安定志向では衰退してしまう話。

先週末は尾州の編工場を数軒回った。いずれも生地問屋及びメーカーと呼ばれる生地屋の下請けの下請け工場だ。アパレル業界の表に出てくることはほとんどない。

彼らの収益源は、巷の大手生地問屋などから受注している中間生地メーカーだったり、その生地メーカーの更に下請けの振り屋だったりする。
尾州地方にはそれなりの規模の中間生地メーカーが数軒あり、そんな中間生地メーカーは表向き『尾州産地から世界へ』など言っては産地を守るための経済活動を精力的に行なっているようにみえる。が、
まぁこんなもんだ。中間業の彼らとて慈善事業ではないから、利益を得るのは当然と言える。そして、苦しいとは言え、別でアルバイトをしなければ生活できない工賃仕事を断らずに受託している以上、下請けの経営者も自業自得と言わざるを得ないのは確かなのだが、やはり現場を見ると心情的にはグッとくるものがある。

そういう現実を知っていても、地方中間業の動きは、僕の知る限り、この15年間全く変わっていない。変わってるのは業界全体のパイが減っていること、それに応じて各社じわじわと資産を減らしていること。
「デザイナーさんたちと協力してファッション業界を盛り上げていきたい!」
「欧州欧米へ向けて展示会など積極的に参加して海外販路を広げていきたい!」
など、意気込みは良い。

でも結局は、デザイナーズの商売ペースに対して要求される繊細さに対応出来ず、面倒臭くなって取引を放棄したり、与信枠をおろすのが嫌で商社経由を要望しては客先から遠ざけられたりしている。
海外に向けても、結局自力で輸出業務が出来なかったり、そもそも言語コミュニケーションが取れなかったり、取る気がなかったり。言う割には、何の準備もしてないし、展示会など出てるかもしれないけど、結果が伴わないと見限るのも早く、最終的には何もしていないのと同じ状態で落ち着いてしまってる。
「やったけどダメだった」という思い出と展示会費用というマイナスだけ残して。

準備をしてないんだから、行動の結果なんてそれ以上になるわけがない。なんでもそうだ、練習以上の結果が本番で出ることなど、奇跡が起こらない限りはありえない。

そして、「やったけどダメだった」思い出は、反省と検証もされることもなく、累々と屍を重ねては、純資産を圧迫し、運転資金という名目で赤字補填の借入を起こし、遂には会社をたたむ事も出来ないくらい財務内容は悪化していくのだ。

そんな状況で誰の何を救うというのだ。
下請けの下請けがアルバイトして生活費を稼がなければならないほど苦しい工賃で仕事を受けて、カスみたいなマージン率で売上を重ねたところで、鉋のように薄く薄く命を削りながらそこにただあるだけの存在になってしまってはいないか。




という、ポエム。

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