バーチャルの再現性。

最近はコンピュータ内の画像でサンプルイメージを作って確認することができる、非常に便利な世の中になった。

様々な会社から、衣服や生地のシミュレーションができるソフトが開発されていて、コンピュータ上でバーチャルサンプリングが可能になっている。これによって、不要なサンプル費を浮かすことができたり、実際のサンプル生産リードタイムを省略できたりと、非常に便利な世の中になった。(2回目)


写真は和歌山の雄、某ニット機械メーカーさんが開発されているデザインシステムのカタログを写真で撮ったのだが、右側の拡大図なんかはバーチャルとは思えないような素材感の再現は驚きを隠せない。そして何よりこのシステムが優れているのは、データで作り上げた商品を互換性のある同社の機械で実際にそのままデータ移行することでドンズバ生産出来てしまうというスグレモノだ。これは、一旦このシステムの提案を受けると喉から手が出るほど欲しくなるような、僕にとっては最高のおもty、マシーンである。


そして、このシステムは機械を保有していないテーブルメーカーにも人気だ。生地でボーダーの柄を見たい時など、このシステムがあれば、ベタ塗りのボーダーではなく、編目になったボーダーでシミュレーションを組むことができる。

もっともっと細かく書きたい僕にとってはずっと遊んでいられるくらいたくさんの優秀な機能を内臓しているおもty、マシーンだが、一つ難点がある。

それは、設計者(デザインする人)が物理的にそのデザインの再現性があるかどうかを知っていないと、現物を作った時に再現性がないということ。


例えば両面編みのジャカード柄を作りたいと思った時、丸編みであれば横方向に並ぶ編目で出せる最大色数は4色で、さらにいうと、4色も同じコース(横目)で使ってしまうと、表に色を出さない時に裏に回す糸の量が多すぎて分厚くなったり、分厚すぎで編めなかったりする。

ところが、コンピュータ上ではそのような物理的に無理なデザインでも出来てしまう。

そして物理的に無理なデザインを完成させてしまった後に、工業に依頼すると「そんなことは物理的に出来ません」という現実にぶつかってしまうのである。


昨日はたまたま、別業種の、工業デザインのCADデータを作成する会社の人と食事する機会があり、その方に「CADデータを渡したあと、実際にその工業生産物はデータ通りの物に仕上がるのですか?」と質問したら、「わからない」という回答だった。

つまり、デザインをバーチャルで表現しても、それを現実で生産するには、結局のところ、物理的に矛盾があるかどうかは現場でやってから気づくこともあるということだ。


さすがにそこまで無茶な設計を依頼することは、依頼主がきちんと知識を持っていれば、あまり起こらないとは思うが、ファッションデザイナーと呼ばれる人たちの中には、リアルマニュファクチャリングに対する知識が正直あまり多いとは言えない人もいる。というか簡潔にいうと、無知が多い。


もちろん、物理を想像力で超えていくことは、ある種の天才的な表現なのかもしれないし、「それが芸術だ」とか言われたら、「そうですね」としか言えないのではあるが、作れなかったら意味なくね?

もちろん、物理的に可能性のあることなら、再現できるように努力はしたいのだけれど、無理なもんは無理な時もある。その点を工業側の努力不足と切り捨てることないよう、デザイナー陣は重々承知していただきたいのである。


そう言えば、以前某イベントで若手デザイナーと生地屋や縫製工場とのマッチングイベントに傍観者として参加した際に、デザイナーから生地屋に対して「生地提案の時、もっと仕立て栄えのわかる状態で提案してほしい」と要望していた。

自分たちのクリエイションの再現性を高めるためには、やはり経験値と物理的な製造知識は必要なのだと思う。


あと生地メーカーな、工場に依頼すんのにお前ら無知すぎるからもっと組織とか勉強せーよ。

物理的に無理な多色使いのジャカードとかシミュレーションして「は?これプリントでやるんですよね?」って聞き返したくなるようなやつを工場に投げんなよ。まだシステム的に「それは物理的にできません」とかアラートが出ないからな。本当に宝の持ち腐れ。マジ僕にほしい、そのおもty、マシーンを、もったいないから僕にくれろ。


という横暴なおねだり。

ulcloworks

ultimate/究極の clothing/衣服を works/創造する ulcloworks

0コメント

  • 1000 / 1000