丸編み生地製造の勉強-染色加工編-

本当なら糸を作るところから順を追ってやりたかったんだけど、今回染工場さんにお邪魔する機会があったので染色工程の回にしようと思う。


染色加工の流れは大まかに

ビーカー試験→生地準備→染色→脱水→開反→セット→検反→梱包→出荷

それでは各項目を見ていきたい。


・ビーカー

別注する生地を決めたら生機(染める前の生地)を作る。
その後、染工場に指定色で染めてもらうことになる。
いきなり生地を依頼色に染めることはできないので、任意の色見本を染工場に渡してビーカーという作業に入る。
ビーカーは依頼色をCCMという機械でコンピュータに取り込み、その色の構成を分析する。
CCM↓
色見本が小さ過ぎたり、印刷物(紙)とかだと正確に構成色を読み取る事が出来ない為、染めた時に全く違う色になってしまう。
また演色性と言って光の反射加減や光源によって同じ色なのに違って見えたりするので、一番望ましいのは染めたい生地と同じ素材(綿なら綿、アクリルならアクリルなど)で色見本を提出するとビーカーの再現性が高い。
CCMでコンピュータに取り込んだあと色の解析が行われ、構成色の染料が調合される。↓
そしてビーカーと言われる小型の染色ポットに生地を入れて超小規模の染色試験が行われる。↓
たまに、「大きく見たいのでビーカー大きめに取ってください!」という依頼を受けるが、ビーカーはこのように染色ポットのサイズが全て同じなので、生地見本は全て単一の重さでビーカー試験に入る。
ビーカーはポットが全て同じ大きさなので浴比といって染料、水、生地のバランスが決まっている。ビーカーの浴比は生地が10gと決まっていて生地自体が厚手ならビーカー見本生地は小さくなるし、薄手なら少し大きくなる。


・生地準備→染色

ビーカー試験で思い通りの色が出たら、その染料データを量産用の分量で準備していよいよ生地染色に移る。
まずは染める数量毎に生機を準備する。↓
染め釜に生地を入れて前処理、まずは生機についてる機械油を落としたり、薄い色を染める為に下晒をする。
その後染料を入れて釜の温度を上げながら染めていく。↓
染め釜の中↓
染め釜↓
染料入れるやつ↓
染め上がるまでの処理は素材によるが、大まかには下晒→染色→フィックス(色落ちしないように固着させる処理)→柔軟材投入までが一般的。


・脱水→開反→セット

釜から上がってきた生地は濡れているので遠心脱水。↓

丸編みの生地は名前の通り、筒状の生地なので開く作業として開反という工程がある。

脱水したらやや濡れのまま開反。↓

開いた生地は布目を整えたり、幅出しをしたりする仕上げのセットという工程に入る。

仕上げのセット。↓

セット機に入る前に布目を整えるところ↓
布目の歪みを見るセンサー↓
セット機入口↓
セット機出口↓
このセット機の中はガスバーナーみたいなのが40m〜50m続いていて熱で生地を安定させる。
そして検反、巻取り、梱包、出荷。写真撮り忘れすみません。
特殊な加工をしない場合のベーシックな染色の工程はざっとこんな感じ。
今回お邪魔させてもらった土田産業さんはこの一連の工程を24時間3交代制でやっている。
最終仕上げの一日の水揚げ量は最大7万メートルまで可能だ。
それなりに、というか、かなりデカイ工場である。
しかし小ロットにも柔軟に対応してくれるし、なにより現場の意識が高い。
なので僕はいつも依頼の時はエンドユーザー(ブランドさん)を伝えている。
作業員さんがファッションの一端を担っているという意識づけにもなるしモチベーションも上がるからという営業担当の方からの要望だった。
そして工員さん達はみなさん明るく、楽しそうに仕事をされていた。

産業廃棄物に対する取り組みも素晴らしいのでリンクの土田産業さんのホームページも是非見てもらいたい。

https://www.tsuchida-net.co.jp/


このような工場さんは未来に残していく必要があると思うし、僕がこんな心配しなくても未来に生き残っていくために自発的に色々チャレンジしていくんだと思う。


そういう前向きな姿勢を行き詰まってる工場さんたちに教えてあげたいと思った一日だった。


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