クラフトマンシップな夜。

昨夜は以前からお付き合いのあるブランドのデザイナーさんが事務所を引っ越したということで、仕事の打ち合わせも兼ねたお祝いで日本酒を持参した。

僕の地元佐渡島で高校時代の同級生が継いでいる酒造のつくっている銘柄で「拓(ひらく)」という純米酒だ。

「新しい道を切り拓く」と願掛けしてこのお酒を祝いの際にはよく贈る。おそらく繊維業界で一番この酒を買っているのは僕だ。

この酒造は原料を全て佐渡産に統一し、水、米にこだわり抜いて良い酒のためだけに心血を注ぎ「質実な佐渡の地酒をつくる」という蔵人たちだ。


そしてデザイナー事務所に到着後に打ち合わせをほとんどせずに開栓(開戦)し、2人でまだ明るいうちから日本酒を煽りテキスタイル談義に花を咲かせた。


彼もまた、原料から生地に至るまでをこだわり抜く「変体質」なデザイナーである。

これは彼に依頼されて作った裏がシルク100%で起毛をかけた14ゲージで編める限界の糸の太さを表と中の糸に使用したスウェット素材である。機械に掛かる限界の糸の太さなので自然と生地表面がうねる。生地の重さが1mで1kgを超えるヘビーシルクフリースと言ったところだろうか。

「山本さん、¥7,000/mくらいまで生地に掛けられるから、思いつく最強のやつ作って!」という雑だが信頼を預けてくれている気持ちの良い依頼だった。

僕にとってはカシミア100%の吊天竺を作った以来の高額商品だった。


彼は毛織物やデニムに対しても尋常ではないほどのこだわりをみせる。

写真ではわかりにくいかもしれないが、ベージュの縦糸にグリーンの緯糸を入れ玉虫色に見える布帛を糸から指定して織工場へ製造指示している。

なんか色々教えてくれたけど、情報量多すぎてまとめられないので割愛するが、とにかく「そんなん誰が気づくの?」というところまでこだわってる人だ。

1947年のLevi'sを彷彿させるムラ糸使いのデニムはその黒さを表現する為に緯糸に茶綿をさしていて、旧式シャトルで織り上げセルビッチ耳にはピンク色の変色しないように特殊な染め方をした縦糸を入れてオリジナルで織ってもらっているんだとか。


やばいなぁ。なに言ってるかわかんねぇけどすげぇなぁ。っていちいち感動しながらそこら辺にある生地サンプルや、ブランドの商品を見ながら日本酒を飲む飲む。

本人曰くカットソーに関してはもうまとめきれなくなってるからイメージだけ伝えてあとは全部僕に預けてくれているらしい。

だから僕も、彼に迷いがあれば「別にカットソーはこのシーズン無くてもいいんじゃない?」と言うこともある。

そこまでこだわりが強い人がつくるブランドや服に迷いのあるアイテムなんて似合わない。


こういうデザイナーさんがいると工業としても付き合うのは本当に楽しい。

技術的なことを言えばつくる生地のイメージが湧くからたたき台が無くてもサンプルチャレンジしてみる。

だから「こんなの今までになかったよね!めっちゃいいよね!」っていう生地が作れちゃったりする。


そういうことをブランド立ち上げからずっとやってたらファンも着実に付いてきているらしい。

もちろん商業的にも戦略無くしてここまでできた訳ではない。

やるべきことをやるべきところでやっている、そんな感じだ。


服、高いけどね。

そういう彼の姿勢に魅せられた僕もまたファンの1人になってたわ。


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