
ところが、見積り依頼の際は、その割り込んだ数量分のアシを計算していなくて、定石のロス率で計算して見積りを提出しているので、実際生産に入った時の原価は、想定見積りのそれよりはるかに上回ることになる。

仮えば、こういう計算式を書いておく。
【見積り時】
糸¥1,000/kg x ロス率 5% + 編み賃 ¥500/kg = ¥1,550/kgコスト × マージン 15% ≒ ¥1,830/kg(販売見積り価格)

【実務】
(糸¥1,000/kg x 最低引き取り量 24kg) + (最低保証工賃 ¥20,000/日 × 2日) ÷ 実発注量 15kg ≒ ¥ 4,270コスト × マージン 15% ≒ ¥5,030(販売希望価格)

ここで注目したいのが、おそらく、ロット割れした際の原価上昇は理解してもらえても、その原価に対する利益率の値幅はなかなか了承してもらえないことだ。

利益率だけで計算すると、同じ15%でも、単価で考えたら、見積り時は¥280/kgだったのが、ロット割れをしたら¥760/kgになる。見積り時の金額より約¥500/kg値上がりすることになる。
こういう現象が起こると、買い手は概ね、見積り時の利益率ではなく、見積り時の利益単価は据え置きにしておくのがスジだという謎の主張をしてくる場合があるが、それは理不尽な要求である。

壮大な脱線をしたので冒頭の話に戻るが、SNS発信主は、¥10,000の服が70%オフで売られていて、さらにタイムセールで30%オフになっているから、実質タダだという、ボケである。

これは何名かマジレスして、実質は元値に対して79%オフだとの主張があり、まぁ正論なんだけど、この割合計算って、時と場合によっては、買う側に混乱を与える。
なんせ円周率を3で計算させられてた人たちだっているんだ、まともな割合計算を世の中の人全員が出来るという前提で物事を考えていること自体、もしかしたら落とし穴になりかねない。

いまあなたが、結構酔っ払ってたとして、なんか帰りしなにコンビニスイーツでも食べながら帰ろうかと考えている場合、深夜帯、賞味期限近い商品が、70%オフというシールが貼られて売られてたとする。しかし、呑み会で後輩に奢って、財布の中は小銭が少しあるくらい、ちょっと微妙だなって時に、割合計算しなければならない商品を、果たしてレジに持っていくだろうか?
きっと、きちんと値引きした後の実際に払うべき金額が明記されてた方が、購入に至る可能性は高いのではないだろうか?

それくらい割合計算で値引きを表示することは、なんかしらの誤解を招きやすい。
だから割合計算で物事を決めがちな我々は、買う側の目線にもっと立って、その表示が親切かどうか、改めて考えさせてくれる良いきっかけだったと考えた方が、かのボケが活きることになるとは思わないか?

それに、¥10,000の服が70%オフで売られていて、さらにタイムセールで30%オフってのが、元値から79%オフだったとしても、原価率が元値に対して21%だったとしたら、メーカー側の取り分は、実際タダになるんだよね。

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