丸編みの組織図。

はい、ということで何回目になったか忘れたけれども、産地の学校にて丸編みカットソーのお話をさせていただきました。

僕なんか丸編み界で言えばまだまだひよっこだけど、ありがたいことに長いことこの世界に居続けることができるのも、たくさんの編み場の皆様や多くのお客様に支えられてのことで、そんな経験を少しでも誰かのお役に立てることができればと思い、拙い内容かもしれませんがお伝えさせてもらっております。


ニットって一言でまとめられるほど、編みの世界は簡単ではなく、編みの中でもまたそれぞれに専門領域があって、なかなか奥が深いもの。

どっかの誰かが「簡単」と書いてちょっと燃えるくらいには、この世界にたくさんのエキスパートがおりますもんで、領域を超える際の発言には要注意といったところ。


そんな中、某SNS(X)で丸編み生地の組織図を見かけた。それが未完成で成立しないにも関わらず組織名称とともに記されているのを、その取り巻き含め誰も気にしていないのは少し残念な現象だったので、丸編み生地の勉強をしている方々にとってもあまりよろしくないと思ったわけで。

まぁほっときゃいいんだけどね。もし勉強中の誰かが、その間違った組織図を見て「あぁ、その組織はこうやって組織図かくんだなぁ」なんて信じられてしまっては、現場及び依頼者共々、その指示にて上がってくるであろう生地に対して誰の責任なの?って問題に発展する可能性すらあるので少しだけ先週末のおさらいも兼ねて書き残しておく。


丸編み生地の代表的な組織としては、Tシャツによく使われる天竺、その襟によく使われるフライス、タンクトップなんかになってるテレコがあり、これらは組織図が一段で完成している。

逆に言えば、それ以外で組織図が一段で完成しているものはない。

脱線すると、どこかの問屋様生地で『裏毛やと思っ天竺』ってあるけど、天竺はオールニットなのでウェルトを挟んでいる時点で一段完成できず、一応『天竺』を『平編み』と定義するならば要件が異なり、生地名としては面白いけど組織名としては正確ではないことになる。

組織図を記す上で『ニット(あむ)』『タック(ひっかける)』『ウェルト(あまない)』を記号で表し、シングルであれば片面に準じた針を意味する縦の棒、ダブルであれば縦の棒が上下に、さらにそこへ針の出会いの具合によって高低があるもので構成されていく。

一見平面的な編み組織でも、一段の組織図で完成するものは先述の通り少なく、ほとんどが何段かの組織図で構成される。何段かあって同じ繰り返しに見える組織図だとしても、段数を繰り返すことに記号としてきちんと意味があるので無視をするわけにはいかない。特に平面的なのに複雑なのは下記リンクの内容にもあるのでそちらを参照されたし。


ちなみに段ってのは簡単に説明すると丸編み機の外周に取り付けられた数十個ある給糸口(きゅうしこう)一個あたりに割り当てられる針の動き。ね、何いってるかわからんよね。

そう、丸編みの組織図なんてのはほんとにわかってないと書けない。その組織完成段数を理解していなければ糸をどこにどう使ってどういう出方になるかわからないのだから、わかった風でやってしまった日にはとんでもないトラブルの火種になる。

SNSで騒がれるくらいなら大したことないけど、それが実務の現場で正式な指示として使用されたら、そこは実弾(お金)が飛び交ってる世界なのでダメージはでかい。


授業でもお伝えしたんだけど、本粋の専門領域に入っていくつもりがないなら、無理に覚えなくていいと思う。表現したいことがどういうものかをきちんと現場の方々とコミュニケーションとって作れる環境を持つ方が大事で、隅から隅までレシピを完璧に書こうとするのは、よっぽど勉強してその世界に明るくならなければ難しく時間も経験も必要になる。


まぁ僕が見かけた未完成な組織図は現場に持っていっても生産できないものになるので、実損害が出るとしたら依頼者の無知が露呈する程度なのでそれほど大事ではないにしろ、表層の知識を過信して押し通そうとするようなキャラだったら拗らせてしまうよねっていう、後々現場とも空気悪くなるタイプの人も多いので(業歴があるとなおさら)、素直さって大事だよねって改めて思ったって話。

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