誰得。

何度かこのブログでも触れている内容ではあるが、記事累積もそこそこになってきて自分でも拾えないので、改めて。


僕個人としては、繊維の世界における各社独自開発の技術や素材は、提案を受ける度に身体中の穴からなんか汁が出るくらい興奮するし、素晴らしいと思う。

それこそ、差別化しないと埋もれてしまう群雄割拠の戦場である。誰でもできることなら値段が安い方に仕事が流れてしまうのは世の常。それ自体、誰を責めるものでもない。


ところが、世にない開発は、案外自分だけがそう思っていて、実はもう既にあって、そして知られていないということはつまり、需要がなかったから存在がなくなっている場合がある。

なので、ごく少数のソレが好きな人たちに向けてしっかり訴求した上で、それくらいの経済効果で充足し、少し他の要素でも付き合いが増えたらいいなくらいなら、きっと効果としては最高の着地だと思う。


最近のファッション嗜好は多種多様でカテゴリー内の強弱はあるかもしれないけれど、工業ベースで「これが売れた」と言えるトレンドは、もう存在しないのではないかと思っている。

なので独自開発でシェアが爆増え!というよりは、顧客最適で小さくてもそれを望んでいる人に向けてきちんと対応する方が、今は合っている気がする。


ところがモノづくりの世界では、やっぱ良いもん作ったらみんなに認めてもらえてそれが売れると信じている人が、まだ少なくない。夢はあっていいと思うし、絶対ないとは言えないし、市場はつくるものという考え方で需要を生み出すことができるかもしれないけれど、そう、特に需要喚起に対するアプローチかな、そういうのが、ない。

特にストーリー性もないけど、原材料の希少性や工業設備の特殊性の掛け合わせて生み出された素材とかは、ヤバいんだけど、ヤバい。値段だけ雪だるま式に高くなった割に、見た目とか質感は、一般的なソレの値段との乖離を納得させるほどのインパクトがないというのが今までの経験上のイメージ。いや物自体を否定するわけじゃなくて、その差を、言うほど感じれる人がそんなにいないんじゃね?っていう感覚。


よくマーケットインとかプロダクトアウトとか言うけど、そういう小難しい話以前に、信念のない『良いもの』の定義が原料スペックやマシンスペックなら、それは誰にとって『良いもの』なのだろうか。

たぶん、そういうところ。個人的にはすごいと思うけど、一緒にソレ担いでお客様に見せていきたいって気持ちになれない大きな理由なんだろうな。

悪気ないんすよ。マジで。作ってる本人たち及び僕はそれが『良いもの』であることは知っているし、出来上がった物を嬉々として見せてくれる姿も、僕は大好きだ。わーって盛り上がって「それヤバいっすね!まじスゲー」とかなって、「スワッチいる?」って言われても「いや大丈夫っす」ってなっちゃうことが多い。

マッチングできる相手のイメージが湧いたらご案内もできるんだけど、相手が見えず一方的では双方幸せな結果を導ける可能性が非常に低いため、お手を煩わすのが申し訳ないというのが本音である。

おそらくそんなに身近じゃない人たちに向けて、ビジネスライクに商談進めて、相手がたまたま技術とか原料に興味がある人で、商談も盛り上がってスワッチもピックされたけど実採用されない場合って、モノの評価は高いけど、商品としては使えない判断をサイレントでされてるから、提案側からするとなぜ採用されてないかわからない状態が続いて、でも商談評価は高かったから、それが良いものだと信じて、更に尖った開発を続けてしまうループ、あると思います。


まして、似たようなモノも結構溢れている中で、それを選ぶ理由が本当にあるかどうか、ご本人が明確に説明できていない場合は、それすでに他力本願であり、独り相撲になる可能性が高い。だから差別化されるとしたら、担当との関係だったり対応の良さだったりと、結局ヒトになりやすいよねっていうモノづくりあるある。

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