プロ素人。

久々に業界燃やしがあったので少し興奮してしまった週末。聡明な繊維戦士の諸兄もおそらく少しお怒りのことと思われ、改めて一般市場と業界内の谷を感じたのではないだろうか。


件の買い替えを促すために粗悪品云々に関しては、はからずもそうなってしまったものも含めて、出し手に悪意はない前提で、世の中には買える値段を設定するためにそれなりに引き算の組み立てもあるということは、何も繊維業界に限った話ではないだろうから割愛する。


それよりも危惧するのは、この手の話で盛り上がるとどうしても目立つ『プロ素人』の言い切り発信である。

SNS侍たちはその切れ味抜群の言い切り系で多くのオーディエンスを味方につけ、弱いものを助けるが如く燻りに油を注ぎ大きな炎にして一気に悪者を作り上げる。


日々の生活にお役立ち情報として、彼らとて悪意なく、いやむしろ善意で行動を起こすのでなかなか厄介だが、こと繊維製品に関して、これはおそらくどの業界も同じかと思うが、『絶対』はない。


例えばこの時期のお悩みとして静電気がある。これは着衣内での繊維の組み合わせにて摩擦帯電列が遠いほど静電気が帯電しやすく、逃げ場を見つけた静電気は瞬間的にバチっと放電するから、その解決策を模索している人は多いことと思う。痛いもんね。

暖冬とはいえ冬は寒いので、例の国民服であるユニク何ちゃらのヒートテ何ちゃらをインナーに着用する方は多いだろう。あれ系はアクリルとレーヨン、そこにナイロンとポリウレタンで生地ができてるものが多い。その上にアクリルウール混紡系のニットを着てりゃ見事な発電機の出来上がりだ。

これらを避ける組み合わせの提案はよくある。摩擦帯電列に関しては各自ggr


ただし、衣服以外でも日常生活で摩擦を起こす要因はいくらでもある。オフィスの椅子、カバン、パッと思いつくだけでもこれだけある中、これ着ときゃ大丈夫なんて言い切りはできない。

できれば自家熱を上げるために筋トレして基礎代謝を上げて、天然繊維系で外気との空気層を多く作れば、静電気は結構軽減される上に寒さをそれほど感じないで済む場合が多い。これが難しいからトレードオフで科学が存在する。そこには副作用的なデメリットもあるものだ。


ついで毛玉。これは例の件でも話題になったが、正直、生地感を見てわからないものだろうか?というのが業界人の感想だと思う。

ふわっと軽く毛羽っぽい布になってるやつ全般、毛玉できやすい。

毛玉とは繊維が摩擦によって塊になる現象なので、生地に織り込まれる、または糸になる際に撚り込まれる度合いが緩いほど毛玉になりやすく、ましてこの時期に多く販売されている起毛系素材なんかは、そもそも繊維毛羽を針でかき出してふんわりさせてるから毛玉になりやすい。

そこへ化学繊維などは繊維質が強いので毛玉になったものが自然脱落しにくいため衣服に残りやすい。さらに周囲のゴミも巻き込んだ毛玉は商品外観を圧倒的に悪くするのでそうなった時の失望感はとてつもない。

これらを避けるために適宜着用ごとにブラッシングして連続着用を避けるなどなどのケア方法が実は品質表示に小さく書いてあったりする。そう、書いてある。

ほとんどが、ちゃんと、書いて、あるのだ。

だからちゃんと読めよって無責任なことは言いたくないので、できれば購入前に店員さんもその点が説明できると良いよなって思いながら、自分の家族を見ると品質表示にきちんと書いてあって僕が説明したとしても気にせずに着用し見事に毛玉になっていたりするので、繊維ポリス改め、『準』繊維ポリスとしては、「これが一般認識か・・・」と落胆する日々ではある。

毛玉に関しては、どの繊維だからできないと言うことはあまりなく、糸や生地になる工程と着用者の使用方法が大きく関わるので、繊維一個を槍玉に上げて解決することはほとんどない。


これらの知識に関しては一般的にはたくさんの衣服を着用しトライアンドエラーを繰り返して積み上げられていくものなので、知らないことは悪いことじゃない。ただ、このブログでも過去に何度も投稿しているように、繊維は数値化しにくい産業であるからして、絶対解はない。というか、繊維種及び紡績方法から撚糸、編織、染色整理加工、多岐にわたる選択肢をそれぞれが経て最終製品になった時のトラブルシュートは、それこそ、それぞれにあるので、一般的に繊維一つ取り上げて「これはこうだ!」と、まとめられるものではない。


なので、これらの問題をバチっと解決言い切り系『プロ素人』インフルエンザの言うことをまに受けて一方的にアクリルを悪者にしてルミネ系の不買運動を促すってのは非常に程度の低い行動と言わざるを得ない。大体、館は関係ないから。


まして、これがおそらく業界人が一番憤ったところだと思うが、値段が高いと言われているその価格帯に収めるために、どれだけの人たちが関わって努力しているか、時に誰かが血を流している可能性だってある。

普段自分の仕事で出来上がった成果物に対して、世に出た後に小さなバグ(と言うよりはそういう仕様)の揚げ足取りされたら誰だっていい気持ちはしないだろ。それで潰れる人生だってあんだぞ。つまらんことに精だすよりもっと他にやることあんじゃね?コート2-3万って結構安いぞ?


と、一通り言いたいこと言った上で、物事を楽しむにも『学』が必要だというのは、何事においてもそうであるからして、人類が発明した文化文明でもある。

世の中の困りごとを解決するのがビジネスであるならば、これらの燃え上がったことも真摯に受け止めつつ改善できるところを探しながら、物理的にどうしようもねぇところまできてるんだよねってところを、改めて啓蒙していく必要があるなと感じた師走の中頃であった。

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