トラブルの元はどこにあるのか?
中間業で製造をしていると、トラブルと言うのは大なり小なり日々起こる。
生地だけでも、やれ物性が悪いだの、やれ納期遅れだ、やれ飛び込みだ、やれ汚れだ、やれ染めムラだ横段だ針筋だの色々あるのに、服までやってたら生地でのトラブルなんてマジ子供みたいな数のトラブルが起こる。まぁその起点はほとんどが生地なんだけど。
切って縫ったら縫製工場の責任とか反物に書いてあるから、裁断する人もたまったもんじゃない。
それぞれのトラブルにはちゃんと原因がはっきりしてるはずなんだけど、繊維製造業は物を加工して変化させていくので、発見のタイミングでトラブルの要因所在が曖昧になることが時々ある。いや、かなりある。
そして国内の水平分業体制では、発覚したトラブルに対して、それぞれの工場が無実を主張してくる。
「ウチではそんなこと絶対に起こらへん!!」「ウチはそんな変なもん絶対に作らへん!!」「生地や、生地があかんねん!!」「染めではそんなトラブルは絶対に起こりません!!」「編んでてそんなんあったら絶対気づくわ!ウチちゃうわ!!糸や!!」「糸では絶対にそんなことありえない!!」
そして中間業者はやり場のないクレームを抱え、利益を削り涙を飲むのだ。経験ある方は多いのではないか。
と言うか、「絶対に自分の所では起こらない」と断言できる状況など、ない。
そもそも、指示を出す方の言葉が実際に作業する人と通じ合っていない可能性もある。生地支給の場合には、生地納期が遅れても縫製で圧縮かけてきて、遅れたりトラブルが起きたりしたら縫製のせいにしてくるところもある。そう、依頼者が原因ではないとも言い切れない場合もある。いや、ある。
そして誰しも我が身は可愛いのでマイナスは受けたくない。「もしかしたらウチかもなぁ・・」と思っても頑として拒絶体制に入る。
そう言う意味で、トラブルの元は人間とも言える。
工業は特に、白黒ハッキリと金額でクレームつけてくる相手先に対して防御力高めだ。どちらが表面上正しいか間違っているかより、金額的クレームを心情的に受け付けないので、仮にクレームとして金額を飲んだ後は、その工場はその取引先のことを遠ざける傾向にある。(クセの悪い相手と認定する)
ドライな関係性だと思うのだろう。そして「製造業者は皆ブラザーなのにどうしてそんな仕打ちを受けなければならないのか?」と、相手に対して不信感を抱く。ブラザーじゃない。商売だのに。
でも、まぁ気持ちはわかる。その心理状態を責めても仕方がない。そういうレベルでしか自分を守れないのである。
しかし、僕くらいテキスタイルジャンキーになると、僕が関わる生地関係の工場の人は諦めてくれる。なぜなら僕は生地レベルであれば、原因がほぼ確定できて裏が取ることができる。だから該当工場の人に話をすると、大体は観念する。でも表立ってお金で解決しようとすると、営業担当の立場が危ういのも僕は知っている。
だから、金額で解決する場合も、彼らが困らない処理方法をこちらが考える。そうして彼らの立場は守られる。そうしないと守れない。ただし僕は瞬間的に損をする。それは金額的な問題で、大した問題じゃない。(楽ではないが)
こういうスタンスで工場を甘やkas..守っていると、トラブルが起こってしまった時、もしくはトラブルが起こりそうな時は自発的に彼らの方から申告してくれるようになる。これは非常に有益である。先手が打てるから、大きなマイナスを生む事はない。
そしてこういうスタンスで工場をあまy..守っていると、納期なども優先してくれるし、単価の融通も効くようになる。これも非常に有益である。お互いの利害関係が一致して生産が上手く回る。双方に利益が生まれるようになる。素晴らしい。
どんなにシステム化されても、作業するのは人だし、その現場に仕事を流すのも人だ。
だからどんなに一生懸命やっても、ほんの少しの見落としで大きなトラブルになり、巨額のクレームになって返ってくることがある。見落としはある。人間だもの。
知り合いの工場もその昔、取引先から支給された生地を縫い上げて、納品後に生地の引き裂き強度に問題が発覚し、店頭で縫い目から伝線する事故が発生、本来なら生地要因だが、縫製した工場に責任があるとして、クレームを全て被った。納品工賃の6倍の金額だ。工賃で生きている人たちにとっては死活問題である。
これは流石に酷な例だが、このような後だしジャンケンは結構ある。
やはりこういうことを経験すると、物事に対して消極的になってしまうのはわかる。だからこそ現場はもっと自衛できるように強くなっていかなければいけない。ただ流れてきた作業をこなして工賃をもらえると思わないほうがいい。賢くなっていかないといけない。
一生懸命やった作業だけでは自分たちの存在を守れないのは理不尽だと感じるかもしれないが、道徳でお金が稼げるわけじゃない。そこは商売、相手にも守るべき正義があるのだ。
クセの悪い相手がいるのは承知している。そういう相手を引き寄せないためにも、強くなろう。技術だけじゃなく、商売にも。
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