与信管理。

今の人は「ガーン」って言わんか知らん。なんとなく空気が伝わると嬉しい。


さて、短い梅雨がすぎ、新年度も始まったばかりかと思っていたらもう夏である。5月病の頃に一度「腐るには早すぎる」旨の記事を書こうと思っていたが、自分が腐りかけてたので目も当てられない。久々の投稿になる。


生地問屋さんや繊維製造卸系に就職された学生上がりのルーキー諸兄は、先輩の受け渡し業務(デリバリーや生産管理補助)の時期を並走しつつも、自身で新規取引先を開拓に動き出す頃かもしれない。

会社とは無慈悲にも、未経験者にだって結果を求めるので、営業職として入ってしまったら数字の責任とは切っても切れない縁になる。


既存のお客様に買っていただくという行為自体は、そんなに難しいことではないと思っている。これは商品やノウハウなどはある程度再現性のあるものだと思っているから、しっかりとした商品があって、お客様も用意された世界で数字を積み重ねるのはよっぽどアレじゃなきゃ多分ほとんどの人がある程度はできるはずだ。


問題は、数字がなかったところに数字を作っていく作業。これは難易度が高い。

簡単にいうと新規取引先を見つけてきて商売を始めることなのだが、所属会社の規模が大きければ大きいほど、この新規先を見つけるというのは難易度が上がる。規模の大きい会社はある程度営業の頭数も多いので、新規先がないという可能性もある。


繊維企業年鑑に載っているお客様候補で自社が取引していない先が見つけられないということは大きい会社ならあるあるだろう。僕が聞いた知り合いの大手繊維製造の新規先開拓一手目は、紹介意外であればこの繊維企業年鑑っていうのを頼りに「あ〜わ」までの50音順に並べられた会社情報を頼りに凸るらしい。いわゆるテレアポだ。気合い入ってる。

それか最近ではインスタDMなんかも多いだろう。若者っぽい。または大規模合同展示会などか。


入り口はどうであれ、なんとか新規のお客様と取引ができるようになったとしたら、新人だったらそりゃもう嬉しくて仕方ないだろう。その気持ち、忘れんなよ。

そしてもう一個忘れてはいけないのが、取引を始める前に相手の財務状況を知るということだ。与信管理という言葉を聞いたことがあるだろう。

与信というのは読んで字の如く、信用を与えることだ。取引を始めるにあたり「掛け売り」をするということは、相手の支払いを信じて、入金が確認取れるまで、提供した物品やサービスにかかった金額を貸している状態になる。つまり、簡単にいうと金を貸した状態だ。


製造は受注後、原材料仕入から組み立てにかかる工賃を納品前に全て先払いで商品を作っていく。案件発生時から提案にかかった諸経費など含めると、最終回収まで6ヶ月~1年ということもザラにある。

そこまで丁寧に積み重ねていったやりとりを、最終納品という形でしか金銭反映できないのも少し寂しい話だが、実商売というのは案外そんなもんだ。その期間に相手と自分の間に生まれる信頼関係みたいなのはプライスレス。いい関係というのは後に大きな財産になりうることもある。


で、その丁寧に積み重ねたやりとりが晴れて納品という形で金額に変わったのち、相手はその金額をしっかり支払うことでようやく信用が守られるということになる。要は、貸した金が返ってきたという状態になる。


この金を貸すに等しい行為を、どこぞの馬の骨ともわからん連中と交わすために、与信管理をする必要がある。

直近3年の決算状況はどうか、支払いサイトはどうか、自己資本比率がどうかなど、社会人ルーキー(特に繊維製造系)には最初はちょっと何言ってるかわかんないっすっていう数字を並べたデータを読み解いて、「この人たちにはいくらまで貸しを作っても大丈夫か?」を調べる。

そして弾き出された結果与えられる枠、それが与信枠である。


会社から「ここのお客さんは枠100万ね」って言われたら、そのお客さんに対しては合計100万円を限度とした売掛しかできない。これは毎月100万売っていいということではなく、初月で50万売掛たら、回収完了するまで次に出荷できる金額は50万円分までということになる。これを超えてくる取引が発生した場合、苦しいだろうけれども先に入金してもらうよう催促をする必要が出てくるのである。


また、この与信取引は支払いサイト(売り掛けから回収までの期間)も非常に重要になってくる。今は基本的に30日(月末締め翌月末支払い)が普通なのだが、中には60日(月末締め翌々月末払い)や、イレギュラー(20日締め翌月末払い40日などなど)もある。90日の約束手形なども、いまだにあるところはあるらしい。

この支払いサイトが長ければ長いほど、与信枠に対して月次で売掛できる金額は少なくなる。


例えば与信枠100万で、相手先の支払サイトが30日キャッシュだったら、年間取引枠は600万になる。つまりこのお客様で見込める年間予算は600万が限度ということになる。与信枠100万のお客様相手に年間1000万の予算は相手が早期入金をしてくれない限り組めないという考え方になる。


これらを基本知識として、新規先と取引を開始する前には会社側に与信判断を仰ぐ必要がある。

が、新規先にアポが取れて商談が進むとテンション上がって「なんとしても商売につなげてやる!」っていうノリが全面にでて(悪いことではない)与信管理面のことをすっかり忘れてしまうこともある。

いざ注文がもらえそうで取引になる場面で会社に与信枠をもらってないと「商社通しで。。。」など、お客さん側からすると「そっちからアプローチしてきておいて商売するとなるとどっか通すんかい!」みたいな空気はなんとも気まずい。

これは僕も青かった頃に経験した新人新規取引先あるあるかもしれない。


なので直接取引する場合は先に必ず支払い条件などを伺った上で与信調査をして、会社側が枠をくれたらその範囲で直接商売をするのが基本である。枠が決まったら相手にもお伝えしておいた方が良い。

いっぱい買ってくれようとしても枠越えちゃうことが事後で知らされ入金を催促されると「せっかく買ってやってるのに!」みたいな謎の『俺の方が上』理論が出てきてしまうこともある。そういう先はやらんに限るけど、始まってしまってる商売は仕方ないので、様々な面でめんどいことになる前に相手と合議を取っておくのは社会人として必要なスキルだと思う。

与信調査は第三者機関の評点や営業が訪問した際の相手先の空気(非常に曖昧で定義しにくいがダメなところの空気ってある)など、様々な要素をみる必要がある。

せっかくの新規先を、この非常に面倒な手続きで失う(与信枠が下りない)こともあるだろう。だが、失った先が必ずしも機会損失だったかというとそうでもない。だってその会社、お金払ってくれないかもしれない。


頑張ってアポ取り付けて、色々サポートしてようやく納品した商品に対してお金払ってくれないなんて、営業も辛いし、会社からしても大損失だ。かけた時間や生産にかかった費用が回収できないなんてとんでもないお人好しボランティアだ。それが会社の目指すところなら構わないけれど、一般的な株式会社とは営利目的の集団であるからして、お客さん喜んでくれたんでお代は払ってもらえなかったけどそれでOKっす!みたいなところは、まず、ない。ありえない。


会社側が与信枠を設定した上でも、何かあれば相手が潰れてしまうことだってある。そうなれば、かかった費用を取り返すのは難しいことになる。


信用取引という性質を理解していれば、お客様は絶対的な神様ではないというのはよく理解できると思う。いつだって対等さ。そしてちゃんとお金払わない人とは信用取引なんて絶対にしてはいけない。

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