意味を考える。

普段多くの方々とお話させていただくと、たくさんの視点から物事を考えるきっかけになるのでとても勉強になる。

物事を考えるきっかけというのは、勢いとノリだけで割と最近まで生きてきてしまった僕にとって非常に有効な『振り返って反省し未来に活かす』という面を与えてくれた。


何を隠そう、専門学校在学中にロックスターになるために適当に選んだ会社で一発内定取るために自らを「天才」と言い放った直後、複合機に生地をホッチキスで留めてあるスワッチを流し込んで一発で壊し社内に自称大型新人に対する絶望感を味合わせたのだ、考えて生きてきたかどうかなんて、考えなくてもわかるだろう。


そんな僕でも、後輩というか、後に続いてくれる仲間たちが増えた。業界にこれ以上僕のようなアホを増やしてはいけないという勝手な使命感から、僕が僭越ながら指導という場面を預からせていただく時は『自分で一回考えてみる』という課題を出すようにしている。

繊維には意外と算数が溢れていて、糸番手の考え方や一反の長さ、生地の見積もりや、製品の見積もりなど、いわゆる公式が多い。

しかも割と単純な公式なので、算数としては間違う方が難しい。のだが、間違いは毎日のように起こる。


算数の間違いでよくあるのは、単位の統一ができないという現象だ。例えば生地目付で幅なりの実数が1mあたり300gだったとして、ここから全てkg建ての原材料単価や工賃を積み上げて目付を掛けるなどという計算をすることがある。ここで公式中の単価は全てキログラム建てになっているというところに注目できていれば、そこに掛ける実目付は300g/mなのだから1/1000に縮小してキログラムに単位を揃える必要があるということがわかる。つまり0.3kg/mに変換する必要があるのだが、これができなくてまんま300を掛ける人が驚くほど多い。


この単位が変換できない理由が知りたくて、自分で考えてみて欲しいという課題を出す。すると大体が得た数値情報を公式に当てはめるだけで答えが出るものだと信じて疑わず、出た答えが違ってしまうところで考察を諦めるという傾向がある。算数嫌いはこのパターンが多い。

これはギターを始めようとしてバレーコードのFが押さえられなくて弾かなくなる現象と似ている。ギターでFのバレーコードをフルサイズで押さえられないなら、音としてどうしても必要ではない場合、アンサンブルの中でなら間引いて三~四音程度を弾くことで成立するので曲構成中で困ることはないのだけれど、それができなきゃもう無理みたいな考えになるのはせっかく始めたのにもったいない。


単位の変換ができない大きな理由としては、得た数値情報がそもそもなんなのか?というところがわかっていないことが多い。これがわかると結構視界はクリアになるので、計算に当たっている今その数値は僕らの世界においてどの位置でどういう役割をするのか?という説明をするところから始まる山本の話は長い。俯瞰する範囲がグッと広がるので、大体みんな何言ってるかわからんうちにまた元の話に戻ってくるところで急激なアハ体験をしてくれる人もいれば、最後まで何言ってるかわからん人もいる。


この最後まで何言ってるかわからん人は最終的に「で、答えはなんですか?」という話になることが多い。この発言からわかるとおり、自分で考えるというところを一切放棄している。

この思考を一切放棄している人たちの世界観が知りたくて色々興味を持って話を聞くのもまた良い。そういう人もいるということを改めて知ることができる。世界には自分と同じ考え方の人の方が少ないのだなと実感する。

この人たちが理解できるように考えなくてもわかるレベルまで説明できるようになると、きっと繊維はもっと幅広い人たちに楽しんでもらえるようになるのではないかと思っている。

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