敵か味方か。

わかる人おるかな。エキセントリック少年ボウイ。


さて、中間業者はいつだって挟まれている。お客様と仕入先様。

どちらも大事だし、どちらかがかけても商売とは成立しないので、上とか下とかありえないし対等だ。だが、世の中には上とか下とか敵とか味方とかにしたがる人たちは多い。


僕は元々工場上がりの中間業者だったので、大昔は工場寄りのスタンスをとりがちだった。それはもう、圧倒的に工場(生産)よりで、企画側の『No』をいかに押し込んで生産都合を通すかみたいなことに熱くなっていた時代もあった。

そしてその感情はいつの日か、お客さんは敵、工場が味方、みたいな対立構造を生みやすくしている原因であると気がついた。


このエピソードはいつか書いたかもしれない。

血気盛んで若かった僕は、染め屋さんの言う「黒は黒だろ」という主張に対して乗っかってお客様に牙を剥いていた。その染色物は確かに少し浅く染まっており、お客様の主張では「これはウチだとネイビーって言うんだよ」という。

色出しのチップに比べると確かに浅い、でも黒は黒だったので僕は染め屋さんの主張を通そうと熱くなっていた。

感情論のぶつけ合いだ。お客様も熱い。絶対に譲れない色なのだ。


埒が明かずに最終的にはもうなんでかわかんないんだけど電話が切れた。

30分後、お客様からまた電話があった。

「山本よう、お前が工場守りたいって気持ちはわかるんだよ。でもな、ウチがこれを黒だって認めて商品出しちゃったらさ、今までウチの黒をかっこいいって思って買ってくれてたお客様が納得しないんだよ。わかるだろ?どう?お前さ、この色本当にこっちの依頼色と同じだと思うか?工場守ろうとかそういうの抜きにして、お前は素直にどう思うんだよ」

優しく諭すような言い方で、こちらの言い分としているところをしっかりと見据えた上で、僕個人に問うてくる。僕は素直に「依頼色とは違います」と認めざるを得なかった。


まぁこの事例、はっきり言って工場側を守ろうという偏った正義感で無駄に争いを仕掛けた僕に非がある。だけど正直どっちか微妙な線でこういう事例って結構あると思う。ぶっちゃけ「こんくらいで・・・」と思うこともある。その線引きは非常に難しい。難しいし、理不尽な押し戻しもある。絶対に検品で弾いただろうレベルの不良が戻ってくるとかね。倉庫で踏みつけて足跡ついてたとかっていう事例があったって昔聞いたこともあった。

ただ、製造も企画も、最終目的は商品を着てくださる方々に向けて最高の仕事をして喜んでいただくことなのだから、最前線で商品を着てくださる方々に向かい合っている人たちには敬意を表しつつ、求めるクオリティを再現していくのが作る側の仕事なんだなと思い直した過去の出来事だ。


工場側のチョンボ守りも行きすぎると「あいつならなんとかしてくれる」という信頼感がいつの間にか「あいつなら大丈夫」という甘えに変わってしまうこともある。そうなると仕事に惰性が生まれてしまってなんでもアリの世界でお客様はいつの間にか離れていってしまう。納めた時が納期とかね。たまにおるからね。本当に。


きちんと作る側の筋が通る主張は守りつつ、敬意を持って接していれば、チョンボに対してのリカバリーも迅速に対応してくれるようになる。そして(わざとじゃないにしても)チョンボをチョンボと先回りして自発的に認めて対応を考えてくれるようになる。それはそれは素晴らしい関係である。

まぁこれができなくなる理由として、受けたら負け確定の納期品質絶対保証主義みたいな押し付けが強い相手が増えてしまったことだったりするんだろうけど。難しいね。事故は、起こるからね。絶対とかないから。


一方で、作る側に敬意を示せない連中も一定数いる。

製造側だって基本的に性善説で企画側と向き合いたいと思っている。最初から敵意剥き出しで対応してくる製造側がいるとしたら、それはその敵意を向けられるような態度が自分側にある可能性を考えた方がいい。んー、自分っていうか、背負っている看板っていうか。

どっちにしても相手の態度は自分の態度の写鏡というくらいなので。なんか悪いことあったんだと思う。


物理的に無理なことを説明や折衷案を聞かず「企画の言う通り100%再現しろよ」とか言っちゃうような人は、まず相手にされないし、この先も考え方と態度を改めない限り、製造に依頼するハードルは高いままだろう。それはどんなに大事にしてくれる中間業者がいても、その中間業者から受託する下請けが見放せば自然と中間業者も見放すしかなくなる。

業界は本当に狭いので、どれだけ間挟んで希釈されてもそういう人の依頼を受けてくれる間口は狭くなっていってしまうので、本当にピンチの時にそのままゲームオーバーってことになってしまわないように身の振り方は気をつけた方がいい。


僕が工場寄りのスタンスを取っていた背景も、理不尽な押し付けが多く感じたからに他ならない。当時はなんというか、作り手に人権ねぇなって思った時期もあったくらいだ。

だから今でも、筋の通らない主張で製造を貶めようとしてくる輩がいれば、全力で抗う。これは当然だ。

でも先述のように、お互いに熱くなりながらもちゃんと大事にしてくれるありがたいお客様たちと出会うことができて今がある。


つまりみんな敵とか味方とかじゃなく仲間でチームなんだから、主語デカくして足引っ張り合うんじゃなくて、楽しく繊維やっていきたいよねっていうポエム。

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