参入障壁の低さと製造の入り口の狭さ。

僕はこのアパレル業界というやつに、何なら生まれながらにしている。なぜなら実家の母親は縫製工場をやっていて、裁断クズは幼少の僕にとって遊び道具だった。だから参入障壁とか、製造業の堅苦しさとか、世間が言うほど敏感ではなかった。と言うかわからなかった。

前職に就職して初めて、「生地を買いたい」って思ってる人に対して「売ることができない」現実にぶつかる事になる。

与信と言うやつだ。

個人の裁量で新しいお客さんに物を売ってはいけないらしい。そのお客さんはお金を払ってくれるかどうかわからないからだ。

ところが学生上がりのキラキラしたデザイナーの卵たちは、何の疑いもなく「生地を作ってください」とやってくる。まぁ社会の厳しさってやつを知らないってのも今後の人生に於いてはアレだから『与信』なるものの意味を知る上でどこかでぶつからなければいけない問題ではあるので、誰でも売ってあげられるもんじゃないんだよということを伝えなければならない。何なら、中には工業ナメてかかってくるやつらもいるので、そんな輩には工業ナメて将来うまく行くなんて思うなよこの野郎まじテメーぶっkrsゲフンゲフン、優しくお金に対するリスクの説明をしていく必要がある。

しかし、そんな製造をナメ、えー安易に「アパレルブランドで〜す」って言う人にも優しい商品のパッケージシステムが世の中にはある。その仕組みを利用してブランド(と言えるのか)を立ち上げるのはそんなに難しいことではない。まぁファッションなので、それが良いとか悪いとか、そんなことを議論するつもりもまた全然ないが、インフル芸能関係の自身が全く製造にタッチしないブランドも『生地にこだわってるんです』とか言うでしょ。製造コスト合わなくて最安を選んだというところにこだわりがあったという解釈でよろしいか。それとも間に人が挟まりすぎてよくわからん製造原価になってるところにこだわりがあるのか。

まぁいい。

とにかくそんな人たちでも、生地一個買うのに必ずどこかの生地屋から買わなければいけない。そして、別注で作るなんてことになると、簡単にそれぞれの工場系へ直接やってきては「作ってくれ、売ってくれ、支払いサイトは60日で」とか言う。そんな製造期間こっち持ちで現金化するまで半年近くかかる資金リスクを見ず知らずの人があっさり乗り越えてこようとする。これは確かに抵抗があるんだな。

そして過去にたくさん痛い目を見たから、少なくとも３年以下の会社に100万以上の枠をおろすことはまずない。

まずないのだが、とは言え、新しく業界に入って来たいと言う人たちを無視もできない。

期待の星だって、いるんだ。

だから僕は、今の会社で基本的には面談後、口座を持つことを許容している。

リスクはある。だから人は見る。

前の会社では、後輩たちが新規先に飛び込み営業をかけてはいざ商売となった時に「ごめんなさいやっぱり売れません」と詫びている様を何度も見た。僕は売ってから口座を取るスタイル(既成事実を作ってからてへぺろの反則スタイルで後から怒られるタイプ)だったから「売れません」の謝罪はしたことないし、そん時のお客さんは今でも良いお客さんだ。僕が「売れません」と言い張った相手は、売れないのではなくて、売りたくなiゲフンゲフンっ。

と、前置きが長くなったが、とにかく製造業は与信問題で入り口が狭い。

ところが今日、ちょっと銀行に用があって行ったら「製造業者もクレジットカード決済って良くないですか？」と提案を銀行の担当の方からもらった。手数料も安く、翌日には入金されるスピードはキャッシュフローがいつも苦しい製造業にとってはいい話だ。

小口のお客さんは一回の取引で数百万なんてことはあまりない。生地なら大体が数万〜数十万で、個人のクレジットカード枠でも賄える範囲だったりする。これは双方にとってとてもいい仕組みではないか。

少額の取引でもチリも積もればマウンテンなので、案外締め支払いでのキャッシュフローは圧迫されるものである。かと言って、デポジットやキャッシュオンデリバリーでは相手も負担が大きい。

クレジットカード決済なら、入金は早く、相手も締め日によるが、締め支払いのサイトに近いフローで支払いが可能だ。

なので僕はこのシステムに登録して来た。

クレカで製造ってなんか製造業なのにスマートじゃない？

新規参入業者で支払いを気にしてすぐ払ってくれるところは多い。工業は本当に現金化が早い方が助かる。昔の大手商社の手形なんて常に回すか割るかしてたんだから、即金でくれるお客さんは大歓迎なのだ。なのに、そういう優良な相手に対してはファクタリングなどの保険をかけて、業績が怪しくても名前が通っている相手なら青天井で、数千万単位で引っかかってることだってある。

小口にファクタリングかけるくらいなら、クレジット決済を導入してその分怪しい大手にファクタリングの枠を回せばいいんじゃないかと心の底から思うのであった。