殿様商売。

こういうことは、よくある。何を隠そう、僕自身も大昔はそうだった。


トラブルが起こった時、製造側に立つスタンスが強かった僕は、お客様の方の取扱の問題だという認識が強かった。もちろん、実際そういう場合も多い。


生地屋目線だと、トラブルになったと言われていることは「そんな扱い方したら、そらそうなりますわ」ということが多い。ところが、扱う側が生地に対して全方位的にそういったトラブル回避の知識を持ち合わせているわけではない。だから生地製造側の当たり前は、それ以降の加工業及びエンドユーザーにとっては当たり前ではないのだ。


生地だって糸から作っていく時に、糸屋さんの当たり前がわからない状態で触ることもあるので、「こんなゴミみたいな糸入れやがって!!!」みたいなことも日常茶飯事である。

なので、川上から流れていきそれぞれ分業で預かる持ち場持ち場での『当たり前』は違う場所では『当たり前』ではないため、小さな齟齬から最果ての最終行程で起こるトラブルは、時に、起るべくして起る。


そう考えると、トラブルは起る前提で考える必要があって、トラブルになってしまった場合に考えるべきことは「当たり前を知らなかったお前らが悪い」ではなく「どうやったら納品できるか」ということだ。


先述のTweetのように、生地屋さんが自分たちを守るために拒絶反応を示す気持ちは痛いほどわかる。だってそんな使い方したらそうなるに決まってますやん案件だったのかもしれないから。そして昨今の繊維業界も残念ながら性善説では生きていけない状況もある中で、いわゆる『難癖』をつけてくる人もいないわけではない。過去にそういう『難癖』を真面目に受けて酷い目にあった人もいることだろう。わかるぞお前の気持ち。そういう輩、おるからな。


とはいえ、普通に考えて、予想だにしなかった自体が起きた時、川上製造側に対して「どうしてくれるんだ!」という怒りの感情だけでぶつかって得をする人もそんなにいない。やはり「こうなってしまったんだけどどうしたらいい?」という解決策を一緒に模索したい気持ちのほうが強い。はず。だって実際に事は起こっているわけで、起こってしまったことは仕方ないので、納品に向けてトラブルシュートするためにエネルギーを使う方が建設的な思考だ。


今回、業界の温厚な先輩が珍しくお怒りなのは、そういった解決策を提示してもらうアクションが一歳なかったこと、それどころか「今までにそんなこと言われた事ない」の一点張りで全く取り合ってくれないところである。

先輩だって素人じゃない、むしろ僕が先輩と慕う人なので、バチバチの玄人である。過去に数多あったであろうトラブルの波を乗り越えてきた人だ、仕入先様を大事にしてそれぞれにアドバイスを求めしっかりと納品し切る胆力を持っている。そのアドバイスを求めた先が、こういった拒絶反応を示すことは彼にとっては、じゃもうお前んとこ使うの辞めるわで終わればなんてことない。


聞けば今回の相手は生地メーカーとしてはかなり大手の先とのこと。強気な商売でやり切れるほど看板がデカければ、客先の一つや二つなくなったところで痛くも痒くもないだろう。だがここに落とし穴がある。


盛者必衰の起点はこういう些細なところから始まる。


今まで言われたことない、は、もしかして、実は起こっていたけれど、今までのユーザーが苦労して解決していただけで、その後同社の素材を採用することはなくなっている可能性もある。そして静かに客離れしている可能性がある。

声が上がってこない場合、その素材、あるいは組織体制において、改善点としての気づきを失ってしまっている。これは本当に怖いことだ。売り上げ減少の綻びはこういうところからだったりするものである。


ちょっと花粉でしょぼしょぼしてるので文書にキレがないから今日はこれで締めるけど、昔の自分にもあったことなので自戒を込めて記しておこうと思った。

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