服と金。

昨日は株式会社糸偏さんが主催されている産地の学校ラボというコースでカットソーの講師として講義をさせていただいた。

決められた時間内に伝えたいことを凝縮するということは非常に難しいことだ。

軽いスライドを元に補足(脱線)を口頭でしていった。

一方的になってしまわないように気をつけていたつもりだが多分一方的になってしまっていただろうな。すみませんでした。



既に業界人の方や、これから業界へ入ってこられようとしている別業界の方、中には学生の方もいらっしゃって、色々質問をいただいた。

中間業者が淘汰される風潮の中で、アルクロワークスは中間業者として生き残っていくためにどのように考えているか?など、僕が学生だったら絶対そんなしっかりとした質問なんてできないだろうなってことまで質問されたりして、その意識の高さにはいい意味で驚かされた。


おそらくは製造過程を詳しく憶えていくことでデザイナーさん達が出来ることが増えると生産も兼ねることができて中間業者は必要じゃなくなるんじゃないか?というのが質問の真意だったのではないかと。


僕も、デザイナーさんやアパレルメーカーさんが工場と直接仕事が出来るようになることの方が望ましい未来だと思う。

正直そうなったら僕らは必要じゃなくなるから困るといえば困るのだが、健全なコストに近づくことが購入者にとってのベネフィットならそのほうが良いに決まってる。

でもたぶん、おそらくは中間業者はなくならない。ことカットソーメーカーに関しては。

理由はいくつかある。

①アパレルメーカーのデザイナーは膨大なSKUを抱えるので丸投げしないと企画が追いつかないアイテムもある。

②アパレルが工場直の依頼に慣れていないためストレスを嫌って丸投げしがち。

③工場もアパレルからの依頼がOEMメーカーよりラフな事が多いので対応しきれない。

④糸、生地、加工、縫製とそれぞれ都度請求がくるとキャッシュフローを圧迫するしコスト管理も煩雑になるから、完成品が出来上がった時の請求だけの方がお金の管理が楽。


①〜③は時間と手間をかけたらなんとかなりそうな気もするが、実は④同様に最終的にはお金や時間などの資源を削られる。

効率的に商品展開していく為にある程度丸投げすることで回転率を上げ収益を積み上げていくのに中間業者を頼っている。

洋裁学校で習わない商品が出来上がるまでのお金の流れる仕組みを理解したら、ある程度理解してもらえると思ってその辺をお話させてもらった。


別注の生地を作るところから始まる場合、概ね6ヶ月近くは仕入れ金が眠ることになる。

糸買って、編み賃払って、染め賃払って、生地がようやく裁断されて。

裁断賃払って、縫製工賃払って、洗い加工賃払って、仕上げ工賃を払う。

仕上げの工程はほとんど出荷時期なので、ここでようやく売り上げが立つ。

この間にそれぞれ物を動かしている運賃がかかってくる。

売り上げがたっても、入金は一ヶ月後とか。

その間、その品番に関して1円もこちらは収入がない状態で物を作っていく。

僕らはワンストップ製造することで仕入れに関するファイナンス業も行なっていると言って良い。

しかも、この商売が成立する前に顧客さんの店舗の調査から生地の選定、プレゼン、事前準備に十分時間をかけ打ち合わせを重ねてサンプルを作成する。


これが製品コストを底上げさせている悪の根源「中間業者」の仕事だ。

本当に不要だろうか。

今のところ、顧客さんに頼りにしていただきながらなんとか商売させてもらっている弊社。

デザイナーさんが1人でリサーチ、企画、生産、支払い、伝票作成、全部できたとして、満足のいくコレクションが組めるだろうか。

一考してもらえる要素がお話できていたなら幸いである。

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