営業スタイル。

前職時代、一時期を境に僕はお客さんとの付き合い方を大きく変えた。きっかけは百貨店系大手中心だったのが、前回のブログ内容でお察しいただけるとは思うが、精神的にしんどくなったからだ。カッコよく言えば方針転換、実のところ消耗戦からの逃げである。とは言え、ゼロにはできないし、自分自身も強くなる必要はあったのも事実であるから、修行と思って大手の仕事もチョロチョロっと受けてた。


僕はそんなに強い人間ではないから、真っ向から張り合って「赤字でもとってくる」みたいな経済的にも精神的にも健全とは言えない勝負はしない。というかできない。結果的にそうなったような商売もあったけど、基本的に血が流れるやつは、いったん受けると血を流し続けることがわかっていたので、他社相見積もりで刺されても「じゃそっちでどうぞ」というスタイルに変えることで精神の安定は保てた。

カットソーテキスタイルを別注で仕掛けてるアパレルメーカーは今ではそんなにいないけど、生地屋さんが自社品番で別注用の生地を企画して提案しているところは多い。だから真似されないような企画ができているところは商品力が高いので、結構強気で商売できたりするんだろうけど、強気も行き過ぎると徐々にお客さんから選ばれにくくなる。

よく聞くのは「あそこの生地良いんだけど高いんだよね〜」に始まり、「営業も態度悪いしさ〜」と続く。自社商品に自信があるのは大いに結構だが、態度が横柄なのはいただけない。で、僕はたまたまそういう相談を受けているうちに「じゃ試しにお手伝いさせてもらえますか?」みたいな切り口で新規先が増えていって、一個決まり、二個決まり、そのブランドさんのカットソーカテゴリーの半分くらいをいただけるようになったり、なんなら全部やらせてくれる先もできたり。ありがたいことに、そのお客さんたちが、今の弊社の屋台骨を支えてくれている。


独立する前も、独立した後も、 生産背景はそれほど変わらない。けど、独立してからは自社企画商品をもっておらず、仕入れ先さんにお邪魔しては、資料収集させていただいて、お客さんのところに出向くという感じだ。そもそも、「提案して欲しい」という要求が出るまで自ら種を仕込むことはない。それはそれで問題はあると思うけど、製造業がメーカーさんに対してやりがちな提案として、自分が得意としていて自社が出来ることに提案の内容を全部持っていこうとするところ。僕はある時期から無意識に、これをやめていたのだ。

生地屋としては企画商品があることは絶対に強い。ネタがなければ訪問も難しいだろう。でも前職時代にみて疑問だったのは、企画した品番を1から10まで全部サンプリングしているスタイル人の多いこと。風呂敷を広げて喜ばれる場合もあるけれど、服にしたりするのはお客さんなわけで、「ウチの生地はどれも素晴らしいですよ!」を対面提案でするのはちょっと違うと思った。それは合同展示会もしくは単独展示会でやれと。

時として、そういう押し付けがましい提案を人はお節介というのだという。大事なのは『お客さんがどういうことをしたいのか?』を丁寧に聞き出していくことだと思う。


一方、いまだに大手さんの一部では、そういう大風呂敷広げ大会が大好物だったりする。某大手生地問屋さんの笑い話で「銀座にある大手セレクトショップ界隈の提案を同じマップで回ったらな、先にピックアップした生地のところシール貼るやろ、そしたら違う会社でも全部同じ品番選びよんねんwあいつらアホやろw」と、半ば呆れた様子で語っておられた。3年くらい前の話だけれども。それ、提案にもっていく前にシール仕込んでも同じ結果が得られますから〜残念。というのは実際に生地屋がピックアップ率を上げるためにやっていたテクニック(と言えないような姑息な手段)である。スワッチを少し切った状態で見せるとかね。誰かが選んだ形跡があると人は安心してそれを選ぶという習性があるらしい。

僕も数年前に久々にお邪魔させていただいた某有名大手さんは、Aブランドがピックアップした後に訪れたBブランドのデザイナーが「〇〇さん(Aブランドデザイナー)が選んだのどれですか?」と聞いてきて、ピックアップシートを見せると、生地も見ずに番号だけ丸写しして商談を終えるという場面もあった。

網を広く張れば、かかる魚も多いのだろうから、手法としてはあながち間違いではない。でも、大手生地問屋さんはピックアップしてもらった生地スワッチが会社に帰れば全て用意してあって、それを束てね送れば終わりだけど、僕ら別注屋は会社に戻ってピックアップされた生地ハンガーを膨大なサンプルルームからひっぱり出して、一枚一枚切っては台紙に貼っていく作業がある。これは実は非常に大変な作業で、おそらく生地屋の仕事の中で多くの時間と労力を割いているのだが、一回提案した生地スワッチもアパレル側でいつか邪魔になって捨てられる運命にあるだろうし、まして「〇〇さんと同じやつ全部」とかいう人は、生地なんて見もしないうちに捨てる可能性があるから、時間をかけてお金を使って作った生地見本を渡すのなんてもったいなくてできない。


相手をみてやり方を変えればいいし、自分たちの力がわかれば無駄なことは出来ない。だから「自分たちの商品が、技術が、素晴らしい」と主張して個別営業かけても手応えがない場合は、自分たちが横柄になってないか、または相手を間違えてる、またはその両方かの可能性が高いんじゃないかと思う。


厳しい状況で各社新規の売り先を探しているだろうし、統廃合で取り合う牌も狭くなるだろうから、営業スタイルも正攻法を欲している生地屋さんは多いと思う。ただ、お客さんの方も今後は売り方を変えていく可能性だってあるから、自社商品力が高付加価値だと思ってても、相手にとっては意味をなさない場合もある。そういったズレをいち早く感じて、修正していくことができたらきっとお客さんに選んでもらえる営業になれるような気がしたんだなぁ。知らんけど。

ulcloworks

ultimate/究極の clothing/衣服を works/創造する ulcloworks

0コメント

  • 1000 / 1000