繊維は数値規格化が困難な産業である。

前回、ヴァーチャルの再現性に関して触れたけど、まぁそもそも、原点は地球にあるものからしかモノを作ることは不可能なので、よく考えてみたら完全再現性というのは何においてもありえないなと思った。

例えば天然繊維のクオリティは、採れる年の環境に大きく左右される。雨だからお米が不作だったとか、そんなイメージ。採れる段階でもうブレてるんだから、それを元に色々加工していくのが、工業機械を使うとはいえ、日々違うコンディション不確実な生き物である人間がやるんだから、全く同じモノが出来上がることというのは土台無理な話なのだ。

とはいえ、日々求められるクオリティに対する目は厳しさを増し、アパレルメーカーによっては非現実的な基準を設けた検査をクリアしないと市場に出せないという矛盾もある。

これに順じないと商機を失うということで各社必死に食らいついているが、僕としては正直もうこれは諦めている。クオリティを諦めているのではない。そういう矛盾を要求してくる相手を諦めている。「他にないものを提案してください」っていうから、「オタクの基準では無理です」って言ったら二度と直接声がかからなくなったし、ヤバイ生地持ってきて「他社と差別化したいんで」っていうから「品管見直したらどうですか」って言ったら怒るし馬kha死ななきゃnおら、っゲフンゲフン


工業はもちろん日々変化する環境の中で、条件を合わせて、以前と同じように作ろうと努力している。ところが残念ながら、気候条件やその時の工員の微細な匙加減、経年によるマシントラブルなどにより、上がってくるモノは大なり小なり異なる。

そのブレに対して、目視で確認し、目標物に近づけるために経験と推測で調整していくのである。ここにプロ職人と呼ぶべき余白がある。が、やはり人のやることなので、絶対に完璧かといえばそうでもない。


属人的と言われアナログな産業だ。もうちょっとデジタル化してもいい部分は確かにあるのは認める。でも、納期やクオリティを詰めてくる時に『絶対』を確約できる保証など、事前に予防線を張れば張るほど(無理だな)と思えてしまう世界だ。しかも昨今のスケジュールは何にしてもタイトすぎる。もう少し遊びを持とうぜ。


正直言って原料からやるOEMはしんどい。それぞれの場面で上記のような『仕方ないこと』を工業から預けられる。それをどうにかこうにかまとめあげて、一枚の服にしていくのだ。その運動量はすごいんだぞ。

でも逆にいえば、原料からやるから、どのポイントでどんな不具合が起きたかわかれば、トラブルは前後包括的に解消できる可能性が高まる。


黙ってても完璧な商品仕上げてくるメーカーに頼みたいよね。わかる。でも工業も日々頑張ってるからね、もうちょっと色々とゆとりを持とうな。

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