問題解決能力。
繊維製造は常にトラブルがあると思っておいた方が無難だ。
過去に何度も書いているが、数値管理で理論を実物にしている化学の世界、ポリエステル繊維メーカーでさえ『繊維は数値規格化が困難な産業である』と言い切っている。これはおそらく、今のところ、生き物には寿命があると同じくらい間違いない事実だと思われる。
僕がこの業界に入隊した当初、諸先輩方から教えをもらうとき常に「鉄や紙じゃないから」と言われた。それはある程度決まった型が多いという意味だが、鉄や紙の業界だっておそらく常に一定というわけではないだろうからその例えはその業界の方々に失礼だなと思いつつも、莫大小という言葉が当てられているくらいには、もうブレるのが前提の世界であることを経験と共に思い知らされる。
じゃ全部行き当たりばったりでイケんじゃね?みたいなノリでもない。
トラブルにはある程度の解決策はある。全ては原因特定にかかっている。そしてそれは、その都度その都度で条件が変わるので、やはり体系的にマニュアル化するのは難しい。
難しいが、この業界で信頼関係を築き上げていく上で、問題解決はものすごく大事なイベントだ。
僕が敬愛するハーヴィースペクター氏は「銃を突きつけられた時の対処法は147通りある」と言った。146だったかもしれない。それぞれの詳細な内容は、語られていない。
しかし彼はいつだって問題を解決し続けた。まぁドラマだからそうじゃなきゃダメなんだけど。
トラブル発生時の問題解決は、原因特定できれば経験値として大きな武器になり、自信がつく。そして関係各位との信頼関係も深まり、より一層商い拡大につながる可能性が大いにある。
なにより、原因を探すクセがつくと、依頼を受ける時のコミュニケーションも、依頼をかける時の注意点もより具体的になり、トラブルを未然に防ぐ確率が上がり、もしトラブルに見舞われてもある程度早期発見できたり、解決のスピードも圧倒的に飛躍する。
つまり学ぶべきは、決まりきった解答ではなく、ものごとの捉え方、考え方。
絶対的な解答が常ではない世界で、同一条件下でしか機能しない答えだけを知ったところでほとんど役には立たない。
そう言えば大昔後輩に考え方を教えてたら「そういうのいいんで、答えだけ教えてください」って言われたの思い出した。全部に絶対的な解答があるとするなら、なぜこんなにも世の中はトラブルに溢れてるのか。こうして僕は絶対解を探しに繊維の森へ歩みを進めていくのであった。なかった。
— ヤマモト ハルクニ (@HARUKUNI_Y) November 20, 2023
大昔、前職時代は僕の入隊が早かったのもあって、年上の後輩は結構いた。このポストで「答えだけ」求めてきたのは年上の方だった。つまり時代的教育制度の問題で云々みたいな論が通用しない、一定数考えることを放棄して答えだけ求めてことに当ろうとする人は存在する。
考え方は人それぞれなので、そういう人の生き方や考えを含めたその人自体を否定するつもりはまったくない。
みんな違ってみんないい。それはそれで、みんないい。
ただ、こわいなって思うのは、解の導き方を知らずに模範解答に依存してしまうことである。特にこの業界の場合は冒頭でも書いた通り「数値規格化が困難な産業」である以上、常にイレギュラーだと思っておく方が精神衛生上良い。変数であることが定数的な。
その前提に立つと、やはり答えだけ教えろってのは無理があって。その答えにたどり着くためにトラブルの起点となる箇所、それも一箇所である保証はないものと対峙していくには、それぞれの考え方を学ぶ方が問題解決の近道だと、僕は考えている。
だからXとかで専門領域名乗ってる人が、条件不一致の物同士を対比して優劣をつけ断定表現しているポストに「勉強になります!」ってなってしまってるのは、モヤる。モヤっとボールをバケツいっぱい投げ込んでも物足りない。物足りないけど、そういう世界になっている。
実体験を伴わない受け売りの表層知識で解った気になって教科書通りに事が運ばずに結果的に大惨事にならないことを祈る。そしてもしそうなった時、発信者を恨むのも、少し違うと思う。
イチロー氏の発言ではないが、厳しい時代になったもんだ。強く生きようぜ。
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