一事が万事。

糸偏川上の人たちは冷たい。いや、正確には、仕事が薄い相手には冷たい。これは金の切れ目が縁の切れ目に近い。オーダーをたくさんくれる人に対してと、オーダーをそんなにくれない人に対しての態度が同じはずがない。これは仕方のないことだが、正直言って、冷たくされた方はおもしろくない。


これは僕自身、前職時代にそういう感じだった部分もあるから、今もそうなっていないか自戒を込めて書いておく。


製造業は非営業も含めるとそれなりの所帯になる。その稼ぎ頭である営業隊は、一人でかなりの顧客や案件数を抱える。30人の工場で5人の営業なら、営業一人頭で6人分の稼ぎを上げなければいけない。そうなると、売り上げ効率の良い顧客に持てるリソースを注入したくなる気持ちは痛いほどよくわかる。時間かかってあんまり儲からん相手にヤイヤイ言われるのは精神衛生上もよろしくない。と、こういった文が出てきている時点で、僕もまだ、その体質から脱し切れていない。


僕が独立した時、一番ネックになったのは仕入先さんを増やしていくことだった。前職の看板と、まだ個人が立ち上げたばかりという両方が、知った仲でもなかなか売ってもらえない状況を作っていた。

基本的に前職を背景として製造をしていくというスタンスは、ある意味、前職との暗黙の約束だったが、正直言って、今担当してくれている後輩の営業スタイルは怠惰である。背景を把握した上で質問されるのは確かに答えにくい状況ではあるだろうが、そこで出た答えに対して何か文句を言ったことがあるとしたら、対応の悪さやいい加減な態度に対してである。これはもう、彼を窓口としてこっちが付き合っていく義理はないと判断して以降は、積極的に仕入れ先さんを開拓して行った。それも面白くなかっただろうけど。


ある日、前職経営者に 「お前、(弊社に対する前職の売上が)去年の半分やぞ。他所で作ってるんちゃうんか?」と言われたことに対して、半分冗談、半分本気で、「営業担当の問題だと思いますよ笑」と言ったのは流されてしまったが、数字が減っている理由を真剣に考えていないから、顧客は逃げていくのは当然だと思う。自分の名誉のためにも、他所で同社の生地を中抜きして作ろうとしたことは一度もない。

辞めちゃった前の営業のやつからは元々それなりに買わせてもらってたんだ。だから数字が落ちたのは普通に考えて営業の質の問題であることは明らかである。会社として、数字の大小が態度に反映されてしまうのは、冒頭にも書いたように理解はできる。でも、相手会社の経営状況や売り上げ金額などを見れば、その会社に対する『売れる見込みがある数字』は導き出せるだろうから、年間100万しか買わなくても、その会社にしてみたら「めっちゃ買わせてもらった」仕入れ先になるかもしれない。そういう相手の感情も理解して商売しないと、(年間100万しか買わん客なんて・・・)っていうのがモロに態度に出る。そのギャップは埋まらないし、それを感じたお客さんはもう戻ってこないよ。


小口の口座に対して出てしまう悪い態度は、大口のお客さん相手にだって、数字が減ってきたらその片鱗を見せるのだから、一事が万事とはまさにこのことだ。失ったらなかなか戻ってこないのが、信用という目に見えない物、そしてつられて数字が消える。


独立して5年目になった。もう前職の看板が邪魔をして仕入れ先さんが気を使うこともない。今年に入って口座を何軒か直接開いてくれるようになった。独立当初から直接取引をしてくれている仕入先さんたちは今まで以上に、そして、改めて加わってくれた仕入れ先さんたちと共に気持ちよく商売していきたい。

また前職も頑張ってもらいたい。ましてこんな世の中の状況下で、以前通りの川上殿様商売は通用しない。金額で相手を見下すな。自分たちが必要とされる営業を心がけて欲しいと願う。自戒を込めて。

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