生地検査試験場に行ってきた。

丸編み生地製造の勉強シリーズにしても良かったんだけど、繊維業界ではない人にも繊維業界ではこういう事をしているというのを知ってもらえればと。

市販されている工業製品のほとんどは、JIS規格という規定の元、厳しい試験をクリアしたものだけが市場流通している。

衣料品もまた、一定の基準を設けて試験をクリアしたものが百貨店なり、専門店で売られている。
が、ファッションとは素材の繊細さや、危うさも含めて表現とされる物もあるので、全てJIS規格に当てはめるとつまらない服しか出来上がらない。

では、JIS規格を基準にした生地試験とはどのような事をしているのだろうか。
今回はその試験場に行ってきた。


衣料品を購入する際に一般消費者がおそらく一番気にするであろう部分「この服は洗えるのか?」
要約すると、生地検査試験場は洗えるかどうか?の基準を測定する場所といえる。

家庭用洗濯機で洗えるのか、ドライクリーニングはできるのか、全く洗ってはいけないものなのか。着用して不具合は出ないのか。それを調べる試験場だ。

洗えるかどうか?で僕が取り扱っているカットソー商品で一番起こり得る問題として縮み(もしくは伸び)の問題がある。
これは一般家庭にある電気洗濯機を実際に使用して試験される。
生地を二重にして四方を縫い合わせた物に、20cm四方の四角を洗っても消えないペンで書き、洗濯した後にその四角の大きさの変化率を表示する。
2cm縮めば-10%と表記される。
カットソー商品の許容は会社基準によるが、一般的にはだいたいプラスマイナス5%以内とされている。
百貨店基準だと3%くらいだった気がする。
つまり購入経路によっては、着丈が購入時に70cmあっても、洗濯によって67cmになっても、「こういうもん」として片付けられるということ。
もちろん、ファッション的に攻めた生地の場合、この基準をクリアできる生地はほとんどない。吹けば飛ぶような薄い編地の場合20%とか平気で縮む。これが良いか悪いかは置いておいて、そういう商品にはデメリット表示がされる。「この商品は非常にデリケートな素材を使用しており…」的なやつ。

そして縮み(もしくは伸び)の次に、色落ちがするものなのか?という項目がある。
これは染色堅牢度といって、洗濯した際に他の物に色が移るか?とか、日に干して色が変わるか?などを調べる試験である。

この機械に洗濯用液と試験対処の生地、そこへ白い綿の基布と白いナイロンの基布を一緒に入れて白い基布の方へどれくらい色が移ったか測定する。
その際に洗濯液に染み出した色の程度も測定する。

ドライクリーニングに出した際に、石油系の溶剤で汚れを落とした場合に問題が出ないかを調べる検査もある。
8種類の繊維を織り込んである特殊な基布と一緒にドライクリーニング溶剤に浸して染料の溶け出しを測る。


そして対光試験といって、光に当てることで色がどれくらい変色するか?という試験をする。

この機械に入れて規定時間強力な光を照射して変退色を測定する。
オフや生成りなど、天然色をベースにしている色は光によって白化するのが当たり前なので、白系の色は2級でも合格がつけられる。しかし昨今の各会社基準によってはこれを認めていないケースもある。

そして摩擦試験といって、対象の生地が他の生地と擦りあった際に色が移るかどうかという試験もする。
このハンマーみたいな部分に白い布、乾いたものと濡れたものを貼り付けて、試験対象の生地に擦り付けてどれくらい色が移るか調べるのである。乾いた方を乾摩擦、濡れた方を湿摩擦とよぶ。


次に着用して問題があるかどうか調べる試験がある。
毛玉になるか?ヒジヒザなどの部分で生地が破れてしまわないか?汗によって色が出てしまわないか?など。

毛玉はピリング試験と言って、ゴム管に対象の生地を巻きつけて、内側がコルク張りになっている木箱に入れてカットソーなら5時間ぐるぐる回し続ける。


ヒジヒザで破れないかどうかを調べる検査は破裂といって対象の生地をこの機械にセットして気圧を掛け、生地が破れた時の気圧を測定する。↓
汗も衣類にとっては大敵だ。
酸性とアルカリ性の汗に模した液体に試験布を付けて、その両側に白い布を重ねて圧迫し4時間ほど人肌の温度で放置する。
それを綺麗なおねいさんたちが一枚一枚取り出して並べていき、色移りの度合いを調べていく。

と、ここら辺までが大体一般的に一通り試験する項目になる。
このほかにも色々特殊な試験をして、その生地の特性を評価する項目がある。

最近は、といってもここ10年では、消費者保護の為、特に百貨店の試験に対する基準は非常に厳しくなっている。

ウールのローゲージニットなのに毛玉が出来てはいけないとか、生成りの綿商品なのに白化してはいけないなど、物理的に無理な基準を強いている。

これらの基準を満たさないテキスタイルは店に並べることができないため、企画倒れになることも多い。
また、基準が厳しすぎるが故にブランド側も使いたくても使えない生地がたくさん存在する。

これは試験場のセンター長の所見だが、試験場は一般使用上ではあまり起こらないような厳しい検査をしているので、検査機関が設定している基準値をクリアした物ならばほとんど消費者クレームにならないはずだとのこと。

基準に満たない物に関してはケアネームなどを使用し、販売の際に一言加えてもらうなどで対応することで理解して購入してもらうのがベストだ。

消費者もブランドのファッション性を理解して、商品につけられた取り扱い表示を守ることで長く洋服と付き合うことができるので、購入時に販売員さんに取り扱いのレクチャーを受けるのをお勧めする。

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